ダイアログーその6
鈍くて重い振動の一撃が、僕の体中を貫いた。
体がーー動かない。
突然、僕の目の前に何かが突き立つ。
それは、一本の巨大な柱のように見えた。
表面は黒く、鈍い光を放っている。
そして、その柱から無数の硬そうな毛が突き出している。
まるで硬質な黒い箒……
いや、アリの……脚だ。
さっき、木の幹をくるくる回って登っていたヤツだ。
黒い箒は僕を覆っていた影と共に消えた。
そうだ…アリはアブラムシを捕食することがある、って聞いたことがある、いや、読んだのかもしれない。
アリだけじゃない、てんとう虫とかも…
確かアブラムシは……植物の汁を吸うんだよな。
なんだよ、僕は食物連鎖の底辺じゃないか。
むかし…昔勤めていた会社の誰かが言ってたな。
オレの家は貧乏だったから、オレは大学に行けなかった。そのせいで、オレの会社での今の待遇は、同期で大卒の連より遙かに低い。
世の中公平って訳じゃない、それは分かっている。
だがな、オレの生き抜く力は誰よりも強いんだ。
今ここで、世界がひっくり返るような大惨事が起きて、皆が全てを失って同じスタートラインについて、生きるか死ぬかの世界が始まる。
そしたら、オレはヤツらの頂点に立って立場を逆させる自信がある。
それを考えると、ワクワクするんだ……
僕は…なんで今こんなことを考えているんだ…
もう一人別の顔が浮かんだ。
この国ってさ、いろいろとアマイじゃん。
アマイし便利だからさ、スポイルされちゃって、生き抜く力が養えないじゃん。
骨抜きになっちゃうよな。
だからさ、ボク、海外に行くんだ。
生きるか死ぬかっていう状況さえあるかもしれない、海外の慣れない環境に身を置いて自分を鍛えるんだ。
生き抜く力をつけるために。
羽音が…近づいてくる……
喰われるーーーーーー!




