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赫らの紅  作者: 紀伊・千尋(きいの・ちひろ)
第3章 孤独な共生
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第12節「何しに来やがった!!」

※ 本作は、「鈴吹太郎」「有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチ」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『トーキョーN◎VA THE AXLERATION』の二次創作物です。(C)鈴吹太郎/F.E.A.R.

※ 時代設定は『トーキョーN◎VA THE Detonation』の末期、現在のフェスラー公国がまだヨコハマLU$Tと呼ばれていた頃。イワサキのアーコロジーがヨコハマにあった頃です。

※ 一部の登場キャラクターは筆者のTRPG仲間から許可を得て借用しています。


 左右を見回し、動く者がいなくなったのを確かめた。振り返り、ジローとリサの様子を確かめた――怪我はなさそうだった。ハンドサインで河本を指した――尋問に行く。

 サブマシンガンの銃口を向け、周囲への警戒を続けながら、河本に近づいた。

「ジロー、隣にいろ」

 ジローは何も言わずにクランの隣に立った――嫌に素直だ。

「リサは辺りを見張れ。コンピュータの話になったら声をかける」

 リサが無言でうなずくのが見えた。二人の反応を確かめてから、河本を蹴り飛ばした。悲鳴を上げて、河本が地面を転がった。

「念のため聞いとくが……河本・泰英だな?」

「き、貴様は――」

 蹴り飛ばした。

「聞かれたことだけ答えろ」

 壊したい――その衝動を必死でこらえていた。聞き出さねばならないことが多い。

「いつまで意地を張ってるつもりだ? 話させる方法はいくらでも知ってるんだぜ」

 眉間に拳銃を突きつけた――河本の顔に恐怖の色が浮かんだ。

「そうだ、河本だ」

 隣にしゃがみ込んだ。手を取って、自分の手のひらを重ねた。

「見張ってろ」

 ジローに告げて、コンピュータに近づいた。

 コンピュータのタッチパネルを操作した。生体認証を求める画面が表示された。手のひらを河本のものに変化させて、タッチパネルに触れた――パスワードの入力画面が表示された。

「リサ、ここからデータを抜き出せ」

 パスワードは知らない。リサのハッキングに賭けるしかない。リサがコンピュータに近づいてきて、コンソールを操作し始めた。河本はジローが見張っている。ユウタの傍らに近づいた。顔を見下ろした――気を失っているようだった。

「出たよ」

 リサの声で振り向いた。ハッキングに成功したらしい。

 ディスプレイを覗き込んだ。表示――クランに関する様々なデータ。断片的な情報をひたすら拾い集めたらしい。目撃情報、街の噂。その中に、アーコロジーでの目撃情報――イワサキの人間しか知り得ない情報。そして、ユウタと会ったときの様子。過酷な尋問で情報を引き出したのか?

「その子の脳から直接情報を読み取ったみたいだよ」

 リサが顔をしかめるのが見えた。

「脳活動をスキャンして、実際に見たことを解読したり、再構成したりする技術はある程度実用化されていたはずだけど」

 ジローが口を挟んだ。リサが首を振った。

「そんな生易しいもんじゃない」

「じゃあなんだ」

 リサを見据えた。リサもクランを見据えた。

「これはね、人の無意識に侵入して情報を引きずり出しているの」

「何だと?」

「アンタも夢は見るでしょ? だけど目を覚ましたら夢の内容はほとんど忘れてるんじゃない?」

 確かに見る。どこかで、誰かと撃ち合っている夢を。

「それはね、夢が無意識の表れだからなの。普通、人は無意識を認識できない」

「それで何ができるんだい?」

 ジローが疑問を口にした。

「この子を昏睡状態にして、夢を見させたんでしょう。そこにクランが出てきた。それを解読して、他の情報とつなぎ合わせた」

「その情報を元に、アタシの偽物を作ったんだな?」

「結論だけを言えばね。だけどわからないことが二つある」

 リサが顎に手をやって考え込んだ。

「まず、コンピュータの大きさ。情報を解読し、再構成するだけならこんな大がかりな装置はいらない。次に、脳からの読み取りはまだ簡単だけど、書き込みは難しいの」

「どうしてだい?」

「コンピュータと人間の脳は造りが違いすぎるの。コンピュータが脳の中身を読み取っているように見えるけど、読み取るときに一度コンピュータの言葉に翻訳してそれを読み取っているだけ。そっくりそのまま人間と同じように考えてるわけじゃないの。それに読み出しはできても書き込みは実用化されてないし、その目処も立ってない」 

「つまりここにある装置だけじゃあの偽物は作れないってわけか?」

「そう。それに、クローンだからって大人の姿で生まれてくるわけじゃない。その辺りをなんとかしないと、あんな偽物は作れないはず――」

「そのコンピュータにまだデータはあるのか?」

 もう少し深掘りする必要がありそうだった。

「潜ってみる」

 リサがコンピュータに向き直った。再び意識を集中している――数十秒して、リサの顔色が変わった。

「何これ……? 人工生物のデータ?」

 人工生物――クランが壊した工場で養殖されていた。人工の四肢や臓器の材料。

「なんでそんなものがここに――まさか、クランの偽物をこれで?」

 リサが再び意識を戻そうとした――クランのセンサーに微弱な反応。虫やネズミと勘違いしそうなくらい小さな――あの時と同じ。

「伏せろ!!」

 怒鳴りつけながら伏せた。ジローがリサをかばうのが見えた。クランの頭上を、単分子ワイヤーが凄まじい速さで通過していった。一瞬遅れてコンピュータに斜めの切り込みが入った――筐体の上から半分が鈍い音を立ててずり落ちた。金属とプラスチックの塊が、床に落ちて大きな音を立てた。

「生きていてくれましたか。やはり貴方は私の見込んだとおりの方だ」

 忘れるはずもない。あの武器、あの声、あの姿――通路の奥、ミラーシェードの男が見えた。

 クランの血が沸騰した。視界が赤く染まった。銃をその男に向けた。

「大上……煽流! 何しに来やがった!!」

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