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赫らの紅  作者: 紀伊・千尋(きいの・ちひろ)
第5章 戦いと探求の果てに
47/57

第1節「その考えはいい線行ってるんじゃないか?」

※ 本作は、「鈴吹太郎」「有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチ」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『トーキョーN◎VA THE AXLERATION』の二次創作物です。(C)鈴吹太郎/F.E.A.R.

※ 時代設定は『トーキョーN◎VA THE Detonation』の末期、現在のフェスラー公国がまだヨコハマLU$Tと呼ばれていた頃。イワサキのアーコロジーがヨコハマにあった頃です。

※ 一部の登場キャラクターは筆者のTRPG仲間から許可を得て借用しています。


 トラックの後ろに掴まって移動した。後ろの車を絶えず監視した――車間距離は保たれているが、もし煽り運転や急停車で車間が詰まったら、退避しなければならない。風が車の後ろで渦を巻き、クランの髪と服をなびかせた。

 冷たい風が体温を奪っていくのを感じながら、頭を働かせていた。

 疑問――ジローはなぜ裏切った?

 事実――危険な任務の連続でおびえている。この状況から逃れたがっている。リサに首ったけになっている。

 状況――追われている。千早に、クランに。N◎VAに居場所はない。

 推論――リサと一緒にどこかへ逃げようとしている。そのためにクランを振り切った。

 疑問――リサがジローをどう思っているのか? 一緒に逃げたいと思っているのか?

 事実――仕事がダメになることを迷惑に思っていた。死にたくないという恐怖が行動の根底にある。その魅力で男を籠絡してきた。

 発想の転換――クランがリサとジローの立場なら、どうするか?

 選択肢――イワサキに帰還する。

 その場合の予測――クランのことを問い詰められる。また別の任務に放り込まれる。事態は好転しない。

 事実――リサとジローも知った。イワサキの極秘計画。オユンの実験。

 リサ――損得に聡い、臆病。素直に帰ったところでイワサキに消されると恐れるのではないか。ジローのことはどうでもよくても、当座は一緒に逃げて、N◎VAやLU$Tから離れたところで再起を図るのではないか。 

 可能性――海外へ逃げようとしている。リサの力量なら偽造IDを自分で用意できる。問題――移動手段。システムは電子迷彩でごまかせても、人の目がある。

 ジロー――ボディガードとしては優秀だが、隠密行動が得意とは言えない。航空機やコンテナに忍び込むことは考えにくい。N◎VAを出ようとする者――恐らく千早が目を光らせている。空港や港、周辺のホテル。

 行き先――監視の目を逃れて、隠れられる場所。セーフハウスになり得る場所。

 結論――セーフハウスに向かう。

 トラックが高速から一般道に入った。トラックから飛び降りて、アーガスに電話した。事実と推論を使えた。

「なるほど、その考えはいい線行ってるんじゃないか?」

「もったいぶってないでそれらしい場所がないか教えろ」

「少し時間をくれ」

 電話が切れた。数分後着信があった。アーガスは南房総国際空港にほど近いリゾートマンションとその部屋番号を告げた。

「それから、イワサキと千早の連中がアンタらを血眼で探し回ってるらしい。せいぜい気を付けてくれ」 

 道路を見渡した――バス停に空港行きのリムジンバスが止まっていた。車体に掴まった。


 移動の合間にイワサキの通信を傍受した――暗号を変えられた。内容を聞き取ることができない。クランはイワサキの人間ではなくなった――追われる身になった。かつてクランが始末した連中と同じように。

 ――無知は、哀れだ。

 男の言葉が蘇る。クランも最高機密に辿り着いたために、イワサキが消しにかかっている。くそったれ――体が熱を帯びる。消されてたまるか。

 推論――リサとジローも追われる身になっている。二人を追ってきたイワサキの連中と鉢合わせするかも知れない――知ったことか。邪魔する奴は全員壊してやる。


 30分ほどバスに掴まっていた。減速――空港入口のインターチェンジに差し掛かった。バスが止まった――赤信号。車体から飛び降りた。歩道へ上がった。道の先、海の方角を見渡した。視線の先に南房総国際空港のターミナルビルがあった。その右隣、海沿いにリゾートマンションが建ち並んでいる。滑走路へ航空機が着陸する様子が見える。

 海の方角へ歩いた。海岸べりに、アーガスが告げたリゾートマンションがあった。白い壁が日の光を受けて輝いている。時計は午後二時を指していた。

 建物の様子を観察した。センサーの感度を上げた。フロント――オートロックになっている。監視カメラ――目立たないように壁に埋め込まれている。犬型のペットロイドが建物の前をうろついている――恐らくは警備用ドローン。

 住人が掌やカードキーをかざして入っていくのが見える。住人――Tシャツやバミューダパンツのようなラフな服装であっても、きれいな身なりをしている。セキュリティに対する信頼と、治安の良さが伝わってくる。親子連れが建物から出てくるのが見えた。クランの親――知らない。いるのかどうかもわからない。こんなに人間と同じように作られながら、クランは家庭を知らない。

 頭を振った――余分な思考を振り払った。

 15分観察を続けた。その間に監視カメラの位置や警備ドローンのルーティンを見極めた。何人かが出入りした――リサとジローの姿はなかった。

 表から入るか――不可能ではない。オートロックの扉でも、住人に紛れてエントランスから入れる。エレベーターに生体認証セキュリティがあったとしても、同じ方法で忍び込める。扉も開けることはできるだろう。しかし、扉に仕掛けがされていることも想定しなければならない。クランが簡易宿泊所で使った爆弾のように。潜入は迅速に行いたい。もう一つの可能性――裏側、バルコニー。

 監視網を避けながら、裏手へ回った。熱光学迷彩があればかいくぐれるが、念のための保険だ。フェンス――金網の上に一定間隔で柱が立っている。推論――レーザーバリア。レーザーが遮られると自動的に警報が出される。音をさせないように金網を上った。レーザーにかからないように金網に手足をかけて、反動をつけて一気に飛び越えた。警報は鳴らなかった。

 そのまま建物の裏側へ回った。一面に芝生の敷き詰められた庭が広がっていた。フェンスに区切られた区画にプールがあるのが見えるリサとジローの部屋――3階。何かあっても地上に逃げやすく、かつ地上から簡単に侵入できないフロアを選んだのだろう。建物を見上げた――下からではバルコニーの中の様子が見えない。

 遠距離からの狙撃――不可能。中の様子がわからない。狙撃ポイントになる建物がない。

 推論――リサとジローが仕掛けを施している。リサは監視装置を、ジローはトラップを。共有スペースに仕掛けることはできなくても、バルコニーに何かしら仕掛けているかも知れない。窓も防弾ガラスにしているかも知れない。

 クランが今こうしているのも、もしかしたら察知されているかも知れない。しかし、察知から接近までの時間を短くすれば、対処する方法は限られる。発見される確率を減らす行動を取りつつ、発見されていないことに賭ける。

 木陰に隠れて、腰からショットガンを取り出した。スラッグ弾を装填した。銃口にサプレッサーをつけた。

 バルコニーの高さは約2メートル。手すりに足をかけ、部屋と部屋の仕切りを掴みながら、手すりの上に立った。物音をさせないように、反動をつけて飛び上がった。右で2階のベランダの下縁を掴んだ。左手を同じようにかけて、懸垂の要領で体を持ち上げた。ベランダに足をかけた。

 同じ手順をもう一回繰り返して、リサとジローの部屋のバルコニーにぶら下がった。右手でぶら下がりながら、手すりの隙間からバルコニーを覗き見た。人影はなかった。視覚レイヤーのモードを切り替えた。レーザーがあみだくじのように張り巡らされていた。悠長に鍵を開けて忍び込む真似はしない。

 左手で腰からショットガンを取りだした。手すりの隙間から銃口を突き出した。撃った。左手にショットガンの反動が伝わってきた。手すりを一気に乗り越えてベランダに飛び込んだ。窓ガラス――割れてはいなかったが、命中したところから蜘蛛の巣状にひびが入っていた。ショットガンの銃床を叩き付けて、割った。カーテンを銃口で押しのけながら部屋へ踏み込んだ。

 窓ガラスの破壊――検知されていると考えなければならない。10分もしないうちに警備員が駆けつけてくる。それまでに片をつける。

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