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シ・ケ・イ・ダ  作者: あみれん


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9/12

ダイアログーその9

「オレ様たちの場合はだ、成虫になってからメスと交尾できるのは1、2週間だ」

「交尾できずに死んでいくオスも多くいる。自慢じゃないが、いや自慢だな、オレ様は5匹のメスと交尾をしたぞ」

「例えばだ、この大切な期間に台風なんか来てみろ。交尾なんぞ不可能じゃ」

「オマエにわかるか?迷ったり悩んだりする暇なんぞないのだ。生きる目的がはっきりしている、し過ぎている」

「オマエのように"死にぞこないと変わりたい"なんぞ、露ほども思わん」

「針の穴を通すようなチャンスに全力で集中するのだ。オマエにはわからんかもしれんな」

「人間のように、長い期間、ただのお遊びでダラダラと交尾を楽しむのとは訳が違うぞ。まぁその後で痛いしっぺ返しを食らう場合もあるようだがな」

「まぁ、オマエはそれもできないようだがな……」


クッソ。

だから何なんだよ。

セミのくせに、エッラそうに。

ただのモテ自慢じゃないかよ。

ってか……こんな死にぞこないのセミに女のことで言われたい放題、しかも何も言い返せない僕って……

いや、そうだよ……大体、セミと人間を……


「今更、セミと人間を一緒にするな、とは言わせんぞ。オマエはそのセミと入れ替わりたいんだからのう」


今はそんなこともう思ってないよ。

言ったことをジンワリと後悔してるさ。

オレ様がこんな性悪で不愉快なヤツだと知っていたら、オレ様と入れ替わりたい、なんて思っていないさ。

いいか、僕は確かに死にたいくらいに生きる希望を無くしている、いろいろあってね。

でもね、これまで人をわざわざ不愉快にさせようと思ったことはない、オレ様のようにね。

何故かわかるか?


「わからんね」


それはね、社会の秩序を維持するために必要なことだからだ。

皆が皆、オレ様のように、平気で人を不愉快にするようなことになったら、社会の秩序を維持できないだろう?

人間には、言語がある、ジェスチャーがある、表情がある。

それらは何故人間だけに与えられたかわかるかい?

社会の秩序を安定させるために、人間に授けられた能力なんだ。

もちろん、使い方次第では逆効果にもなる。

でも、そのおかげで、人間はこれだけ繁栄してきたんだ。

まぁ、いろいろと諍いもあるけどね。

僕はいつも、無理せずに、自然に自分らしく生きたいと思ってきた。

つまり、人を不愉快にすることは、僕にとって不自然なことなんだ。

オレ様は"生きる目的がはっきりしている、し過ぎている"といったよね。

僕にとっては、授けられた能力を本来の目的に沿って、自然に使うことが生きる目的、というか理由だったんだ。

その先に、何かいいことが待っているはずだ、そう思ったこともある。


「話が長いのぉ……で、何が言いたいんじゃい」


僕はもうオレ様と入れ替わりたい、なんて思っていない。

思ったことを後悔している。

それと、セミと人間を一緒に語るな。

人間はね、人生100年時代、と言われているんだよ。

セミの時間軸とは違うんだ。

オレ様は僕をアブラムシにして、人間とアブラムシでは、見えている世界の次元が違うことを僕に見せようとしたんだろ?

なのに、何故、セミと人間は同列に語っているんだい?


オレ様の羽がジジっと音を立てた。


「言いたいことはそれだけか?」


まだあるけど、話が長い、って言われたからね……ここで……


「ふん、それも他者を不愉快にさせないとかいう配慮とやらかね……」


「では、言わせてもらおう」

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