7話
(なんで避けるんだよ)
一生は、少しだけ苛立っていた。
前は普通に話してたのに。
「なんかしたっけ、俺」
小さくつぶやく。
近づこうとすると、タイミングが合わない。
(……意味わかんねえ)
でも、目で追ってしまう。
授業中も、休み時間も。
(あいつ、絶対なんかあるだろ)
気づいてる。
でも、どうしていいかわからない。
⸻
放課後。
教室に残っていた美桜は、プリントをまとめていた。
(早く帰ろ)
立ち上がったとき。
「谷川」
名前を呼ばれる。
びくっと肩が揺れる。
振り返ると、関根くんが立っていた。
「ちょっといい?」
逃げ場がない。
「……なに」
声が少しだけ固い。
関根くんは、少しだけ間を置いてから言った。
「最近、なんで避けてんの」
まっすぐすぎる問い。
言葉に詰まる。
「別に避けてない」
「避けてるだろ」
即答。
「前と全然違う」
何も言えない。
言ったら、全部崩れそうで。
「俺、なんかした?」
その一言が、刺さる。
(してないよ)
(悪いのは、私だよ)
でも、言えない。
沈黙。
その空気に耐えきれなくなって、
美桜は小さく言う。
「……もう、あんまり話さない方がいいと思う」
関根くんの表情が止まる。
「は?」
「そういうの、よくないし」
「なにが」
「……いろいろ」
曖昧なまま、視線を逸らす。
関根くんはしばらく黙って、それから低く言った。
「意味わかんねえ」
当然の反応。
でも、それでもいいと思った。
「ごめん」
それだけ残して、美桜は教室を出た。




