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20_ダンスパーティーなんて無理(10)

フレスベルはわくわくしている。

(わあ、いつもと違う場所に来たみたい)

創立祭パーティーが行われる会場は来たことはなかったが、

学園を抜けてくるときは見覚えのある景色と思えなかった。

「フレスベル、大丈夫かい?」

「ええ、よろしくお願いします。」

フレスベルはクォーツの腕を取り、会場の扉を抜ける。



「わあ…」

あの絵本の世界だ。

食事や、オーケストラ、ペアになっている男女、貴賓席と思われる席。

「フレスベル!」

「ファラ!」

ファラがフレスベルを見つけて声をかけてくれた。

フレスベルはつい声がはきはきとでた。

「とってもきれいだわ。」

「ファラもだよ。」


「ファラさん、ごきげんうるわしゅう。

クォーツ・ラピスティーヌと言います。

一度お会いしましたよね。」

クォーツは、頭を下げる。

「フレスベルの相部屋のファラ・バーネングと言います。

あの時は、お世話になりましたわ。」

あの時とは、テスト結果の発表でフレスベルが、動けなくなってしまったときのことだ。

「クォーツ様とお話しできるのを楽しみにしておりましたわ。」

ファラはにこにこと笑う。

「ぼくも、ファラさんがどんな方か、フレスベルから聞いていましたので、気になっていました。」

「あら、わたしもですわ。」

「も、もう…、恥ずかしいから私の前ではやめてください」

フレスベルは真っ赤だ。

どんなに大事に思っていても、むしろ大事にしているからこそ、恥ずかしい。

(普段言えない、二人がどれだけすばらしい人かってことも言っているもの)



「はは、ごめんよ、フレスベル。」

「そろそろ、始まるわ。」


曲が流れ始める。

(うまくできるかな)

「フレスベル、ここは、失敗が許される場所だ。

ぼくもフォローする。

ぼくを見ていれば大丈夫。」

「うん」


練習ではリドットのカウントだけだった。

本番のオーケストラの音楽が心地いい。

クォーツの横顔に見とれてしまう。

(世界の中心がクォーツで、ほかは全部背景みたい)



「曲が変わるよ」

「うん」

「じょうずだ。」

(オーケストラだと、こういう曲なんだ…)

ゆっくりめで、切ない曲調だ。

クォーツの動きも指先まで意識の通ったような動きだ。



「お姫様になれたみたい。」

余裕が出てきたので、つい、口が動いた。

「わたしね、ずっと、こういう日を夢見てた。」

「そうか。一緒にかなえられて光栄だ。」

クォーツはほほえんでいる

「今日はネックレスは見えていて大丈夫なのかい?」

「うん、夢の景色だから、いっぱい見せてあげるの。」

フレスベルのほほえみは、この上ないくらいだった。



「クォーツ様、優秀な新入生の教育に熱心らしいわ」

「そうなの?とってもお似合いだから、そういうことかと思っていたわ。」

「フレスベルさん、入学当初は、下町の子供って言われても違和感なかったって噂だよ。」

「想像もつかないなあ。ぼくも踊ってもらえないかな」

フレスベルは、もうなにをしても、注目の的だった。

それを、貴賓席から見ている青年がいた。



「フレスベル、おつかれさま。」

「ありがとう…」

疲れたが、かなり上々のダンスができた。

「全部、クォーツとお姉様と、、ファラのおかげ。」

(あと、サラマンダーのおかげ)

「そうか。」

クォーツは優しく言う。

「飲み物や、食事をとってくるといい。」

「うん。」

(お姉様に、コルセットもいらないって言われたのよね。)

(きっと、わたしが瘦せぎすだからね。)

とくに気にしていなかった。

(いっぱい食べちゃおうかな)

むしろニヤリとした。

クォーツは、そんなフレスベルの様子を見守るのも慣れたものだ。

「ぼくは、家の関係のあいさつをしてくるから。」

「わたしは行かなくていいの?」

「まあ、はっきりと答えると、来てほしいんだけど、

そんなことに疲れさせたら僕がつまらないから。」

(そんなこと…)

よくわからないが、おそらく国規模のえらい人たちが来ているはずだ。

(いいえ、クォーツがこういっているのだから、今日は甘えてしまいましょう!)

「わかった。いってらっしゃい。」




フレスベルは、気配を消していた。

シャンパンを片手に食事をとっていた。

(おいしい…)

(マナーはならったけど、立って食べるのはどうして失礼に当たらないのかしら。)

今度、リドットに聞こう。

などと思っていた。

すると、なにか騒がしい雰囲気になった。

(なんだろう…)

「で、殿下…!」

(クォーツの声?)

人をかき分け、紫がかった黒髪で、長髪を後ろで結い上げている茶色の瞳の青年が目の前に現れた。

(お、大きい…)

フレスベルは元から小さめであったが、青年は身長が高めのクォーツより高い。

「クォーツが紹介したがらないわけだ」

「え」

フレスベルは停止している。

「フレスベル嬢、名乗りが遅れた。

俺は、ノルベルト・フォリンド」

青年はマナー通りに挨拶する。

(フォリンド…?殿下…?)

フォリンドは国の名前だ。それを名乗っているということは…

フレスベルは、なにも理解していないがすべてを理解した。

「お、王太子殿下、ご紹介いただきありがたく存じます。

フレスベル・フォーリッツと申します。」

決まった頭の下げ方をする。

(どういうこと?王太子が私に…なんのよう?)

フレスベルの想像力の範疇にないできごとである。

「頭をあげてくれ。フレスベル嬢」

「は、はい。」

フレスベルは頭をあげる。



「1曲、ダンス願おう。」

ノルベルトはにっと笑う。


クォーツはうしろで頭を抱えている。

ありがとうございます。


挿絵(By みてみん)

ノルベルト・フォリンド

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