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赫らの紅  作者: 紀伊・千尋(きいの・ちひろ)
第3章 孤独な共生
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第4節「……ふざけないでよ」

※ 本作は、「鈴吹太郎」「有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチ」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『トーキョーN◎VA THE AXLERATION』の二次創作物です。(C)鈴吹太郎/F.E.A.R.

※ 時代設定は『トーキョーN◎VA THE Detonation』の末期、現在のフェスラー公国がまだヨコハマLU$Tと呼ばれていた頃。イワサキのアーコロジーがヨコハマにあった頃です。

※ 一部の登場キャラクターは筆者のTRPG仲間から許可を得て借用しています。


「そこまでだ」

 ヘッドセットから半蔵の声が響く――決着の合図。

「どうやら貴様の勝ちのようだな」

 撃墜スコアはクラン21機、ジロー10機、リサ0機――完勝。

「で、アタシらになにをさせたいんだ?」

「司令室へ来い。そこで説明する」

 通信が切れた。半蔵は一足先に戻るのだろう。ジローとリサに目を向けた――ジローがリサの助けを借りて、焼け焦げたボディアーマーを脱いでいるところだった。近寄った。ジローの腹に思い切り蹴りを入れた。胸ぐらをつかんで引き寄せた。頬に拳をたたき込んだ。

「ずいぶんとなめた真似をしてくれたな、え?」

「ちょっと待ってよ、恨みっこなしって言ったのはアンタ――」

 リサの目の前で右手を振った。拳銃が現れた――そのまま眉間に突きつけた。

「これは高くつくぞ。覚えておけ」

 ジローを突き飛ばした。ジローが地面に倒れ込んだ。ジローとリサ――怯えと恨みが入り交じった目で、クランを見つめている。

「死にたくなきゃ、仕事しろ。工作員だろ?」


 ジローとリサを先に歩かせて、クランは後ろからついて行った。脅しはかけるだけかけたが、念のための保険だ。司令室に入ると、半蔵が待っていた。

「座れ」

 半蔵に促されて、クランは右端の椅子に座った。ジローは真ん中に、リサは左端の椅子に座った。三人が座ったのを見ると、半蔵は手元のコンソールを操作した。デイスプレイに映像が映し出される。ホログラフ――初老の男。顔は横に広く、恰幅のよい体つきをしている。服はダブルのスーツ――恐らくはブランド物。着こなしは下品ではないが、上品でもない。金のかかっていることをアピールしている。

「この男は、河本・泰英。我が社の常務取締役だ」

「知っています」ジローが口を挟んだ。

「この男を始末しろ」

 半蔵が事もなげに告げた。部屋の空気が刺すような緊張感を帯びた。

「何をやらかしたんだ?」クランが尋ねた。

「これを見ろ」半蔵が手元のパネルを操作した。ディスプレイに映像が映し出される。どこかのクラブ。河本がソファーに腰掛け、何者かと酒を酌み交わしている。西洋風の顔立ち――スラヴ系か? 年の頃は河本より下、恐らくは四十代。

「この映像はウェットシティで撮影したものだ。相手はロシアンマフィアの幹部だ。最近N◎VAに上陸し、拠点を構えている」

「こんな映像、どうやって手に入れたんだ?」

「私が撮ったの」

 答えたのはリサだった。

「リサの表の顔は、ウェットシティのホステスなんだ」ジローがリサの言葉を引き取った。「僕はボディガード兼運転手」

 納得した。リサの能力は確かに情報収集に向いているだろう。 

「で、そのエグゼクがなんだってレッガーと飲んでるんだ?」

「河本は我が社においては反主流派だ。社内の影響力拡大を狙って、自分の手足になる者を集めている。その中にマフィアも入っている」

 半蔵がまた別のホログラフをディスプレイに映し出した。セルゲイ・ミハイロビッチ。ロシアンマフィアの幹部。表向きはロシア系企業の会社員。河本は業務提携と称して、マフィアとの接触を繰り返している。

「トーキーにばれたら大問題だな」

「そういうことだ」

 半蔵が答えた。メガ・コーポはヤクザやマフィアのような反社会的勢力とつながりを持ってはならない――少なくとも表立っては。ジローが手を挙げた。

「証拠があるなら、役員の椅子から追い出せば済むんじゃないんですか?」

「それで済むならお前達を呼んでいない。マフィアを使って恫喝する可能性があるし、私兵集団を持っている相手にうかつに手は出せない」

「で、アタシらに始末しろと」

 半蔵がうなずいた。「ただし、ただ始末するだけではない」

 確かに、河本だけを殺せばいいのなら、リサとジローがとっくに片をつけていただろう。

「本人だけではない。ロシアンマフィアの幹部も、その構成員もまとめて掃討しろ」

「たった三人で!?」

 リサが金切り声を上げた。ジロー――平静を装っている。唇の端がわずかに震えている。クランも拳を握りしめた――それほど大事な任務なら御庭番衆を使う。クラン達がしくじっても彼らがとどめを刺す。所詮は使い捨てということか。

 冗談じゃない。お前らのもくろみ通りになってやるものか。またここへ帰ってきてやる――立ち塞がる者全てを壊して。

「他に誰がいる?」

 感情のこもらない半蔵の声。

「個別に始末するのではいけないんですか?」

 ジローの質問――努めて低い声を出して、ゆっくり話している。

「河本を先に始末したのでは、報復の恐れがある。マフィアだけ先に始末しても、河本に察知されて逃げられる。禍根は断たねばならん」

「やってやろうじゃねえか」

 クランは半蔵を正面から見返して答えた。横目でリサとジローの表情を見た。お前と組まされたばっかりに――言葉はなくても、そう言っていた。


「……ふざけないでよ」

 司令室を出て廊下を歩いていた。その時、リサが低く罵った。

「怖いのか?」

「当たり前じゃない」

「僕は臆病だからね」

 工作員であるからには二人とも死線はくぐってきたはずだ。しかし、圧倒的多数の敵に突っ込まされた経験はないのだろう。

「言っとくが、アタシがやれと言ったんじゃないからな」

「その割には、ずいぶん楽しそうじゃない」

 リサの指摘――もっともだ。使い捨ての駒同然の扱いに怒りながら、壊すことを楽しんでいる。

「だからなんだ?」

 歩み寄って、ジローを睨み付けた。

「死にたくなきゃ、命がけでやれ」

 リサとジロー――怯えと恨み、怒りが入り交じった視線でクランを見返している。リサがジローの肩を抱き寄せた。

「作戦会議だ。リサ、空いている部屋を探せ」

 リサは相変わらず不満げな表情を浮かべながら、腕時計の上で指先を動かしていた――あれもデバイス。

「R会議室が空いてるみたい」

「三十分後に集合だ」

 それだけ告げて、一度自分の部屋に戻った。

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