↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シ・ケ・イ・ダ  作者: あみれん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/12

ダイアログーその10

「オマエ、自分で分かって言っておるだろう」


…何がだい……?


「この期に及んでまだ白を切るか」


だから、なに…


「オマエはな、自分のことをよくわかっておる」

「"無理せずに、自然に自分らしく生きたい"だと?」

「"人を不愉快にすることは、僕にとって不自然なこと"だと?」

「自分はそんなことは本気で思っていない、ということをよく分かっておる」

「本気で思っていないことを口にしてしまうことも、よく分かっておる」


そんなことはない。

無理すると、必ずどこかで破綻して、無理していた自分を後悔する。

人を不愉快にすると自分も不愉快になる。

それが嫌なんだ。

本気でいやなんだ。


「だとしてだ、わざわざ他者に言うほどのことか?」

「いいか、各個体の優先順位というモノはたいがい違っておる」

「例えばだ、生きるか死ぬかの瀬戸際に立っておる者に"無理せずに、自然に自分らしく生きたい"などと言うことに何の意味があるんじゃ?」

「ましてやこのオレ様は、今まさに死にゆく存在じゃ」

「"おお、それは素晴らしい!"などと言われるはずがない。少なくともオレ様は言わん」

「実は、オマエはそれをよくわかっておる、違うか?」


・・・・・・


「ふん、認めざるを得んようだな」

「では何故、無駄だと分かり切ったことを言ってしまうのか。これがオマエの最大の問題じゃ」

「オレ様に、"自分と入れ替わらないか?"などとホザイておったな。そんなことできるわけがないのを知りながらだ」

「それはな、頭では理解していながらも、"抑えきれない怒りや不満"、"淡い期待"、"低レベルな承認欲求"、そんな感情や衝動が理性を上回っている状態、とでも言っておこうかの」

「ところがだ。いざ想像しろ、と言われてオマエがやったことはなんだ?」

「無駄なことし放題な想像の世界に居ながら、自分よりデカいアリの前でビビりまくっとったな」

「いざ自分が窮地に立たされた瞬間に、乏しい知識を総動員して、そういった感情や衝動を払拭して、急に理性的になりおった」

「もしオマエが、あの瞬間に誰かに"無理せずに、自然に自分らしく生きたい"と言われたらどう思うのじゃろうなぁ」


ちょっと……僕には"話が長い"と言っておきながら、オレ様だって随分と話が長いじゃないか。

矛盾していないか?


「やれやれ、含意をよむ力も乏しいのぉ。当然、"無駄な"話が長い、と解釈すべきだろうが」

「だったら、オレ様の話で無駄だと思う部分を指摘してみろ」


・・・・・・


「ふん、また無駄話を一つ増やしおって」

「いいか、オマエの言うこと、やることは、すべてオマエが考えた予定調和の世界の域を脱しておらんのだ」

「"こんなこと言ったって、実際には起こらない"、これを分かったうえで言う」

「実は、そうやって自分らしく生きようとしているオマエは、そんなオマエ自身が嫌いなのではないか?」

「乏しい予定調和の世界でしか生きられない。それが、オマエの言う"自分らしく生きる"ということなのだろう?」

「だが、オマエはそんな自分を周囲に理解してほしい。できれば評価してほしい」

「ところが、オマエは周囲をひとまとめにして考えておる。つまり、自分とその他大勢じゃ」

「他者にはそれぞれ異なる事情があり、優先順位がある。何を評価するかも、個体によって違う」

「それなのにオマエは、他者が何を求め、何を評価するのかを知ろうともせず、自分らしく生きていれば、いつか誰かが評価してくれると期待しておる」

「だが、集団というものは、個体それぞれの優先順位を、そのまま受け入れてくれるわけではない」

「集団には集団の目的があり、その目的に役立つ能力や振る舞いが評価されることもある」

「もちろん、集団によって求められるものは違う。だからこそ、何を求められているのかを知り、自分に何ができるのかを考える必要があるのじゃ」

「ところがオマエは、そこから先を想像しようとせん」

「どんな能力が必要なのか。どうすればそれを獲得できるのか。そもそも、誰に評価されたいのか」

「そういうことを考える前に、あきらめてしまう」

「そして、"無理せずに、自然に自分らしく生きたい"などという、耳ざわりのよい言葉で自分を納得させる」

「オレ様には、そう見えるのじゃ」

「死にぞこないのセミに"入れ替わろう"とたわ言をほざく」

「その死にぞこないのセミに罵倒される」

「救いようがないのぉ」


ちょ、ちょっと待ってよ!

僕は頭がコンガラガッてきたよ。

だけど……オレ様は一体僕の何を知っていてそんなことを言うんだい?

どこにそんな権利……


「ふん、また無駄なこと言っていることに気づいて寸止めしおったか」

「まぁ、ちょっとは学習能力があるようじゃな」

「オレ様の話したことは、全てオレ様の想像によるものに決まっとるじゃろう」

「想像力の使い方の模範例の一つだ」


……ええっと……

僕は、今、なんでこんな目にあっているんだっけーーー?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。