第5節 情報・事実・推論・結論
※ 本作は、「鈴吹太郎」「有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチ」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『トーキョーN◎VA THE AXLERATION』の二次創作物です。(C)鈴吹太郎/F.E.A.R.
※ 時代設定は『トーキョーN◎VA THE Detonation』の末期、現在のフェスラー公国がまだヨコハマLU$Tと呼ばれていた頃。イワサキのアーコロジーがヨコハマにあった頃です。
※ 一部の登場キャラクターは筆者のTRPG仲間から許可を得て借用しています。
待ち伏せの場所――目星をつけてあった。煽流を壊すためのトレーニングに使った場所、そこから少し離れた山の中腹。ホテルの廃墟。業績不振で閉鎖され、土地の買い手がつかず建物も放置。ホテルは切り立った崖の上。背後も崖。道は細い道路が一本だけ。
近くまでの運び屋はアーガスが手配してくれた。車の中で考えを巡らせた――アーガスの正体、過去。今の今まで考えが及ばなかったのも間抜けな話だ。直接の手がかりはない。事実と情報を積み重ねて推測するしかない。
情報――アーガスはしがない情報屋と名乗った。
事実――アーガスは何でも知っている。警察の内情、煽流という人物、イワサキの研究。
疑問――しがない情報屋がそこまでの情報を手に入れられるか?
推論――アーガスは多くの情報提供者とつながっている。
疑問――情報を手に入れるには金がかかる。どこからそんな資金を手に入れた?
推論――背後には莫大な資金を持ったパトロンやクライアントがいる。
疑問――クランに何故そこまで執着する?
推論――クランでなければできない何かがある。
疑問――アーガスの個人的な興味か? クライアントの意向か?
障害――結論を出せるだけの材料がない。
疑問――アーガスに絵本を託したのは誰か? 調べる時間はないし、ウェブにも手がかりはないだろう。
事実――アーガスは絵本を大切に持ち歩いていた。
推論――絵本を託したのはアーガスに親しい人物。親友か、家族か、恋人。
結論――オユンを問い質し、情報を手に入れる。引き換えに全てを白状させる。
考えがまとまったところで車が止まった。何も言わずに降りた。
朽ち果てた建物。痛みが激しく今にも崩れそうな鉄筋コンクリート。光はない。視覚レイヤーの暗視モードを頼りに階段を探した。登って屋上に上がった。木更津湖に浮かぶ船の灯りやLU$Tの夜景――裸眼で見れば輝いて見えるそれらも、暗視モード越しでは白黒にしか見えなかった。白黒の視界の中で、ホテルへの道が浮かび上がった。
背中の筒を地面に置いた。中から対戦車ライフルの部品を一つずつ取りだした。銃身、機関部、銃床、マズルブレーキ、持ち運び用グリップ、照星。それぞれの部品にはネジが切られていて、回すだけでつながった。熱光学迷彩のレイヤーを塗った。床に水平になるように置いた。
筒から弾丸を取り出した。薬莢が金色に鈍く光っている。一つ一つの大きさが15センチくらいあった。一発を手元に残し、残りは着物と帯の隙間に押し込んだ。
ボルトハンドルを左に回し、手前に引いた。弾丸を薬室に押し込んだ。ボルトハンドルを押し込み、右に倒した――装填完了。ファイアリングピンを手前に引き、止まるまで左に回し、押し込んだ――セーフティ解除。
視覚レイヤーの望遠モードの倍率を最大値に上げた。ホテルへの道――車が登ってくるのが見える。5台。聴覚センサーで通信の傍受を試みた。暗号パターン――イワサキ。追っ手。ライフルのところに戻った。床に伏せた。トリガーに指をかけた。照星の向こう、車列が見えた。
先頭の車に照準を合わせた。トリガーを絞った。拳銃やサブマシンガンと比べものにならない発射音と反動。傷ついた右肩に痛みが走った。一瞬遅れて、先頭の車が止まった。手動で薬莢を排出。次弾装填。最後尾の車に照準を合わせた。発射。今度は最後尾の車に大穴が開いた――連中は車で進むことも逃げることもできなくなった。5台の車の扉が一斉に開いた。中から銃やナイフを持った人間が降りてきた。道を駆け上がろうとしている――舌なめずりした。
対戦車ライフルの弾丸は少ない。無駄遣いできない――引きつけて撃破する。対戦車ライフルのグリップを握って持ち上げた。階段を駆け下りた。廊下を走り抜けてテラスに出た。工作員達が坂道を登ってくるのが見える。サブマシンガンを取りだした。引き金を引いて弾をばらまいた。工作員達が弾に当たって倒れていった。残った工作員達――何人かが牽制射撃を浴びせてきた。残りは左右に散らばった。テラスを離れた。正面玄関から登る階段の踊り場に待ち伏せた。
工作員達が中に踏み込んできた。踊り場から弾丸を浴びせた。また工作員が倒れた。牽制射撃――柱の陰に隠れた。足音――階段を登ってくる工作員が二人。柱から飛び出して、みぞおちに蹴りを叩き込んだ。反転してサブマシンガンの銃床をもう一人の工作員の頭に叩き込んだ。工作員がもんどり打って倒れた。牽制射撃を浴びせてきた工作員に弾丸を撃ち込んだ。工作員達が血を噴いて倒れた。
複数の足音――裏口から工作員達が踏み込んできた。もう一度同じことを繰り返した。
何人かは生かしておいた。救援を呼ぶか、回収を依頼するだろう――案の定だった。みぞおちを蹴られた工作員が、体を引きずるようにして建物の外に出て行った。再びテラスに戻って様子を見守った。聴覚センサーに反応――工作員達の通信量が増えた。工作員達――生存者をまとめて建物から離れていった。歩ける者は負傷者に肩を貸していた。対戦車ライフルを取りに戻って、肩にかけた。男の後をつけた。木陰に潜んで待った。
カーゴトラックが現れた。扉が開いて、工作員らしき男達が現れた。担架に負傷者や遺体を乗せて運び込んでいった。扉を閉めた。走り出す前に荷台に掴まった。あとはアーコロジーに侵入するだけだ。




