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赫らの紅  作者: 紀伊・千尋(きいの・ちひろ)
第3章 孤独な共生
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第1節「テメエの葬式は何宗で出せばいいんだ?」

※ 本作は、「鈴吹太郎」「有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチ」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『トーキョーN◎VA THE AXLERATION』の二次創作物です。(C)鈴吹太郎/F.E.A.R.

※ 時代設定は『トーキョーN◎VA THE Detonation』の末期、現在のフェスラー公国がまだヨコハマLU$Tと呼ばれていた頃。イワサキのアーコロジーがヨコハマにあった頃です。

※ 一部の登場キャラクターは筆者のTRPG仲間から許可を得て借用しています。


 クランは部屋で過ごしていた。炭酸水を飲みながら、ソファーに背中を預けてDAKを見ていた。

 特に何かを見ようと思って見ていたわけではない。ただ、なんとなくつけていた。番組がニュースに切り替わった。各国首脳の動き。会社の業績。チャンネルを変えようとして手が止まった――紛争地帯での動向。少年兵や少女兵の使役――チャンネルをそのままにして見ていた。村を焼き払う。近しい者をその手で殺させる。行き場をなくして、ここしかないと思い込ませる。その心につけ込んで、戦う以外に何もできない者に変えていく。

 血が逆流した。手の中のコップを強く握った――割れて砕け散った。ガラスの破片がクランの手のひらに傷を付けた。流れ出る血を見つめた。クランの心に疑問が浮かんだ――なぜ、アタシはこんなにも憤る?

 

 内容がまた変わった。学者やジャーナリストが並んで座っている。司会者らしきジャーナリストが内容を説明する。「知能とは何か」をテーマにして、学者に討論させるらしい。

 一人の学者曰く、人工知能は人間以上のスピードと正確さでいろいろなことをこなせる。別の学者が反論する。人工知能は文章の読解もできないし、言われたことしかできない。直感を働かせることも、相反する欲求が自分の中でせめぎ合うこともない。それで知能と言えるのか。

 ジャーナリストが口を挟んだ。問題を整理したい。知能とは何か?

 学者が口々に好き勝手なことをしゃべり始めた。議論は堂々巡りしていた。要するに、学問の世界では結論は未だに出ていないといういことらしかった。ジャーナリストがまた口を挟んだ。

「お話を伺っている限り、知能というのはそれが知能であると他の誰かが認めなければならないということでしょうか?」

 部屋のDAKに着信――服部・半蔵からの呼び出し。

 仕事用の服に着替えて、半蔵のもとへ向かった。


 司令室。自動ドアが開いて中に入った――何かが違う。半蔵がいない。代わりにいたのは、女。髪は金色。ウェーブのかかった切りっぱなしのボブヘア。ミニのパーティードレスのような服を着ている。自動ドアが開くと、女は気づいて振り返った。甲高い声。

「何、その格好? こんなところでコスプレなんて、わけがわからないんですけど?」

 外見の年齢はクランと同じかやや下。まだあどけなさが残る顔立ち。輪郭や目元は柔らかいラインを描いている。首にはサファイアらしき青いネックレス。両耳には同じく青いイヤリング。この手の女に魅力を感じる男は多いだろうが、不機嫌そうに眉をゆがめているおかげで台無しにしている。

「テメエこそパーティーなら場所が違うぞ」

「はあ、何言ってんの? こんなところにパーティーと間違えて入ってくるなんてあり得ないんですけど?」

 減らず口に付き合う義理はない――右手でかんざしを引き抜く。素早く踏み込む。かんざしを眉間に突きつける。

「テメエの葬式は何宗で出せばいいんだ?」

「ちょっと、こんなところで何考えてるの!?」

 女――言葉と裏腹に動揺が見られない――センサーに反応。何者かが部屋に入ってくる。

「そこまでにしてくれるかな」

 後ろから男の声がした――落ち着いた低めの声色。声のした方を一瞥した。がたいのいい黒髪の男。体格はアーガスより立派だ。肩幅も広い。髪を短く刈り揃えているのも似ているが、髪型が異なる。今時珍しい角刈り。しかし穏やかな目元と顔立ちのおかげで強面には見えない。服装はポロシャツとチノパン。

 もともと女を殺すつもりはなかった。しかしどちらが上かは学習させておかなければならない。女を解放した。女が小走りで男の元に駆け寄った。そのまま男に抱きついた。

「ああ、怖かった。死ぬかと思った! ちょっと何あの女! なんとか言ってやってよ!」

 男は女を抱きしめ、落ち着かせようと言葉をかけていた。

「恋人自慢ならよそでやれ」

 女がクランをにらみつけてきたが、男が女の名前を呼ぶとうつむいた。渋々引き下がったということだろう。リサ――女の名前。男がクランに問いかけてきた。

「君、服部課長に呼ばれて来たの?」

 この男も、リサという女も、半蔵に呼ばれて来たのだろうか? だとしても、クランから手札を明かすつもりはなかった。

「半蔵から何も聞いてないのか?」

「その様子だと、君も僕らのことは何も聞いていないみたいだね」

 推論――恐らくは命令系統の独立した者達。

「僕はジロー。この子はリサ」

 相変わらず憮然としか顔で男をにらみつけた。

「せめて、名前くらいは教えて欲しいな」

 そこまで言われて、ようやく名前を教えた。情報を小出しにする――素性のわからない相手に、うかつに情報は教えられない。

「クラン。クラン・カーラだ」 

「改めてフルネームで名乗ろうか。ジロー・ジュノーだ、よろしく。リサ、ほら君も」

 リサと呼ばれた女は不機嫌そうに横を向いたまま、名前だけを告げた。

「権藤・リサ」

 クランは改めて二人を観察した。ジロー――アスリートのように見える。リサ――女子高生と言っても通りそうだ。工作員には見えない。しかしここにいる――イワサキと関係があるのは間違いない。雇われたのか?

 考えているうちに目の前の扉が開いた。リサとジローの視線も集まる。扉の向こうから現れた人影――服部半蔵。半蔵はクラン達を見回してうなずいた――全員が揃っていることを確かめたらしい。

「なんだこいつらは」

 リサとジローを横目でにらみながら、半蔵に向かって口を開いた。

「こっちこそ意味がわからないんですけど?」

 リサの甲高い声――クランをにらんでいる。ジローがたしなめるのが聞こえる。

「発言を許した覚えはない」

 半蔵が低い声色で、威圧するかのように告げる。臆せず見返した。

「貴様らにはこれから部隊を組んでもらう。誰が指揮官になるか模擬戦で決めろ」

 ジロー――緊張気味に唇を結んだ。リサ――動揺と非難が入り交じった甲高い声を上げた。クラン――鮫のように笑った。

「訓練所へ向かえ。私は後から行く」

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