第23食 ピザ
砂漠の旅は二日目に突入していた。
昨夜の凍てつく寒さが幻だったかのように、頭上では再び太陽が狂ったような熱量を放射している。
砂を踏むたびにジャリッ、ジャリッという音が鳴り、その音さえも乾いているように感じられた。
「あー……暑い……マジで暑いゾ……。なんなんだよこのダンジョンは。昨日は殺す気で冷やしてきたくせに、今日は蒸し焼きカ……」
アグニが、巨大な手のひらで顔を扇ぎながら毒づいた。
汗が滝のように流れ、肌を濡らしている。
耳は不機嫌そうにピクピクと動き、尻尾は力なく垂れ下がっていた。
「砂漠ってのはそういうものだよ」
シャロは水筒の水をちびりと舐めながら答えた。
「砂漠ってのは地獄だナ……」
景色は昨日と全く変わらない。
黄金色の砂海と、青すぎる空。
美しくはあるが、終わりの見えない閉塞感は、冒険者の精神を蝕む毒だ。
その時だった。
ふてくされて視線をさまよわせていたアグニが、ふと足を止めた。
彼女の視線が揺らめく陽炎の彼方に吸い寄せられる。
「ん?おいシャロ、あれ」
アグニが指を差す。
シャロも目を凝らす。
ただの砂の起伏ではない。
砂丘の谷間に、何か異質な色彩の塊があった。
「……何か落ちてる?」
「ああ。なんかこう……布切れみてぇな。いや、あれは――」
二人は顔を見合わせ、警戒しながらも歩調を速めた。
近づくにつれ、その輪郭がはっきりしてくる。
人だ。
小柄な人影が、砂に半ば埋もれるようにしてうつ伏せに倒れている。
「冒険者か!?」
アグニが駆け出そうとした瞬間。
「待って!」
シャロの冒険者としての直感が警鐘を鳴らした。
上だ。
殺気が降ってくる。
「アグニ、空ッ!」
「何っ?」
アグニが見上げると、太陽を背にして飛んでいる影がいくつもあった。
翼長二メートルを超える猛禽類。
茶褐色の羽毛に、鋭利な鉤爪と嘴。
『デザートイーグル』の群れだ。
砂漠の空を支配する、風の魔物たち。
「今度は鳥か!」
アグニが即座に足を止め、腰を落として構える。
シャロも手を構え、迎撃態勢を取る。
だが、デザートイーグルたちは狡猾だった。
彼らは直接突っ込んでくることはせず、二人の頭上で急旋回すると、その翼を大きく羽ばたかせた。
ヒュオオオオオッ!!
鎌鼬のような真空の刃が無数に降り注ぐ。
「くっ、魔法攻撃!?」
「避けロ!」
シャロとアグニは左右に散開し、砂の上を転がる。
先ほどまで二人がいた場所の砂が、風の刃によって切り刻まれ、激しく跳ね上がった。
「卑怯だぞお前ラ!降りてきて戦エ!」
アグニが拳を振り上げて挑発するが、鳥たちは嘲笑うかのように高高度を旋回し続ける。
地上の近接ファイターであるアグニにとって、空からの遠距離攻撃は最も相性の悪い相手だ。
「アグニ、私を投げて!」
「わかった!」
アグニの決断は早い。
彼女は駆け寄ってきたシャロの腰を掴むと、砲丸投げの要領で回転し、遠心力を乗せて空へと放り投げた。
「うおおらあああっ!行ってこい!」
ロケットのように射出されたシャロは、風を切って上昇する。
突然飛び上がってきた獲物に、デザートイーグルたちが動揺したのがわかった。
「《360度リーフ・カッター》!」
シャロは空中で身を捻ると、身体から生成した無数の硬質化した葉を、全方位に散弾のように放った。
数匹のデザートイーグルが翼を切り裂かれ、バランスを崩して墜落していく。
「ナイスだシャロ!」
アグニが落下地点へダッシュする。
地面に激突し、砂煙を上げて悶える鳥たち。
再び飛び立とうと翼を広げた瞬間、アグニが攻撃をしかける。
「地上ならこっちのもんダ!!」
渾身の拳の一撃が放たれる。
墜落した三匹は、一瞬で物言わぬ肉塊へと変わった。
だが、まだ空には敵が残っている。
リーダー格と思われる一回り大きな個体が、金切り声を上げてシャロを狙った。
空中にいるシャロは回避行動が取れない。
凝縮された風の槍が、無防備なシャロに迫る。
「《リーフ・シールド》!」
シャロは大きな葉っぱを展開し、自然の盾を作り出した。
衝撃が盾を削り、シャロの体が後方へ弾き飛ばされる。
だが、傷は無い。
そのまま落下していくシャロ。
「アグニ!もう一回!」
着地寸前、シャロは叫んだ。
「任せロ!」
アグニは落下地点に滑り込み、落ちてくるシャロをキャッチし、再びブン投げる。
二度目の射出、今度はそのリーダー格の大きな個体に向けて放つ。
そしてシャロは茨を鞭のように伸ばした。
「捕まえた!」
茨がリーダー鳥の足首に絡みつく。
そして、そのまま遠心力を使って強引に振り回した。
横合いから援護しようとしていたもう一匹のデザートイーグル目掛けて、リーダー鳥をハンマーのように叩きつけたのだ。
ドゴオッ!
二匹が空中で激突し、もつれ合いながら螺旋を描いて落下していく。
砂の上に落ちた二匹が、ふらふらと立ち上がろうとした時。
「トドメだ!!」
アグニの拳が、その身体を粉砕した。
二匹は力尽き、動かなくなった。
「ふぅ……なんとかなったね」
シャロがふわりと着地する。
「全く、厄介な奴らだったゾ」
こうしてデザートイーグルは全滅したのだった。
***
戦闘を終えた二人は倒れている人物のもとへ急いだ。
砂に半身を埋もれさせていたのは、ボロボロのリュックを背負った小柄な女性だった。
特徴的な大きな三角形の耳と、ふさふさとした尻尾、キツネの獣人だ。
身につけているのは、砂塵にまみれてボロボロになったローブ。
その隙間から覗く銀色の髪は、かつての艶を失い、パサついているように見える。
「おい、生きてるカ?」
アグニが声をかけながら、身体を仰向けにひっくり返す。
その顔を見た瞬間、シャロの心臓が早鐘を打ったような感覚がした。
息が止まるかと思った。
「!!」
見間違うはずがない。
少し痩せてやつれてはいるが、その整った顔立ち、閉じた瞼の下にある皮肉げな瞳の色を、シャロは知っている。
「ヨシュア!!」
シャロはその場に膝をつき、彼女の頬に手を触れた。
熱い、異常なほどの高熱だ。
だが汗はかいていない、唇は乾燥しきってひび割れている。
「知り合いか?」
「うん、仲間、私が探していた魔術師のヨシュアだよ!」
シャロの声が震えた。
生きていた、見つけた。
だが状態は最悪だ。
呼吸は浅く速い、脈も弱々しい。
「完全に脱水症状と熱中症だね、このままだと危ない」
「どうする?ここで水飲ませるカ?」
「ダメ、意識がない状態で無理に飲ませたら誤嚥する。とりあえず体温を下げないと……オアシスに戻ろう!あそこなら水も日陰もある!」
「わかった!運ぶゾ!」
アグニはヨシュアを軽々と抱き上げると、来た道を全速力で走り出した。
シャロもその後を追う。
どうか間に合ってくれ、と願いながら。
***
オアシスの木陰。
湖からの涼しい風が吹き抜ける場所に、ヨシュアを寝かせた。
彼女のリュックも近くに置いておく。
ボロボロで、ヨシュアが元々持ってたものではないリュック。
恐らくシャロと同じく冒険者の死体から手に入れた物だろう。
シャロは濡らした布でヨシュアの額や首筋、脇の下を丁寧に拭き、気化熱で体温を下げる処置を施した。
さらに、ポーションを布に染み込ませて少しずつ口に含ませる。
「んっ……」
一時間ほど処置を続けただろうか。
ヨシュアの瞼がピクリと動き、微かなうなり声が漏れた。
ゆっくりと、銀色の瞳が開かれる。
焦点が合わず、ぼんやりと虚空を見つめている。
「……ヨシュア?わかる?」
シャロが覗き込む。
ヨシュアの視線が彷徨い、やがてシャロの顔で止まった。
「だれ……だ……?」
掠れた声、まだよく目が見えてないのだろう。
「私だよ、シャロだよ。わかる?」
「シャ……ロ……?」
ヨシュアは瞬きを繰り返し、訝しげに眉を寄せた。
そして、その名前を理解すると、ガバッと飛び起きる。
「シャロ!?お前なのか!?」
そして、シャロの頭にある花飾りや、緑の髪をまじまじと見つめた。
「その髪、その身体、一体どうしたんだ?一体何があったんだ?」
「自分でもよくわからないんだけどね。それより、生きててよかった。本当によかった……」
安堵のあまり、涙が滲む。
彼女は小さく息を吐き、口元を歪めて、いつもの皮肉げな笑みを浮かべようとして、力なく崩れた。
「おーい、目が覚めたカ?」
そこへ、水を汲んできたアグニが顔を出した。
見知らぬ巨体の獣人に、ヨシュアの目が鋭く細められる。
「……誰だ、こいつは?」
「あ、紹介するね。この人はアグニ。ここまでずっと一緒に旅してくれたんだ」
「アグニだ。よろしくナ!」
「……ヨシュアだ」
アグニが屈託なく笑う。
ヨシュアは警戒心を解かないまま、短く名乗った。
「それよりヨシュア、みんなはどうしたの?エミルとセレナは?」
シャロが核心を問う。
ヨシュアの表情が曇った。
痛みを堪えるように目を伏せる。
「ここには居ない……どこにいるかもわからない……」
「一体何があったの……?」
「レッドドラゴンに襲われた時……覚えてるよな?」
「うん……忘れもしないよ」
レッドドラゴン、あれが吐いた炎による熱さと痛みは、忘れようと思っても忘れられない。
「あの時、俺の転移魔法で緊急離脱を試みたんだ」
ヨシュアは乾いた唇を舐め、語り始めた。
「だが、転移魔法は高等技術だ。座標の固定、空間の定義、魔力の安定供給……どれか一つでも欠ければ失敗する。ましてや逃走中の緊急状態で、魔力も枯渇寸前だった」
「じゃあ……失敗したの?」
「ああ。術式が暴走して、全員バラバラの場所に飛ばされたらしい。俺は気づいた時にはこの階に飛ばされていた」
ヨシュアは自分の掌を見つめ、ギュッと握りしめた。
「それだけじゃない。転移魔法を無理やり発動した反動で、俺の魔力回路はボロボロになってしまった。今の俺には転移魔法は使えないし、ここ四層で死にかける程度の力しか持ってない……すまない、シャロ。足手まといを拾ったな」
自嘲するヨシュア。
魔術師にとって、魔法を使えないということは死刑宣告に等しい。
プライドの高い彼女にとって、それは耐え難い屈辱と絶望だったはずだ。
重苦しい沈黙が流れる。
だが
「なんだそんなことか!大丈夫だ、シャロの飯を食えば力が戻るぞ!」
アグニがヨシュアの背中をバシンと叩いた。
「……はぁ?飯を食うだけで魔力回路が治るわけないだろ。お前、馬鹿か?」
ヨシュアが冷めた目でアグニを見る。
初対面の相手にいきなり「馬鹿」呼ばわり。
「むぅ!お前シャロの飯を知らないからだゾ!シャロの飯は元気になる凄い料理なんだゾ!」
「それはお前が単純な思考回路をしてるからだろ。魔術理論を無視するな」
ムッとするアグニと、冷淡なヨシュア。
水と油のような二人だが、シャロは思わず吹き出しそうになった。
かつてのパーティの賑やかさが戻ってきた気がしたからだ。
「まあまあ二人とも。でもヨシュア、アグニの言うことも一理あるよ。まずは栄養を摂らないと、治るものも治らない」
「……まあ、否定はしない。流石にもう、限界が近かったんだ」
ヨシュアのお腹が、可愛らしい音を立てて鳴った。
「よし、じゃあ腕によりをかけて作るね。わたし特製、スタミナ回復メニューだよ!」
***
シャロは、先ほど倒したデザートイーグルの死体を集め、その前に跪いた。
不思議そうに見守るヨシュアの前で、彼女は死体に手を触れ、魔力を流し込んだ。
すると、死体から急速に緑のツルが伸び、葉が茂り出した。
デザートイーグルの養分を吸い上げた植物は、黄金色の穂を垂れる小麦、鮮やかな黄色のレモン、丸々とした卵、そして真っ赤なトマト、玉ねぎ、ニンニクの実を次々と結実させていく。
「なっ……!?」
ヨシュアが目を見開き、あごが外れんばかりに驚愕した。
「おい、なんだそれは!一体何をした!?」
「驚くよなー。アタシも最初はビビったゾ」
「ビビるどころの話じゃない!こんな芸当、大賢者でも不可能だぞ!」
ヨシュアがまくし立てる。
魔術師としての常識が悲鳴を上げているのだ。
「いいか、魔法で植物を急成長させることは可能だ。だが、それはあくまで補助用か戦闘用だ。小麦や野菜と言った食材を成長させるには、土壌と肥料が必要不可欠なんだ!当然、魔物の死体なんて肥料にも土壌にもなりやしない!」
ヨシュアは立ち上がり、実ったトマトを手に取って検分する。
「それに、植物から卵だ?滅茶苦茶だ。一体どこでそんなデタラメな力を得たんだ?そもそもその姿、本当に何があった?」
シャロは収穫した小麦をすり鉢ですり潰しながら、手を止めてヨシュアを見た。
「……実は、私はヨシュアの転移魔法の後、目が覚めたら『コルンムーメ』になってたんだ」
「コルンムーメ?あの下級の植物魔物にか?」
ヨシュアが絶句する。
人間が植物の魔物になるなんて、前例が無い。
「一体何が……?あの転移魔法に魔物化の副作用なんてないはずだぞ」
「私も何が何だかよくわからない。とにかくコルンムーメになった私は、魔物に穀物を生やす能力が身に付いてたんだ。最初は生きるためにそれを食べてたんだけど……」
シャロは作業を再開し、小麦粉を器に落としながら続けた。
「それを食べ続けたら、今度は『エッグプラント』に進化して、卵を生やす能力が手に入った。さらに食べ続けたら『マンドレイク』になって、野菜を生やす能力が。そして次に進化したのが、この『アルラウネ』ってわけ」
「何故魔物になったのかは謎だが、その能力については合点がいったな……コルンムーメ、植物魔物の由来の能力なら、魔物を肥料にして作物を実らせる力があっても不思議では無いな……現象がぶっ飛びすぎてるが……」
ヨシュアは頭を抱えた。
だが、手にしたトマトからは、瑞々しい生命力と芳醇な香りが漂っている。
毒素などは微塵も感じられない。
「だが、味はどうなんだ?コルンムーメが作る麦は、泥のような味がすると聞くぞ」
「大丈夫だ!シャロの飯は滅茶苦茶旨いんだぞ!」
アグニが胸を張って保証する。
ヨシュアはため息をつきつつも、トマトの香りに喉を鳴らした。
「……まぁ、シャロが不味い飯を出すとは思わんがな。あいつは料理に関しては妥協しない奴だったし」
そんな話をしつつ、シャロは作業を進める。
まずは生地作り。
挽きたての小麦粉に、少量の砂糖と塩、そして卵と水を加えて混ぜ合わせる。
粉っぽさがなくなるまで手でしっかりと捏ねる。
生地が滑らかに纏まってきたら、いくつかに切り分けて濡れ布巾をかけ、少し休ませる。
その間にソースと具材の準備だ。
完熟トマト、玉ねぎ、ニンニクをみじん切りにする。
鍋に油を引き、ニンニクを弱火で炒める。香ばしい香りが立ち上り、ヨシュアとアグニの鼻孔をくすぐる。
そこに玉ねぎを加え、透き通るまで炒めたら、トマトを投入。
塩胡椒で味を調えながら、水分を飛ばして濃厚なトマトソースを作る。
「いい匂いだ……」
ヨシュアがお腹を押さえる。
さらに別の鍋で、ミルクを温め、そこに収穫したレモンを絞って果汁を加える。
酸によってタンパク質が凝固し、ミルクが分離し始める。
それを清潔な布で漉し、水分を絞ると、真っ白でフレッシュなカッテージチーズのような塊ができあがった。
「すげぇ、ミルクが固まった!」
「酸凝固だよ。即席だけど、さっぱりしてて美味しいチーズになるんだ」
準備は整った。
休ませていた生地を麺棒で薄く伸ばし、円盤状にする。
そこに特製トマトソースをたっぷりと塗り広げ、即席チーズをちぎって散らす。
最後にバジルの葉を乗せれば、焼く準備は完了だ。
鍋に生地を乗せ、じっくりと焼くこと数分。
焦げた小麦とチーズのたまらない香りが漏れ出してくる。
「完成!特製ピッツァ!」
鍋の中には完璧な焼き色のピザが鎮座していた。
縁はカリッと膨らみ、チーズの白とトマトソースの赤、バジルの緑が鮮やかだ。
「うひょー!うまそー!」
「信じられない光景だな……こんな砂漠の真ん中で焼きたてのピザだなんて……」
シャロがナイフで六等分に切り分けると、アグニが待ちきれずに一切れ掴み取った。
「あっつ!はふっ、んぐっ!」
アグニが口いっぱいに頬張る。
「んん~っ!酸っぱくて、コクがあって、生地がパリパリでモチモチだ!」
トマトの凝縮された旨味と酸味、カッテージチーズのミルキーな風味、そして香ばしい生地。
それらが一体となって口の中で弾ける。
ヨシュアも恐る恐る一切れ手に取った。
まだ信じられないといった様子だが、一口かじった瞬間、その目が大きく見開かれた。
「……っ!?」
美味しい。
魔物の死体からできた素材とは到底思えない。
いや、むしろ普通の食材よりも味が濃く、生命力に満ち溢れている。
噛みしめるたびに、枯渇していた身体の奥底に、温かい熱が染み渡っていくのを感じた。
「なんだこれ……美味すぎるだろ……」
ヨシュアは夢中で二口目をかじった。
涙が出そうだった。
一人でダンジョンを彷徨っていた恐怖、孤独、飢え。
それら全てが、この一切れのピザによって癒やされていく。
こうして、三人は競うようにして数枚のピザを平らげた。
食後、ヨシュアは自分の手を見つめ、驚きの声を上げた。
「……力が、みなぎってくる」
ボロボロだった魔力回路に、微かだが確かな魔力の流れが戻り始めていた。
傷ついた回路が修復されているかどうかはわからないが、生命エネルギーが充填された感覚だ。
「だから言っただろ?シャロの飯はすげぇんだって!」
アグニが得意げに笑う。
「……認めるしかないな。これはただの食事じゃない」
ヨシュアは真剣な表情で分析した。
「シャロの精神か、あるいは知識が、コルンムーメの能力に干渉して、食材に何等かの影響を与えているのかもしれない。これなら確かに、元の力を取り戻すのも夢じゃないな」
ヨシュアの瞳に、再び強い光が宿っていた。
諦めかけていた希望が、確信へと変わる。
「ヨシュア、またよろしくね」
シャロが手を差し出した。
ヨシュアは一瞬ためらった後、その手をしっかりと握り返した。
「ああ。俺もお前がいると心強い……助けてくれて、ありがとう」
「アタシもよろしくナ!」
アグニも横から手を重ねてくる。
ヨシュアはアグニの手を見て、ふと眉をひそめた。
「なぁシャロ。こいつ本当に使えるのか?脳みそまで筋肉でできてるように見えるが」
「大丈夫だよヨシュア。アグニは戦闘に関しては天才的だし、何よりすごく頼もしいから!」
シャロが太鼓判を押すと、ヨシュアは仕方なさそうに肩をすくめ、しかし口元には小さな笑みを浮かべた。
「わかったよ。お前がそう言うなら信じてやる……よろしく頼む、アグニ」
かつての仲間と、新たな相棒。
奇妙な三人旅が、ここから始まった。
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