第3節「別に組んじゃいけないなんて言われてないでしょ?」
※ 本作は、「鈴吹太郎」「有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチ」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『トーキョーN◎VA THE AXLERATION』の二次創作物です。(C)鈴吹太郎/F.E.A.R.
※ 時代設定は『トーキョーN◎VA THE Detonation』の末期、現在のフェスラー公国がまだヨコハマLU$Tと呼ばれていた頃。イワサキのアーコロジーがヨコハマにあった頃です。
※ 一部の登場キャラクターは筆者のTRPG仲間から許可を得て借用しています。
視覚センサーが示す場所についた――野原の西側に広がる森の向こう。標的機――森を挟んで向かい合う格好。
右側100メートルにはジロー、さらにその右側100メートル向こうにはリサの姿。もうすぐ標的機が飛んでくる。だが単に数を競うだけで終わるとは思えない――リサがリーダーに意欲を示さなかったのが引っかかる。ジローと組んで何かを仕掛けようとしている。
考えることはやめない。しかし、迷いはしない。何を仕掛けられても、壊すだけだ。
両手にサブマシンガンを持ち、火器管制システムを起動して身構えた。
耳の中でブザーが鳴った――模擬戦開始の合図。同時に、木々の上から何かが姿を現すのが見えた――ドローン。同時に3機。ヘリコプターのようなプロペラで飛んでいる。目標を捜索していたヘッドセットのレーダーが同時に追尾を開始。ロックオン――視覚センサーに標的をマークしたインジケーターが映る。高度――およそ50メートル。サブマシンガンの射程距離内。火器管制システムのナビゲートに従い銃口を向ける。引き金を絞った。銃口から響く銃声。火線がドローンを貫く。ドローンがバランスを崩して墜落した。
ヘッドセットから警告音――ロックオンされた。横に飛びながら引き金を絞った。クランの横でゴムの弾がはねた。同時に銃弾がドローンに命中した。火器管制システムが回避行動に合わせて射角を補正している。もう一機のドローンにも射撃を浴びせた――撃墜。
レーダーに反応。同時に空中から甲高い機械音――ジェット推進音。クランの目に、別のドローンの姿が映った。ジェット戦闘機のような形状。小型のジェットエンジンを搭載しているらしい。高度――100メートル。速度――早すぎて銃器では撃墜できない。
ドローンの機首が光った。レーザーライトが地上をなぎ払っていく。ジャンプしてかわしながら、ロックオン。右膝を前に突き出した。膝が開いた――ミサイル発射口のカバー。思考トリガーをオン――空気音がして、ミサイルの弾体がふくらはぎから飛び出した。弾体が完全に外に出た――点火。白い煙を引いて、ミサイルが標的へ向かう。ヘッドセットが電波を標的機に照射、ミサイルを誘導する。弧を描いてミサイルがドローンを追う。後方から襲いかかる――命中! ドローンが空中で火の玉と化した。
撃墜数――4機。リサとジローはどうか。二人がいるはずの場所に目をやった。何かがおかしい――ドローンが空中で静止している。ジェットエンジン装備のドローンも、同じ場所を旋回している。
ジロー――右手にアサルトライフル、左手にシールド。空中に銃口を向けている。引き金を絞る。銃口からマズルフラッシュが迸る。その度にドローンが墜落していく。
リサ――ジローの隣にいる。攻撃している様子はない。しかし指輪をはめた手を空中に向けている。口が動いている――何事かをジローに伝えている。会話の内容――銃声やローター音がノイズとなって聞き取れない。
推論――リサの能力はハッキング。空中のドローンを乗っ取り、操っている。アクセサリーは超小型のコンピュータ。複数のデバイスで処理を並列して行うことで、速度と出力を上げている。体内のナノマシンとも連動しているだろう。
二人の方角へ走り寄りながらグレネードランチャーを取り出した。ドローンが空中に密集している間に爆風でまとめて吹き飛ばす。引き金を絞った。弾がドローンの群れの中へ吸い込まれていく――ドローンが散開した。爆発――撃墜できたのは一機だけだった。残りの3機がクランに向かってきた。サブマシンガンを左右に振りながら乱射した。三機にまとめて銃弾を浴びせる。ドローンに弾痕が刻まれ、プロペラが吹き飛び、翼が折れた――バランスを失って地面に墜落した。
残骸を踏み越えてジローとリサに近づいた。
「二人グルにならないとアタシに勝つ自信がねえのか?」
「別に組んじゃいけないなんて言われてないでしょ?」
「僕は臆病だからね。リサについていてもらわないと、怖くて戦えないんだ」
クランの相手は動く標的、ジローは静止した標的。単に撃墜数を争っては不利。まずはこいつらから黙らせる。標的をロックオン――できない。レーダーもセンサーもキャッチしない。レーダー、センサー――ともに異常なし。機能に異常がないのになぜ――電子迷彩!? レーダーやセンサーに偽の情報を送り込み、欺瞞する。見えているのに、見えていないかのように錯覚させる。
「感づいたみたいね。これであんたは私達を攻撃できない」
リサが甲高い声を上げて笑う。
サブマシンガンをジローに向けた。撃った――弾丸がシールドとアーマーに跳ね返された。同時に、ジローがアサルトライフルを浴びせてきた。横に飛んでかわした。ジローはなおも射撃を浴びせてくる。横に走った。クランを追いかけるように地面で弾が跳ねた。クランもサブマシンガンで応戦した――効果がなかった。
かなりの距離を取らされた。射撃がやんだ。二人の姿がかき消えていく。風景に同化していく――熱光学迷彩。
ジローとリサ――移動しながらドローンをハッキング、静止させて撃墜。クランに見つからないうちにこれを繰り返すつもりなのだろう。
バッカじゃねえの――クランはほくそ笑んだ。戦闘支援システムに先ほどまで二人がいた場所を入力。ドローンとの位置関係を元に、移動予測地点を解析。思考トリガーで左腕のミサイルポッドを呼び出す――座標入力。左手の拳を空中に突き出した。拳が前にせり出して、支点を軸に下へ降りた――手首のミサイル発射口が露出した。発射――弾体が空中に躍り出た。一瞬遅れてロケット推進音。二人が移動したと思われる座標の上。ミサイルが空中で分解した。同時に、無数の小さな爆弾が地面に降り注ぐ――クラスター爆弾。
無数の音――硬い物体が何者かに跳ね返る音。すかさず背中からグレネードランチャーを取り出した。水平に撃った。着弾――爆風と炎。ダメージを与えられなくても、熱と煙で一時的にセンサーを麻痺させる。目と耳を奪う。クランも熱光学迷彩を起動。ヘッドセットから妨害電波を出してジャミング。走り寄る。距離を詰める。
煙が晴れる――ジローのアーマーの一部分が空中に浮かび上がった。熱光学迷彩のレイヤーが高熱で剥がれたか、処理が追いつかず欺瞞しきれなくなったか。ジローからの射撃はない。クランを見つけられていない。その隙に走った。後ろへ回り込んだ。ジローの後頭部にグレネードランチャーを突きつけた。
「テメエの葬式は何宗で出せばいいんだ?」
硬いものが地面を叩く音がした――ジローが地面を叩いている。グレネードランチャーを後頭部に押しつけた。
「降参の合図だよ」
ジローの声がした。微かに震えているように聞こえた。
数秒の間があった――ジローとリサが何もない空間から現れた。熱光学迷彩を解除した。
リサの表情――驚きと恐怖に彩られていた。所々にかすり傷を負っている。あの攻撃を受けてかすり傷で済んだ――ジローが必死でガードした。
ジロー――表情はうかがい知れない。しかしアーマーの向こうから怯えが伝わってくる。アーマー――無数の傷、ところどころに穴。シールド――蜂の巣のようになっている。使い物にならない。クランのクラスター爆弾は装甲車の装甲も貫通する性能がある。アーマーが高性能でも、個人で携行できる兵器の耐久性には限界がある。
「そこで待ってろ」
変な真似をしたら撃つ――たっぷりと脅しをかけながら、残りのドローンを撃墜した。




