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赫らの紅  作者: 紀伊・千尋(きいの・ちひろ)
第5章 戦いと探求の果てに
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第9節「悪あがきはやめて腹を切れ。介錯はしてやる」

※ 本作は、「鈴吹太郎」「有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチ」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『トーキョーN◎VA THE AXLERATION』の二次創作物です。(C)鈴吹太郎/F.E.A.R.

※ 時代設定は『トーキョーN◎VA THE Detonation』の末期、現在のフェスラー公国がまだヨコハマLU$Tと呼ばれていた頃。イワサキのアーコロジーがヨコハマにあった頃です。

※ 一部の登場キャラクターは筆者のTRPG仲間から許可を得て借用しています。


 体の中を憤りが渦巻いていた。オユンの亡骸を見下ろしながら、感情のやり場を探していた――時間にすれば数秒の間だった。

 けたたましい警報が空間に鳴り響いた。奥から武装した兵士が姿を現した。対戦車ライフルを構えた。 

 兵士達の後ろに扉が見える――地上への通路に通じている。

 センサーの反応――12人。

 兵士達の装備――シールドとボディアーマー、サブマシンガン。殺傷力より制圧力重視。重要施設の警護担当。動きは素早くない。重装甲と引き換えに機動力が犠牲になっている。軽武装――コンピュータを極力傷つけないようにするため。

 知ったことか――コンソールの陰に隠れた。片手でサブマシンガンを取り出した。弾をばらまいた。兵士達の足を止める。その間に走った。撃ってきた。弾が足元で爆ぜた。配管の影に走り込んだ。アーマーとシールド――サブマシンガンでは貫通させられない。グレネードランチャーか対戦車ライフルなら貫通できる。配管の影に伏せた。対戦車ライフルを配管の上から突き出した。サブマシンガンのスタッカート。弾丸が風を切る音。床に跳ね返る金属音。それらが空間を満たしている。パッシブソナーは役に立たない。

 悠長に狙いをつけている余裕はない。対戦車ライフルの薬室に弾丸を込めた。攻撃が一度止むか、兵士達に新たな動きがあるのを待った。 

 射撃の数が少なくなった。無闇な射撃をやめた――窺っているか、弾倉を交換している。レーダーで兵士達の位置関係を掴んだ。配管の上に顔を出した。もう一度位置関係を確かめた。撃った。轟音と反動。銃弾が一人に命中して、ボディーアーマーとシールドを貫通した。

 兵士達の反撃。射撃。配管の裏に隠れた。もう一度同じことを繰り返した。

 二人を失って、連中が戦術を変えてきた――援護射撃を受けながら、半分が近づいてきた。懐に潜り込む作戦。グレネードランチャーを取り出した。撃った。近づいてきた兵士達のど真ん中で爆発した。全員が倒れている。兵士達の装備――ジローのアーマーほどの防御力はない。破片に当たれば負傷は避けられない。

 グレネードランチャーに弾丸を込めた。今度は後ろの兵士達に向けて撃った。爆発。兵士達が吹き飛んだ。

 対戦車ライフルを持ち上げた。奥の扉に向けて走った――レーダーに感。直上に微弱な反応。何かがクランの眼前に飛び降りてきた。後ろに飛んだ。それまでクランがいた場所に人影が着地した――対戦車ライフルを蹴り上げられた。ライフルがクランの手を離れた。

 人影――忍装束を纏っていた。それだけでわかった――服部・半蔵。

 半蔵の体が空中で回転して、ライフルを蹴った右足と反対側の左足がみぞおちめがけて繰り出される。防御――右手をみぞおちと足の間に突き入れた。衝撃。骨と筋肉に激痛が走った。それでも受け止めきれなかった。後ずさった。

 半蔵の右手に忍者刀が握られていた。斬撃。後ろに引いてかわしながら左手をかんざしに伸ばした。忍者刀が反転してクランを斬りつけてきた。かがんで姿勢を低くしながら、左手に握ったかんざしで衝撃を受け止めた。刀が軌道を逸れた。クランの頭上から風圧が襲ってきた。足のバネを解放し、後ろに跳んだ。飛びながら、右手に拳銃を握った――それ以外の銃器を取り出している時間はない。

 半蔵が動いた。撃った――当たらない。飛び回っている。左右に、上下に。射撃センサーが追い切れない。着地の隙を狙う――照準を半蔵の真下の地面に向けた。撃った。弾が半蔵の足に命中――しない。代わりに金属音が響き、火花が散った。地面に忍者刀が突き立てられていた――銃弾は忍者刀に当たっていた。

 忍者刀の柄を踏んで、半蔵が跳躍した。まっすぐ、クラン目がけて。眉間を狙って撃った――金属音がして、銃弾が跳ね返された。手甲に軌道を逸らされた。後ろに跳ぶ――間に合わなかった。みぞおちに杭を叩き込まれたような衝撃。激痛。口の中に血が溢れた。足がよろめいた。半蔵の顔がクランの目の前に迫ってきた。腹部に立て続けに衝撃。半蔵が連続で高速の拳を叩き込んできた。かんざしを半蔵の脇腹に突き出した――弾かれた。体が泳いだ。背中に激痛――手刀を叩き込まれた。床に叩き付けられた。

 激しく咳き込み、血を吐きながら床をのたうち回った。立ち上がろうとした――全身に激痛。体が言うことを聞かない。膝に力が入らない。襟首を捕まれた。引き起こされた。無理矢理半蔵と正対させられた。半蔵の表情――眉間に皺が寄り、眉がつり上がっていた。怒りと屈辱が全身に満ちている――クランも同じ。

「悪あがきはやめて腹を切れ。介錯はしてやる」

「くたばれ」

 睨み付けて、言い返した。何も言うまい――半蔵の目が言っている。拳を叩き込まれた。右の頬に、左の頬に。腹部に膝蹴り。よろめいたところに、回し蹴り。吹き飛ばされた――壁に叩き付けられた。

 自分の血に溺れそうだった。意識がどこかに飛んでいきそうだった。それでも――切れてしまいそうな意識を怒りと闘志でつなぎ止めていた。

 壁を背にしている――半蔵は正面から攻撃するしかない。近づいてくれば、タイミングを見切ってカウンターを叩き込める――期待は裏切られた。半蔵が苦無を構えようとしている。投擲でクランを仕留める。反撃の手段――何かないのか? 拳銃――威力不足。それ以外の銃器――取り出している時間がない。考えているうちに、視線が腹部に落ちた――対戦車ライフルの弾丸が目にとまった。右手に弾丸を握った。半蔵に気取られないように左手に拳銃を握った。指を拳銃の引き金にかけた。

 半蔵が苦無を投げてきた――狙いはクランのみぞおち。僅かに体を反らして、受けた。致命傷だけは避けた。半蔵の動きが一瞬、止まった。激痛に耐えながら、右手で弾丸を投げた。半蔵が体を反らして、避けた――引き金を引いた。空中の弾丸目がけて撃った。対戦車ライフルの弾丸が空中で破裂して、半蔵の左半身を抉った。

 ボルトアクションのライフルは、撃鉄が薬莢の底の雷管を叩くことで装薬を爆発させる。だが銃身の中で爆発させないと、薬莢が圧力に耐えきれず破裂する。それなら、銃弾で底を叩き空中で爆発させれば――瞬時の閃き、賭け。うまく行った。

 半蔵の顔――憤怒の形相。なおもクランに近づこうとして――動きが止まった。耳元のインカムを抑えて、何かを話している。内容――緊急事態。イワサキ本社が包囲された。警察の強制捜査。

 半蔵――一瞬クランを睨み付け、跳んだ。物陰へ姿を消した。

 息をついている暇はなかった。全身の痛覚が悲鳴を上げていた。バイタルサイン――警告メッセージだらけ。対戦車ライフルを拾い上げ、体を引きずるように、兵士達が現れた扉へ向かった。

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