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24_ガラスの靴はいらない(2)

「俺の妃になって欲しい。」


フレスベルは心臓の音がうるさくて、何も聞こえなくなった。

生徒会室は夕暮れが近づいていて日光は肌を包んでいた。

「俺とあなたは会ったばかりだ。

けれど、断言できる。

あなたは運命の人だ。」

フレスベルは

「運命の…人?」

復唱することしかできなかった。


「ああ。」

「あなたは、とても優秀だ。精霊信仰のこの国で俺とまつりごとをするのにふさわしい。

民が認める妃になるだろう。」

フレスベルは、鼓動が落ち着いてきた。

「それは…わたしでなくてもいいではないのでしょうか。」

フレスベルは目をそらす。


「幻滅させたのならすまなかった。」

ノルベルトは切なげな顔をした。

「ここからは、公共の場所で職権濫用したまま言いたくなかったのだが。」

「これは、王太子ノルベルト・フォリンドではなく、今ここにいるおれの話だ。」



「…一目ぼれだったんだ。」

ノルベルトはまっすぐに見つめる。


フレスベルは、また胸が激しくうるさくなる。


「あなたはおれをにおびえているのはわかっている。

それでも…あなたのあたたかい手を握ってダンスできたのが、嬉しかった。」

ノルベルトの手を握る力が強くなる。


「おれは、敢えて、親も通さずあなたに直接話をした。」

「はい…」

親を通したらフレスベルには何の選択肢もないだろう。

フレスベルは、怒涛の告白でこころがついていけていなかった。


「これはおれたちの個人的な問題だ。」


「あなたとの未来が欲しい。絶対に幸せにする。」

ノルベルトはフレスベルの手にキスをした。


「…」

フレスベルは何も言わなかった。


「フレスベル嬢!?」

ノルベルトがあせって抱き起した。


「気を失われた…?」

フレスベルは、刺激がありすぎて気を失ってしまったようだった。


ノルベルトは、フレスベルの魔力の波動から、体が弱っていないことはわかっていた。

「医務室に送っていこう」

フレスベルを抱きかかえて歩いていった。


「好いた女性にあせって言い寄って気を失わせるなんて…」

申し訳ないと思わなければいけないのに、フレスベルの純真さをおもしろく思ってしまう自分を反省しながら。



医務室に行く道で道を譲る生徒たちが、自分に礼するのと共に好奇の目で見てくる。

(女性を抱きかかえていてもいなくても、いつもこうだ。この学園はどうも世間が狭いな。)


ノルベルトは、魔法の素養があり、なおかつ王家の長男として、生まれたため、つねに自分が一番偉かった。

そのため、あまり周りが感じさせてこなかったので、上下関係を気にしない性格だった。

徹底した王としての教育により、自分のしあわせというものは、愛する妻とその子供たちを守るために、国を治めることだと信じて疑わなかった。

この腕の中にいる少女がふさわしいということも信じて疑わなかった。



「目が覚めたか。よかった。」

フレスベルの視界に飛び込んできたのは、ノルベルトのほっとした顔だった。

「すいません…」

「こちらこそ、刺激の強い話だった。」

「い、いえ…」

刺激は確かに強かった。

(わたし、国の王子様に、プロポーズされた)

(しかも、好きだって…)

ふとんで顔を覆いたかった。

「寄宿舎まで送っていこう。歩けそうか?」

「は、はい。」

(あれ、普通だ。)

(気を使ってくれたのかな。)



フレスベルはノルベルトと並んで歩いた。

小さなフレスベルは、いつも歩調を気にするが、ノルベルトは何も言わずに合わせてくれた。

(この方はわたしのことが好きなのか…)

フレスベルは恥ずかしくなった。

(しかも、お茶を濁すみたいにしちゃった。)


(未来、幸せ…)

考えたことのない言葉だった。


手持ちの架空の物語に男女の好きとかそういう話がなかった。

(ただ、王子様に好きになってもらって、ハッピーエンドっていうのがあるのは知ってる。)


(この方と一緒にいたら、絵本の女の子みたいに国の妃としてあこがれられたりするのかな。)

(わたしをいじめてきた家族を見返せるかも。)

(この方なら、どんな時も、わたしの手をあたたかいってほめてくれるかもしれない)

(子供もいたりして。)


(うん)


「殿下。」

「どうした?」

「今日は大変ご迷惑をおかけしまして、申し訳ありませんでした。」

「おれが急いたせいでもある。気にしないでほしい。」

「明日、また、生徒会室にお伺いしてもよろしいでしょうか。」

「もちろん。待っている。」

「今日のこと、しっかり考えて、お話ししたいんです。」

フレスベルの声ははっきりとしている。

「わかった。」



暗くてノルベルトの顔は見えなかった。

ありがとうございます。

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