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26_お見舞いなんてしていいのかな

フレスベルは、クォーツからまた、昨日、手紙をもらっていた。

明日の放課後、一緒に、馬車に乗ってリドットにドレスのお礼をしようというものだった。



(緊張するなあ)

ノルベルトからの告白を通して、クォーツへの想いに気づいてしまったのだ。


馬車をまっていても、クォーツはこなかった。

すると、馬車がやってきた。

「フレスベル様」

御者が声をかける。

「クォーツ様は、体調を崩されてしまいまして、本日はお休みされております」

「そうなんですね」

心配とちょっとの残念な気持ちと、安心な気持ちだった。

「リドット様は、予定を空けておいでなので、そのままお越しくださいとのことです。」

「そうなんですね。承知しました。」



「フレスベルちゃあん!舞踏会、どうだった!?」

リドットがもういまにも抱擁せんとするような勢いで近づいてきた。

「あ…」

クォーツとの夢のような時間、ノルベルトと出会ったこと、自分の弱さを受け入れてもらったこと。

どれも、意味は違うがかけがえのない思い出だった。

「とても、素敵な時間でした。」

フレスベルはほほえむ。

「よかったあ!」

リドットは抱きしめる。

フレスベルは、やっぱり気持ちがおいつかなかったが、嬉しかった。



「これ、ありがとうございました。」

しわくちゃにならないように、必死に整えたドレスを返す。

「ありがとう」

リドットは笑顔で受け取る。

「あら?」

顔が固まる。

(まさか…)

フレスベルはかなり気を付けたのだ。

「魔法のドレスになって返ってきたわね」

リドットは驚きを隠せない顔だった。

フレスベルはためらったあと、白状することにした。

「隠していてすいませんでした。付与魔法が使えること…」

口に出してみると、リドットになら、明かしてもいいとは思えていたことに気づいた。

「いいえ、こんなに優秀な付与魔法が使えるなら、隠している方が賢明だわ。

利用しようとする人の方が多いもの。

そういうかしこさも素敵だと思う。」

リドットはウインクする。

フレスベルはうれしくて、笑顔が抑えられなかった。



「では、帰りますね。ありがとうございました。」

フレスベルは、礼をする。

リドットは引き留める。

「ま、待って!」

「クォーツがね?」

フレスベルはクォーツという言葉にドキリとする。

「は、はい」

「もうだいぶ良くなっているの。話し相手が欲しいんじゃないかしら。」

(わたしはいいけど、わたしから何かうつらないかしら。)

風邪はどんな病気にもなる。

「大丈夫!フレスベルちゃんからの風邪ならクォーツも喜ぶわ!」

「…フフ。それフォローになってないです。」

フレスベルはついつい笑ってしまった。

ためらったが、部屋に案内してもらうことになった。



「やあ。」

頬がほてり、弱った様子のクォーツがベットの上から挨拶する。

「うん。体調はどう?」

「とてもいいよ。今日はごめんね」

「ううん。お姉様に会えたし、嬉しいわ。

それにね。わたし、実は風邪をひいたことがないの。

こんなに痩せぎすなのに。」

クォーツは、心当たりがあった。

「その、精霊のネックレスが君の体を守っているのかも。」

「わあ…。そうだったら、もっと嬉しいな。」



クォーツの部屋は、本棚がたくさんあった。

「これ、全部読んだ?」

フレスベルは質問してみる。

「いや、一気に買って、必要なときに読んでいるんだ。だから、全部は読んでない。」

「一気に…」

「うん。」



フレスベルは、気にしないようにしていたが、いつも、凛々しいクォーツの弱った姿というものはそれはそれはこころを動かすものがあった。

いつもはひとまとめにしている髪もおろしている。

(かわいい…)

フレスベルは思わず

「…えっ?」

クォーツの前髪を撫でていた。

「あっ…ご、ごめん。つい。」

ついなんだというのだ。と自分に問いかけながら。

「ふふ、ありがとう。とてもいい気分。」

フレスベルは、猫も、犬もなでたことはなかったが、優しくなでた。



クォーツが寝息を立てている。

フレスベルは、なでながら、言いたかったことを、小声で漏らし始めた。


「クォーツ、わたし、ノルベルト王太子殿下に、幸せな未来を築こうって言われたわ。」


「殿下は誠実な人だわ。きっと幸せな未来のために尽くしてくれたと思う。」


「でも、断った。」


「わたし、きっと、みんなが思うほど、しあわせという言葉の意味を知らないのよ」


「だからね、あの絵本を自分で買って、大事にできるような、そんな未来があれば十分なの。」


「…どうしたらそうなるのかな。」


「でも…その未来にあなたがいたらいいな。」



クォーツは目が覚めると、部屋が真っ暗だった。

(フレスベルは帰ったのか。)

体調はほぼ快調になっているのを感じた。

「はっきりと思い出せないけど…」

まどろみの中でフレスベルが言っていたこと。

「夢だったのかな。」

「…本当だったらいいな」


クォーツは、もう一度同じ夢が見れないかと、もう一度シーツをかぶった。

ありがとうございました。

前話に挿絵をつけました(2022/12/7)

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