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23_ガラスの靴はいらない(1)

フレスベルはまたまた困惑していた。

授業がすべて終わってすぐ、今まで遠巻きに自分を噂していたクラスメイトたちに取り囲まれているのだ。

「フレスベルさん、この間のパーティーの姿、とっても素敵だったわ」

「あ、ありがとう」

なんとなく、これが本題ではないのだろうと思うフレスベルだった。



「貴賓席の君たちをダンスホールに誘い出すなんてすごいわ!」

「貴賓席の君?」

(ああ、クォーツと殿下のことかな)

「二人とも、とても麗しいのに、貴賓席でお話ししてばかりの方だったと聞いているわ。

一般の生徒はあこがれることしかできないの」

(それで貴賓席の君か)

「クォーツ様はあなたのエスコートだし、ノルベルト殿下はあなたとだけ踊ったわ。」

フレスベルは正直、そのおかげでここまで好奇の目にさらされるのだとしか思えなかった。

しかし、なにかしらほこらしげに思うべきなのだろうか。



(どうして私一人だけの時に…)

いつもフォローをしてくれるファラはちょうど席を外していた。

また廊下からざわざわとした声が聞こえてくる。

フレスベルは覚えのある雰囲気だと思って、思わず身構えた。

「フレスベル嬢はいるか」

さらに教室がざわつく。

「はいっ、今すぐに。」

教室の戸の近くにいた生徒が返事をする。



ノルベルト王太子殿下だ。

「いい、俺もここではあくまで生徒だ。そんなにかしこまらないでほしい。」

「はい…」

生徒はためらいつつ返事をした。

「フレスベルさん、王太子殿下がお呼びだよ」

フレスベルを囲む生徒をぬって、声をかけてくれた。

(助かったと思いたいけど)

(全然助かってない!)

フレスベルは生徒たちに会釈して教室を出て行った。



「フレスベル嬢、呼びだして悪かったな。」

「いえ…」

(そう思うならもっと穏便に来てほしいな。)

(貴賓席の君なんだから。)

フレスベルはあこがれを表す言葉をいじわるな意味で使った。

ノルベルトに声をかけられるのは二度目だが、どれも目立ってばかりだ。

「ここではなんだから、生徒会室に来てくれないか?」

「は…はい」

悪い人ではないことはわかっているが、どうも人見知りして警戒してしまう。



フレスベルは少し嬉しかった。

生徒会室が普通の教室よりきれいで、こんな場所があったのかと思ったのだ。

「ここにかけてくれ。」

「はい」

男性と二人きりになるのは今日が二回目だ。

「本来ならクォーツも呼ぶべきなのだが、あなたと二人で話したいと思ってな。」

「はあ…」

(じゃない!)

「まあ、光栄ですわ。」

リドットと勉強した会話の返し方を思い出していう。

(殿下の気分をそこねたら、国外追放される線をわたしはまだ、疑ってるわ…)



「フレスベル嬢、あの日、君に拭いてもらった服なんだがな、どこも汚れなくなったんだ。」

「ま、まあ~そうなんですの。王室の仕立てはすごいですわ。」

フレスベルは汗をかいていないか不安になってきた。

(付与魔法はかなり稀有な能力と聞いただから、この方が知ったら広まってしまうかも。)

自分の能力に関して、クォーツ以外をまだ信頼できないフレスベルだった。

(わたしはそんなことは望んでいないわ。)



「それだけだと思うか?」

ノルベルトはフレスベルを見つめる。

「なんのことだか…」

「俺はこの国の王になるのが決まっている。

それは長男だからだけではない」

「魔力に敏感なんだ。」

ノルベルトの顔はさらに近くなる。

「あなたのこの手のなつかしさをずっと思い出そうとしていたんだ。」

「きゃ…」

ノルベルトはフレスベルの手を握る。

「あなたは付与魔法の使い手だろう。

しかもかなり高度な。」

ノルベルトはフレスベルを見つめた。



フレスベルは、ノルベルトがきれいな顔をしていることに今更気づいた。

中性的なクォーツとはまた違う、野性的な魅力があった。

髪の毛はパーティーの時と違って長い髪をすべて下ろしている。黒く染め上げた絹のような髪だ。

(なんで今そんなこと考えるの、わたしは。)

フレスベルは恥ずかしくなって目をそらした。



「フレスベル嬢、こっちを向いてほしい。」

「は、はい…」

フレスベル嬢はおずおずと目線を戻す。


「君と踊ってから、考えていたんだ。」

「俺の…」



「妃になってほしい。」

ありがとうございます。ガラスの靴はいらない編です。

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