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赫らの紅  作者: 紀伊・千尋(きいの・ちひろ)
第3章 孤独な共生
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第2節「僕は臆病だからね」

※ 本作は、「鈴吹太郎」「有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチ」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『トーキョーN◎VA THE AXLERATION』の二次創作物です。(C)鈴吹太郎/F.E.A.R.

※ 時代設定は『トーキョーN◎VA THE Detonation』の末期、現在のフェスラー公国がまだヨコハマLU$Tと呼ばれていた頃。イワサキのアーコロジーがヨコハマにあった頃です。

※ 一部の登場キャラクターは筆者のTRPG仲間から許可を得て借用しています。


 訓練所へ向かう通路。クランはリサとジローの少し後ろを歩いた。後ろから見ていればいろいろなことがわかる。背中から襲われる心配もいらない。リサは相変わらずジローにぴったりくっついて、腕を握って歩いている。

 リサが話す内容――他愛もない話。どこのお菓子がおいしい、どの服や化粧品がきれい。店の名前やブランド、通り一遍の評判ならウェブの情報を眺めているだけでもわかる――リサの話はウェブの情報よりディテール豊かで、臨場感があった――頻繁に外を出歩いていると見ていい。

 ジローが話す内容――リサの話についていっている。店の話を振られればすぐに反応している。ジローとリサは普段からペアで行動している――推論が確信に代わってきた。

 傭兵や工作員がただの道楽で一緒に行動するはずがない。推論――二人が連携することで弱点を補い、長所を伸ばす。二人の能力の詳細はわからない。しかしなんとなく見える。リサは戦闘が得意そうには見えない――恐らくは支援に長けている。そこから考えられる可能性――ジローは戦闘が得意で、リサの支援を受けてさらに能力を発揮する。

 疑問――なぜ今になって半蔵は二人をクランに付けると言い出したのか。

 可能性――クランの監視、または処分。あるいは――利用。

 監視されるだけでも厄介だ。アーガスに連絡を取るタイミングが難しくなる。

 可能性全てに対応できる対策――模擬戦で勝つ。力の差を見せつける。クランが上だと学習させる。

 歩いている間も、ジローとリサは時折横目でクランのことを見ていた。

 ジローの歩く姿は落ち着いている。大股で歩いたり、足を踏みならしたりするような真似はしていない。リサの歩く姿も言葉遣いとは裏腹に粗野な感じはしない。歩幅は小さく、必要以上に音を立てないように歩いている。

 一見他愛ないことを話しているようだが、中には二人にしかわからないやりとりが混じっているのかも知れない。クランにどう対応するかの算段。

 二人の様子を観察しているうちに、訓練場に着いた。目の前には野原が広がっている。目立った障害物はない。野原にはドローンや標的機が並んでいる。台数――31台。

 後ろに気配がした――服部・半蔵。声がかかった。

「これを全て破壊しろ。撃破数の一番多い者が勝者だ」 

「実弾演習ですか?」

 ジローから声が上がった。

「標的機にはゴム弾が装填してある。お前達が使う弾は実弾だ。標的機だからな、破壊して構わん」

「一つ聞いていいか?」クランが尋ねた。「他の二人に弾が当たっても、恨みっこなしってことか?」

 半蔵がうなずいた――肯定。

「それはお前も同じことだ」 

 リサとジローの表情を見た――動揺はない。驚きもない。初めから織り込み済みか、それとも――事故に見せかけてクランを始末するのが目的か。

「説明は終わりだ。準備しろ」

 ジロー――コンテナを開けて、中から何かを取り出していた。正体――パワーアシストアーマー。人工筋肉やアクチュエータを用いた強化防護服。重装甲を持ちながら歩兵の機敏な動きを損なわず、大型の火器や近接戦闘兵器も携行できる。

「僕は臆病だからね」

 クランの視線に気づいたのか、ジローが言葉を送ってきた。コンテナの中身が全て揃っていることを確かめたのか、独りうなずくのが見えた。

「これから着替えるから、少し離れていてくれるかな」

 ジローがコンテナの中身を持ってテントの中へ姿を消した。クランも背中を向けて反対方向へ歩いた。一度建物の陰に隠れる――熱光学迷彩を起動。建物の陰からテントの様子を窺った。リサがテントの前に立っている。数分経過した。ジローが出てきた――パワーアシストアーマーの着装を終えていた。がたいのいいジローがさらに一回り大きくなった。 

 ジローを観察した――脚、胴体、腕をくまなく覆うプロテクター。プロテクターは白に近い灰色で塗装されている。

 クランが以前にDAKの番組で見かけた騎士の鎧――それに似ているが、ジローのアーマーは全体的に角張っている。戦車や装甲車両を想い起こさせる。

 素肌が露出している場所はない。頭――フルフェイスのヘルメットで覆われている。顔――マスクで隠されている。ヘルメットにはアンテナ状のパーツが、マスクにはバイザー状のパーツがついている。推測――外部の情報はカメラやセンサーで入手する。着装者の目や耳を危険にさらさないことを優先している。

 プロテクターの材質――恐らくは複合装甲。炭素繊維強化プラスチックとセラミックの組み合わせ。金属より軽い素材だが、全身を覆うプロテクターはかなりの重さになる。人間が着て動くには動力の助けがいる。モーター――見当たらない。ジローが腕や足を動かしても、モーターの音が聞こえてこない。推測――人工筋肉が別にある。 

 肘や膝にはプロテクターの隙間がある。隙間から黒い布のようなものが見える――インナーウェア。推測――インナーウェアが人工筋肉の役目を果たす。

 股関節にも隙間があるはずだが、腰から武者鎧のような装甲板がぶら下がっていて、股関節を覆い隠している。

 武装――どれも生身の人間が扱うものより大型。アサルトライフルを携行している。大腿部にウェポンラック――拳銃とナイフを装着している。背中――降りたたまれた板のようなものが見える。盾か?

 結論――ジローの担当は拠点防衛、または正面からの攻勢。

 ジローはこちらの位置をつかんでいたか――不明。リサの能力――不明。索敵や警戒、長距離射撃における射弾の観測と修正?

 頃合いを見計らって、熱光学迷彩を解除。ジローとリサのところに戻った。

「準備はできたか?」

「ああ、いいよ」

 ジローの声――マイク越しに伝わってきた。

「早く終わらせよ?」

 リサ――眉を歪めながら、面倒くさそうに声を発していた。

 三人の様子を見て、半蔵が近寄ってきた。右の手の中には竹串らしき何か――手を突き出してきて、「引け」と告げた。「くじ引きで最初の持ち場を決める」

 いかさまのしようはないはずだ――ジローやリサと半蔵がグルでなければ。グルの可能性――消してもよさそうだった。模擬戦をやれと告げられたときの二人の反応を見る限りは。

 クランが最初に手を差し出した。真ん中の竹串を指でつまんで、引き抜いた。竹串の先端――赤く塗られていた。

 ジローとリサも同じようにした。ジロー――青。リサ――黄色。くじの色を見て、半蔵が告げた。

「赤はポイントC、青はB、黄色はAだ。配置につけ」

 クランの視覚センサーに輝点――ポイントCの位置がマークされた。

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