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21_ダンスパーティーなんて無理(11)

さかのぼること数分前。

「クォーツ、彼女はどこで見つけたんだ?」

ノルベルトは嬉しそうにクォーツに聞く。

「今まではおれと貴賓席からダンスを眺めるのが当たり前だったじゃないか。」

クォーツはコホンという。

「彼女はフレスベル・フォーリッツさん。新入生です。」

「その名前は学園にとどろいているな。もちろん、俺の耳にも。

生徒会にも声をかけようかと思っていた。」

この学校では生徒会に入ることは、優秀な人材であることの証明だった。現生徒会長はノルベルトだ。

クォーツはぴくっと表情が動いた。

「彼女は、ぼくの研究室に声をかけようかと思っています。彼女は、生徒会でなくても優秀な人材として証明されています。」

クォーツは口が滑った。と思ってしまった。

もう遅い。



ノルベルトは不満そうに言う。

「まるで、生徒会が、形だけの組織みたいじゃないか。

…否定はしないが。」

表立ってはエリート組織だが、生徒に必要以上の職務を与えるのは、問題であるということで、

学校運営と生徒の間の立場を与えられているだけでもある。

風通しをよくするための組織なのであるが、エリート集団ということで、入るためのハードルは高い。

「彼女にふさわしいのが生徒会なのか、研究室なのか、俺が確かめよう。彼女を紹介してくれ。」

「な」

クォーツはフレスベルの人見知りの心配と、

それでもフレスベルの今後にいい影響があるだろうという期待と

(…男の知り合いを増やしたくない)

という本音のせめぎあいをしていた。

ノルベルトはじれったそうにして、

「俺が声をかけに行こう」

といって貴賓席を立った。

クォーツは追いかけていくことしかできなかった。



そして今に至る。

「1曲ダンス願おう」

ノルベルト王太子殿下はにっとわらって言った。

(失敗したら…)

(学園どころか、国外追放かもしれない)

フレスベルの想像力は豊かだった。

(この状態で断るなんて無理だ)

「喜んで、お受けいたします。」

声は震えていた。



王子と手を取り合い、肩の位置、腰の位置、膝の位置を確認する。

(落ち着いて、お姉様の言葉を思い出そう。)

(ダンスをするのは)

(相手を知るため。)

(自分を知ってもらうため。)

「よろしくたのむ」

「はい」



(とってもじょうずだわ。)

(殿下はお手本通りにおどりなさる)

あまりにもお手本通りなのでこちらが合わせるだけだった。

「あなたの手はとてもあたたかいな。覚えがある。」

ノルベルトが言う。

「覚え、ですか?」

「ああ。なつかしいかんじがする。」

ノルベルトはほほえむ。

(クォーツとはまた違う笑顔だ)

(なんて、ほかの人と比べたら失礼よね。)



「フレスベル嬢は、学園始まって以来の魔法の才能の持ち主と聞いているが。」

「は、はい。そこまでかはわからないですが。」

謙遜がフレスベルはとても下手だった。

「将来の進路について考えたことは?」

なかった。

唯一、高価な絵本を一冊ほしいとしか思っていなかった。

「が、学校を卒業したら…」

(なにがしたいのだろう。)

「そこまでの才能があって、あれをしたい、それになりたいという願望がないのもすごいことだ。」

ノルベルトはくすりと笑う。

曲が終わった。



「すばらしい一曲になった。ありがとう。」

ノルベルトはフレスベルに軽く頭を下げる。

「い、いえ。そんな。あっという間でした。」

すこし汗ばむほどに集中していた。

「一杯飲み物をいただこうかな。フレスベル嬢、付き合ってくれるか?」

「は、はい。ぜひ。」



フレスベルはあせっていた。

ノルベルトに気づかずにはしゃいでいた生徒がノルベルトの白い衣服を汚してしまったのだ。

(た、大変)

「おお、豪勢な柄がついたものだ。」

と、ノルベルトは気にしないそぶりをしている。

(す、すこしでもきれいにしよう。もしかしたらまた着れるようになるかも。)

と考えた。

「で、殿下。失礼いたします。」

(きれいになりますように)

ハンカチでポンポンと服をたたく。

(あら…?)


真っ白に戻ったのだ。

「…」

(どうしよう)

ハンカチに付与魔法が発動していたようだ。

最近、まったく意識していなかったから無意識だった。

「フレスベル嬢…、これはいったい。」

ノルベルトは、お礼する前に驚いている。

(こんな人がたくさんいるところで、説明できない)

学園きっての才媛に幻の付与魔術の使い手という肩書はフレスベルにはいらなかった。

「あ、あの、元の汚れが薄かったみたいで…」

「そのハンカチを見せてくれないか?」

「えっ」

半分悲鳴のような声が出た。

「殿下、そろそろ僕の後輩を返していただけますか?」

安心する声がする。クォーツだ。

「話はまた今度、ぼくからもします。」

「しょうがない。目的は達成したしな。」

クォーツは軽く頭を下げた。

「フレスベル嬢、いい時間だった。感謝する。」

フレスベルもぺこり、と頭を下げる。

ノルベルトは貴賓席に戻っていった。



ノルベルトが去り、人もはけた。

クォーツが小声で言う。

「人がたくさんいて、あたたまってきたと思わない?」

「ええ」

ノルベルトとのやりとりで熱はたまるばかりだった。

「外のバルコニーで少し涼もうよ。」

「ぜひ。」

二人は、ガラス扉へと歩いて行った。

ありがとうございます。

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