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赫らの紅  作者: 紀伊・千尋(きいの・ちひろ)
第5章 戦いと探求の果てに
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第6節 急げ、急げ、急げ

※ 本作は、「鈴吹太郎」「有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチ」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『トーキョーN◎VA THE AXLERATION』の二次創作物です。(C)鈴吹太郎/F.E.A.R.

※ 時代設定は『トーキョーN◎VA THE Detonation』の末期、現在のフェスラー公国がまだヨコハマLU$Tと呼ばれていた頃。イワサキのアーコロジーがヨコハマにあった頃です。

※ 一部の登場キャラクターは筆者のTRPG仲間から許可を得て借用しています。


 トラックはLU$Tへの高速道路を走っていた。荷台に這いつくばりながら対戦車ライフルを解体した。車が不意に揺れてネジが転がっていきそうになった――慌てて手を伸ばして掴み取った。

 橋を渡り、インターチェンジを降りた。何度も見た景色が後ろ向きに流れていった。オフィスビルが建ち並ぶ大通りを抜け、イワサキアーコロジーへ向かっている。交差点で何度か曲がって、裏口からアーコロジーへ入った。クランが出入りしていた場所。一般社員の目につかないように、出入口は正面玄関と離れた場所にある。イワサキのIDを持たない人間はスキャナーで弾かれる――警報は鳴らなかった。死んだ工作員の遺伝子情報をコピーしてごまかした。

 トラックが止まった。後部扉が開いて、工作員達が遺体や負傷者を運び出した。駐車場奥の扉が開いて、工作員らしき人影が現れた。収容を手助けしに来たのだろう。すれ違うようにして、扉が閉まる直前に滑り込んだ。

 廊下や部屋のレイアウトは変わっていなかった。工作員や研究者とすれ違うことも避けられない。熱光学迷彩、遺伝子情報のコピー。いつまでもごまかせない。元から長居するつもりはない。連中の目と耳を引きつける。

 壁に埋め込まれた火災報知器。非常ボタンを押せば警報が響く。押した。ハンマーがベルを叩いて鳴らし始めた。ベルの音が廊下中に響いた。警報ランプが赤く点滅した。死んだ工作員の声色を使って叫んだ。

「火事だ!」

 工作員達――心の準備ができている。さほど混乱しない。他の人間――そうも行かない。火災報知器が鳴れば火災だと身構える。一度は外へ避難する。物陰に隠れて様子を見守った。研究者達が避難を始めた。火災がないのに押されたとばれる前に、奥へ侵入する。

 扉――避難のために開け放たれている。閉じる前に走る。急げ、急げ、急げ。会議室、ブリーフィングルーム、居住区。走り抜けた。見えてきた――オユンの部屋の入り口。扉――閉じている。ショットガンにスラッグ弾を装填した。ぶち抜いた。蹴り開けた。オユンの姿はなかった。警報が鳴り止んだ。扉を閉じて内側から椅子や荷物を使って塞いだ。

 別の警報が鳴り始めた。扉が物理的に壊されたことを検知された。時間はない。進まなければならない。慌てず、急いで、正確に。

 部屋の中――パソコン、書庫。ニューロエイジでは珍しい紙の書籍。クランが以前に呼ばれた時と変わらない。

 パソコン――ロックがかかっている。キーボードの傍らにセンサーがあった。指紋の跡がついている――指紋認証。

 書庫の奥――僅かだが冷たい風を感じる。推論――地下研究所への隠し扉。押したり引いたりした――動かない。本棚の上下にレール――動かす仕組みはある。

 床を探した――オユンの髪の毛。そこから遺伝子情報をコピーできれば情報にアクセスできるかも知れない。

 髪の毛――見つからない。念入りに掃除機をかけているか、掃除ロボットにくまなく掃除させている。しかしミスはある。人間にも、機械にも。そのミスを見つけた。細い糸状の何かが指先に触れた。遺伝子情報をコピーした。指先にオユンの指紋が現れた。センサーに触れた。ロックが解除された。

 デスクトップから最近の使用項目を検索――該当情報なし。使用の都度念入りに消去しているか、自動で消去するプログラムが組まれている。復元を試みる――リサのデバイスから抜き取ったツール。ポケットロンから飛ばして、走らせた――最近使った項目の一覧がディスプレイに映し出された。項目の中に、ソフトウェア――中に隠し扉を開けるものがあるかも知れない。

 アーカイブの文字列――書庫の意。クリック。パスワードを要求された。ランダム生成機能、オートコンプリート機能――使っていない。推論――パスワードはオユンの頭の中。

 考えろ――オユンなら何をパスワードにする?

 書庫を眺めた。背表紙。本のタイトル――違和感。クランが以前に呼ばれた時と並び順が変わっている。

 思い出した。リサとジローが、簡単な暗号を作って遊んでいたことを。

 一か八か――右端にある本の名前を一文字ずつとって、上段から順番に入力した。一段目は最初の一文字目、二段目は二文字目、というように。

 ロックが外れる音がした。書庫が動いた。奥にエレベーターのドアが現れた。


 ゴンドラ――窓などはない。ボタン――行き先階ボタンが二つしかない。用途――研究施設への直通。オユン専用。開閉ボタンを押して、扉を閉めた。下の行き先階ボタンを押した。 

 僅かに体が浮くような感覚があった。ゴンドラがレールを滑る音だけがゴンドラの中を満たした――早い。数分で下層に着く。

 うまくいっている――できすぎなくらいに。罠の可能性――構うものか。立ち塞がる奴らは壊すだけだ。

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