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赫らの紅  作者: 紀伊・千尋(きいの・ちひろ)
第4章 死地での再戦
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第8節「だったら、教えてくれる?」

※ 本作は、「鈴吹太郎」「有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチ」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『トーキョーN◎VA THE AXLERATION』の二次創作物です。(C)鈴吹太郎/F.E.A.R.

※ 時代設定は『トーキョーN◎VA THE Detonation』の末期、現在のフェスラー公国がまだヨコハマLU$Tと呼ばれていた頃。イワサキのアーコロジーがヨコハマにあった頃です。

※ 一部の登場キャラクターは筆者のTRPG仲間から許可を得て借用しています。


「バー・ヤロール」。スラムにある酒場。裏社会の人間達――プロの殺し屋や犯罪組織、企業の工作員が、表に出せない仕事――ブラックビズの依頼や情報のやりとりをする場所。その中でも特に秘密の情報をやりとりする場所――イシュタル海。一切の照明はなく、夜目が利く者でも相手の顔しか見えない。

 カウンターの前でマスターと目が合った。マスターが視線をイシュタル海に向けて流した――リサとジローはもう来ているという合図。うなずいた。待ち合わせの時間まではもう少しある。

「ずいぶんゆっくりじゃない」

 扉をくぐった――リサの声がかかった。

「いろいろとやんなきゃいけないことがあるんでな」

 返した。半分は事実、半分ははったり。闇の中に、ジローとリサの顔が浮かび上がっている。

「それより、例のものはできたのか?」

 ジローがうなずいて、足元のバッグから取り出した荷物を、テーブルの上に置いた――2枚一組の板状の何か。プロテクターのような形をしていた。どちらも、身体の形に合わせて曲線を描いている。剣道の防具や、“災厄”前の映像作品に出てくる日本の鎧のような形状。

「腹部と背中を覆うパーツで一セット。前後のパーツはコネクターでつなぐんだ」

 ジローの説明に従ってパーツをつけた。スイッチを入れた――IANUSとリンクさせた。操作画面が視界の隅に現れた。

「思考トリガーで発射準備、照準、射撃ができる」

 発射準備を命じた。小さく鋭い機械音がして、腹部のプロテクターが三つに割れた――レンズのようなものが姿を現した。

「それがレーザー発射機だ。操作してみてくれ」

 小さなモーター音を立てて、レンズが回転した。向いている方向にレーザーが撃てる。

「ブーツも改造しておいたよ。タイツはこれを使ってくれ」

 二つ合わせて集電装置の役目を果たす。電力をレーザー発射機に送り込む。

「よくできてるじゃないか」

 ジローが口角を持ち上げるのが見えた。リサに向き直った。リサが手元のデバイスを操作して、動画を再生した。テーブルの上にホログラムの立体映像が広がる。三人の視線が集まる。映し出されているもの――どこかの部屋。ダブルベッドに、豪華な調度品。ウェットシティの一室か。ベッドの上に腰掛けているのはドレス姿のリサ、傍らにはエグゼクらしき男。楽しそうなエグゼク、それに対応して楽しそうに振る舞うリサ。

「コイツが恐らく、研究施設の責任者。苦労したんだから」

 映像が高速で流れ始めた――リサが早送りにした。早送りが止まった。リサの態度が変わっていた――あからさまな拒絶。エグゼク――必死で許しを乞うている。リサを失いたくないという態度がありありだった。ひとしきり許しを乞わせて、リサが切り出した――小悪魔的な微笑み。

「だったら、教えてくれる?」

 困惑するエグゼク。リサが畳みかける。

「責任者なんでしょ? 非合法データセンターの」

 エグゼクの顔が驚愕と恐怖に覆われた。震える声で絞り出すように言った。

「……わ、私に会社を裏切れというのか」

 リサがエグゼクにすり寄った。優しく背中と頬を撫でながら囁く。

「何も情報を売るわけじゃないよ。だけどね、見せて欲しいんだ。約束を本当に守ってくれる、いざとなったら逃げ出すような人じゃないって」

 エグゼクの肩と喉がわなないた。無駄な抵抗――落ちる。クランにもわかった。リサが映像を切り替えた。千早アーコロジー内部の見取り図。赤いポイントが輝いている。データセンターの場所を表す輝点。クランが当たりをつけた場所にあった。

「コイツのコネを使って、ジローのケータリングも手配してあるよ」

「上出来だ」

 ジロー――感嘆の表情でリサを見ていた。自分が同じように弄ばれているかも知れないとはつゆほども考えていない。

「ジローのケータリングはいつだ?」

「2日後に試食の準備をするよ」

「よし、その日から侵入だ」

 ジローの答えを聞いて即答した。

「テストは?」

「そんな暇あるか」

 決行の時間まで残り30時間を切っていた。

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