第1節「どうしろっての……」
※ 本作は、「鈴吹太郎」「有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチ」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『トーキョーN◎VA THE AXLERATION』の二次創作物です。(C)鈴吹太郎/F.E.A.R.
※ 時代設定は『トーキョーN◎VA THE Detonation』の末期、現在のフェスラー公国がまだヨコハマLU$Tと呼ばれていた頃。イワサキのアーコロジーがヨコハマにあった頃です。
※ 一部の登場キャラクターは筆者のTRPG仲間から許可を得て借用しています。
半蔵の指示――機密情報の破壊。機密情報――煽流が持ち去った。行き先――千早アーコロジー。
機密情報の破壊――千早アーコロジーに潜入しなければ達成不可能。
千早アーコロジー――千早重工の本拠地。
「どうしろっての……」
リサ――頭を抱えている。
「まるで僕達に死んで欲しいと思っているみたいだ」
ジロー――それだけいうのがやっとというように、言葉を絞り出している。
「アタシらのやることは変わらないだろ。お前の泣き言を聞いている時間なんか――」
「待って? ジロー、今なんて?」
リサが疑問を差し挟んだ。
「何って……僕達に死んで欲しいと思ってるみたいだと……」
「それよ」
「どういうことだ?」
「本当に成功させたい任務なら、重要な情報なら、確実性を高めるためにもっと戦力を揃えるはず。御庭番衆もいるんだし、何も私達を捨て駒にしてやらせることはない。イワサキの本社は私達が関わった痕跡を消してくれるし、武器も支給してくれる。だけど戦力は私達3人だけだし、作戦も私達に考えさせてる。何もかもがイレギュラーなんだよ」
「なるほど。まるで、先生が生徒に課題を与えてどう解決するかを観察してるみたいだ」
「情報とやらも、イワサキにとっては『失っても別に構わない』レベルの代物だってことか」
「そうなるね」リサがうなずいた。「そして、私達も」
「つまり僕らはもうすぐ用済み。千早と潰し合ってくれれば万々歳、か」
リサはもう一度頭を抱えて、力なく呟いた。
「死にたく、ないなあ……」
クラン――黙って二人の話を聞いていた。リサの推理――筋は通っている。線はつながっている。手応えを感じる――クランが求めている、答えに近づいている。リサが、ジローが、クランが何者なのか。
「アンタは怖くないわけ? ……って、怖いわけないか」
「君のその戦闘意欲には脱帽するよ」
「アタシのことをどう思っていようが構わねえ。だが、戦わなきゃ生き残れない。それはわかってるな?」
リサとジローがうなずいた。
「今度も戦う。3人でだ。仲間だとか協力だとか、そんな生易しいもんじゃない。3人乗りのボートを一人で漕いで嵐を乗り切れるか?」
「無理だね」
「わかってるよ」
「なら、準備に取りかかろうじゃないか」
会議室に入り扉を閉めてロックをかけた。
「まず、状況を整理しよう」
一呼吸入れたいとでもいうように、ジローが告げた。
「考えること、解決すべき課題がたくさんある」
うなずいた。今回潜入するのは千早アーコロジー――千早の本拠地。今まで相手にした連中とはわけが違う。脳裏に煽流の顔が浮かぶ、声が流れる――振り払った。今はその衝動をぶつけるタイミングじゃない。落ち着け。
「まずやらなきゃいけないのは、情報がどこにあるかの特定だね」
リサがジローの言葉を引き取った。手元のデバイスを操作して、ディスプレイに千早アーコロジーの建物を呼び出す。空高くそびえる高層ビルの映像が映し出された。アーコロジーはただ高いだけでなく、太さもあった。周りには同じような高さと太さのアーコロジーがいくつも連なっている。
「メガ・コーポの本社だけあって、めちゃくちゃ頑丈に作られてる。地震にも強いし、消火機能も完備してる。飛行機が突っ込んでも壊れない。つまり外から壊すのはまず無理。N◎VA軍の兵器でも持ってこないと無理だね」
「中に侵入するのは?」
ジローが質問を投げかけた。
「一般開放しているフロアだったら、ね」
リサがデバイスを操作して、アーコロジーのフロアガイドを呼び出した。最上階には展望台があり、ビルの上部と下部にはレストランが入っている。オフィスフロアにはホールや会議室がある。
「展望台やレストランは誰でも入れるし、ホールでイベントや会議室でセミナーが開かれることもある。だけど、展望台やレストラン、ホールは他のフロアと切り離されてるし、会議室に行くにはセキュリティゲートを通らなくちゃいけない」
「当然そこでセキュリティチェックがあるということだね」
ジローの言葉に、リサがうなずいた。
「ただでさえアーコロジーの周りはホワイトエリア。セキュリティチェックが厳しいのに、それに輪をかけて厳しくなってる」
「つまり、外から強引に突破するのは無理ってことだな。セルゲイの時みたいにやろうとしても、無関係の人間が多すぎる」
クランの言葉に、リサが挑発するような視線を向けてきた。
「アンタの口からそんな言葉が聞けるなんて思わなかった」
「勘違いするな。騒ぎが大きくなれば失敗のリスクがでかくなるってだけだ。アタシらは情報を壊して、帰らないといけない」
リサを御す――弱みを見せるな。自信に満ちた様子と冷徹さを装え。
「そうなると、内部にこっそり侵入しないといけない。だけど、どうやって?」
ジローが自問自答するかのように言葉を漏らした。リサが地図を呼び出した。
「入り口は正面玄関、屋上のヘリポート、地下の駐車場。それとリニアの駅とも地下街を通してつながってる。だけど、この四つ以外から入るのは無理だね」
「恐らく、出入り口全てに厳重な監視網がある」
ジローが無言でうなずくのが見えた。
「非常口は?」
ジローの言葉にリサがかぶりを振った。
「普段は開いてない。火事や地震の時以外は開かない。そんなところを開けようとしたらすぐに警察や消防に通報が行くだろうね」
「クランの熱光学迷彩や、遺伝子をコピーできる能力を使ってかいくぐれないかな?」
今度はクランが質問に答えた。
「そのくらいのことは織り込み済みだという前提で考えた方がいい。恐らく二重三重の監視をかいくぐることになるはずだ。それに、機械やAIはごまかせても、人間がいる」
「それに、もう一つ問題がある」
クランとジローの視線がリサに集まった。




