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赫らの紅  作者: 紀伊・千尋(きいの・ちひろ)
第4章 死地での再戦
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第7節「今からいうものを準備できるか?」

※ 本作は、「鈴吹太郎」「有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチ」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『トーキョーN◎VA THE AXLERATION』の二次創作物です。(C)鈴吹太郎/F.E.A.R.

※ 時代設定は『トーキョーN◎VA THE Detonation』の末期、現在のフェスラー公国がまだヨコハマLU$Tと呼ばれていた頃。イワサキのアーコロジーがヨコハマにあった頃です。

※ 一部の登場キャラクターは筆者のTRPG仲間から許可を得て借用しています。


 部屋に戻って、アーガスに電話を入れた。

「今からいうものを準備できるか? 裏ルートじゃなく、合法的に」

「言ってみろ」

「タングステンの丸棒と単分子ワイヤ。丸棒は警棒くらいの太さと長さ」

「タングステンはともかく、単分子ワイヤは高いぞ。あれは非合法工作員が使う代物で、表の用途は建材に少し混ぜる程度だ。切断が困難ということは、ゴミとして捨てるにも困る代物ということだからな」

「棒に巻き付けるくらいの長さでいい」

「それならお安いご用だ。それだけか?」

「もう一つあるんだ」

「やはりな。なんだ?」

 ジローが挙げた資材をそのまま伝えた。

「詳しくは後で送る設計図を見てくれ。アンタが見てわからなければ、知り合いのタタラに見てもらってくれ」

「ずいぶんと物騒な代物だな」

「どのくらいあればできる?」

「すぐ手配する」

「今から言う場所に届けてくれ」

 電話を切った。すぐに、ジローとリサにメッセージを入れた。

「1週間N◎VAを離れる。LU$Tにも戻らない。資材は手配したから受け取れ。何かまずいことがあったら電話を入れろ」


 ホテルをチェックアウトした。近くのレンタカー屋で、ドライバンを借りた。偽造IDを使った。特に疑われることはなかった。

 オンラインでレンタル業者のサイトにアクセスし、産業用ドローンの空き状況を調べた。空きがあった。マシン3台のレンタルを申し込んだ。工場の機械を取り替えることになったので、実際に使って比べてみたいと適当な理由を書いた。業者の事務所に向かった。料金は先払いしておいた。

 ドライバンを事務所に横付けすると、業者がクランの姿を認めて、挨拶してきた。クランが何も言わなくても、業者は積み込みを手伝った。ドライバンのに荷台にマシンを固定した。

 別のレンタル業者で耕運機ドローンを借りた。これもドライバンに積み込んだ。

 積み込みを終えて、今度はホームセンターに向かった。金属製のワイヤーを買った。7日分の水と食料を買った。

 高速道路に向かった。しばらく走って、南房総国際空港の手前のインターチェンジで降りた。山の中に入っていく道が続いていた。次第に道路は細く、ねじ曲がるようになった。森も深くなり、日の光が遮られるようになった。

 森に入る細い道を左に折れてしばらく進んだ――開けた土地があった。小川のそばの河原。車を止めた。荷台を開け、マシンとドローンを下ろした。道路に残ったタイヤの跡を消すよう、耕運機ドローンのコマンドをセット――通って来た道を入り口に向かって進んでいった。

 産業用ドローンを運び、開けた場所を囲むように据え付けた。それぞれに、金属製のワイヤーをセットした。煽流の動きを思い出しながら、マシンの動きを設定した。時折、ランダムでの動きを入れるようにした。

 準備を終えると、いつもの衣装に着替えた。着替えて車の外に出た。ドローンが戻ってくるのが見えた。タイヤの跡の消し忘れがないか、見て回った。目立つ消し忘れは、なかった。ドローンの仕事ぶりは正確だ。しかし平坦にならされている――不自然。逆に地面を掘り起こすようセット。そのまま待った。耕運機ドローンが戻ってきた。もう一度クランが往復――所々にアクセントをつけた。耕運機ドローンをライトバンにしまい込んだ。


 ジローからメールが届いた。ベルトまで小型化するのは無理、もっと大きくさせてくれ――必ず完成させろと返した。それからの7日間――キャンプにこもってトレーニングに明け暮れた。


 横殴りの雨が叩き付けるように降っていた。雨は視界を妨げる。雨音は音をかき消す。右の頬に衝撃――ワイヤーで打ち据えられた。気づくことができなかった。痛みが広がったと思った瞬間、左の太ももと背中を叩かれた。転がって距離を取った。クランの頭上を、三本のワイヤーが暴れている。

 叩かれたところが痛みと熱を発している。右の頬に粘っこく、生温かいものを感じる。傷は浅くない――構うものか。呼吸が荒くなっている――一度深呼吸して、整えた。立ち上がった。センサーの感度を上げた。ワイヤーが暴れる中に走り込んだ。ワイヤーが迫る――上から、横から、背中から。ステップを取り、重心をずらしてかわす。時々打ち据えられる。身体の傷が増えていく。それでも、繰り返すうちに回避の精度が上がってくる。

 最後の日。身体が重い。呼吸が整わない。動作が一瞬遅れる。ワイヤーに打ち据えられる――地面に倒れ伏す。ワイヤーの向こう、煽流の顔が浮かんで消えた。血がたぎった。身体が熱くなった。手足に力が甦った。立ち上がった。再びワイヤーに挑んだ。

 7日間、ほとんどの時間をそんな風にして過ごした。それ以外の時間――簡単な食事と短い睡眠、傷の手当てと汚れた身体の手入れをして過ごした。

 7日目の朝が来た。産業用ドローンとワイヤーを片付けた。耕運機ドローンに地面をならさせた。クランも手を加えて、適度な荒れ具合にした。業者にドローンを返した。怪しまれないように、傷跡はレイヤーでごまかした。ライトバンも返した。街角の宅配ボックスに向かった。荷物が届いていた――タングステン棒と単分子ワイヤ。荷物を取って、リサとジローとの待ち合わせ場所に向かった。

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