5話
テスト前のため、すべての部活が休みになった。
そのため、授業が終わればみんなすぐ帰っていく。
美桜は日直の仕事で、少しだけ教室に残っていた。
昇降口で靴を履き替えていると、
「今帰り?」
後ろから声がして、振り返ると、関根くん。
「うん」
「俺、掃除当番で遅くなった」
少しだけ間があって、
「谷川、日直だっけ?」
「そうだよ」
「じゃあさ」
軽く言う。
「途中まで一緒に帰ろう」
さらっとした言い方。
深い意味はなさそうなのに、なぜか少しだけ引っかかる。
(初めてだ)
少し迷ってから、
「……うん」
と頷く。
外に出る。
初夏の空気。
人も少なくて、いつもより静か。
並んで歩く。
ほんの少しだけ距離がある。
でも――教室より、近い気がする。
「谷川の家ってどの辺?」
「丸丸のほうだよ。関根くんは?」
「うちは、三角の方」
「そうなんだ」
少しの沈黙。
でも、気まずくはない。
「テストやばくね」
「まだ大丈夫」
「それ余裕あるやつのセリフじゃん」
「関根くんは?」
「聞くな」
少し笑う。
いつも通りの会話。
でも、同じはずなのに、少し違う。
(なんでだろ)
交差点。
ここで、道が分かれる。
(もう、終わりか)
ふと、そう思う。
「じゃあ、ここで」
美桜が言う。
「おう」
関根くんが頷く。
ほんの一瞬の間。
なにか言おうとして、でも言葉が出ない。
「……またね」
小さく言う。
関根くんは少しだけ笑って、
「テスト終わったらな」
と返す。
それだけ。
それだけなのに、やけに残る。
帰り道。
ひとりで歩きながら、ふと思う。
(もう少し、話したかったな)
それが、ただの帰り道じゃなかった証拠だった。




