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赫らの紅  作者: 紀伊・千尋(きいの・ちひろ)
第3章 孤独な共生
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第5節「しっかり仕事をしようじゃないか」

※ 本作は、「鈴吹太郎」「有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチ」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『トーキョーN◎VA THE AXLERATION』の二次創作物です。(C)鈴吹太郎/F.E.A.R.

※ 時代設定は『トーキョーN◎VA THE Detonation』の末期、現在のフェスラー公国がまだヨコハマLU$Tと呼ばれていた頃。イワサキのアーコロジーがヨコハマにあった頃です。

※ 一部の登場キャラクターは筆者のTRPG仲間から許可を得て借用しています。


 ポケットロンを取り出してアーガスに電話を入れた。盗聴――したければしろ。時間がない。

「左腕の傷はもういいのか?」

「だからあんたに電話してるんだろう?」

 電話の奥から忍び笑いが聞こえてきた。

「頼んでおいた件、どうなった?」

「わからん。偽情報じゃないのか?」

「アンタほどの情報屋でもわからないなんてな」

「少なくともストリートには、子供時代のあんたらしい人間を見た奴はいなかったな」

 収穫はあった。わからないことがわかった。痕跡があるとは考えられないことがわかった。オユン――何かを隠している。

「それともう一つ、頼みたいことがある」

 リサとジロー――二人の特徴を告げた。

「この二人について調べて欲しい」

「いいだろう。少し待ってくれ」

 5分経過――ポケットロンにプロファイルデータが送られてきた。

 権藤・リサ――表の顔はウェットシティのマネキン。仕事を始めてから1年足らずにも関わらず評判は上々。人気の上位に食い込み、メガ・コーポのエグゼクや行政府のクグツを常連客にしている。情報網を築き上げ、ハッキングやハニートラップなどの工作に従事しているという噂。

 ジロー・ジュノー――表の顔は権藤・リサの運転手兼ボディガード。車両の運転に長ける。特技は武器や乗り物のカスタマイズ。リサと組んで美人局めいたことを行い、情報をせしめているという噂がまことしやかに流れている。

 二人ともいくつもの偽の身分を持っている――クランと同じ。

「そして二人とも、どこかの企業に雇われているという話だが――」

「アタシと一緒に行動することになった」

「それは面白いことになったな」

「茶化すな。その二人が活動を開始した時期はわかるか」

 少し間が空いて、アーガスの声が聞こえてきた。

「あんたがN◎VAに現れた少し後だ」

 クランとほぼ同時期に呼ばれた――どこから? なぜだ?

「また電話する」

 電話を切った。 


 アーガス――クランがあることを調べてくれと頼む。そう長く待たせずに、望み通りの情報を仕入れてくる。どれだけの情報網を持っている? どれだけの情報提供者を飼っている?

 リサとジローに関する情報は恐らく正確。クランが直に接して得た情報とも一致する。

 しかしクランの過去はどうなのか? アーガスも、知っていて何かを隠しているのではないか?

 疑いが膨れ上がる――愚問。信用はしても依存してはいけない。知りたければ自分でたどり着くしかない――真実に。そのためならなんだって利用してやる――リサも、ジローも、アーガスも。

 時計が集合時間の五分前を表示していた。部屋を出て会議室に向かった。


 急ぎ足で歩いた。それでも会議室に着くのはぎりぎりだ。リサとジローはすでに会議室に入っていると考えなければならない。

 会議室の扉の前まで来た。集合時間の一分前。電子ロック――解除されていた。コンソールを操作して扉を開けた。二人が会議室の真ん中に立っていた。

「待っていたよ」

「時間を決めたのはそっちなのに、余裕だね、隊長さん」

 ジローの声とリサの皮肉がクランを出迎えた。

「いろいろとやることがあったからな」

 軽く受け流して机のそばに立った。二人も机のそばに立ったままだ。理由――クランが変な気を起こしたらと考えて即座に対応するため。

 二人をにらみつけたまま、呼びかけた。

「アタシが憎いか」

 リサとジロー――返事はない。

「正直に言えよ。憎いだろ? アタシがいなきゃこんなことにならなかったのにって思ってるんだろ?」

 二人の視線――怒りと憎しみの色がより強くなった。

「そんなに憎いなら、殺してみろ。ただし仕事がなくなるわけじゃない。二人で三人分の仕事をやらなきゃいけなくなるだけだ」

 ジローの瞳が少しだけ揺らいだ。リサ――ジローの気配を察して、厳しい目を向けている。

「アタシもただで殺される気はない。それに、三人でする仕事を一人でやるのはきつい」

「急に弱気になったじゃない」

「そうだ。死にたくなかったら一緒にやるしかないってことだ。嫌ならここでおっぱじめてもいいんだぜ?」

 机の上に乱暴に手を置いた。身を乗り出して、二人の顔を交互ににらみつけた。

「あんたを置いて逃げたっていいんだよ」

 リサがクランをにらみ返しながら答えた。

「いや、それは無理だな」

「どうして?」

「お前達はイワサキを裏切れない。絶対に」

 かまをかけてみた――リサの瞳が少しだけ揺らいだ。

「わかったよ、僕は臆病だからね、死にたくはない」

 音を上げたのはジローだった。クランが徹底的に脅したのが効いている。

「仲良くしろとは言わねえ。しっかり仕事をしようじゃないか」

 目元を少しだけ緩めて、言った。

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