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19_ダンスパーティーなんて無理(9)

フレスベルは、心の中ではしゃいでいた。

(ダンスの練習着なのに、かわいい…)

リドットからダンスの練習着と靴を借りたのだ。

「サイズは良さそうね。稽古場に行きましょう」

稽古場には学校の制服のままのクォーツがいた。

「フレスベル、よろしくお願いします。」

「うん」

「先にわたしがクォーツと踊って見せるわね」


「ワン、トゥー、スリー」

リドットがテンポを口でとりながら、クォーツとおどる。

(きれい…)

と思うと同時に

(覚えられるかしら…)

と思ってしまった。

「どうだった?」

リドットはフレスベルに聞く。

「きれいでした。でも…」

「大丈夫。ぼくがフォローする。」

フレスベルが言う前にクォーツが言った。

「ありがとう…」



「じゃあ、ここに手を当てて。」

「クォーツの手を取って。」

「は、はい。」

(クォーツの肩って私よりずっと広いのね…)

(手も、骨ばってる。)

耳が熱くなっているのがばれていないといいなあ、と思うばかりだった。

「目線はもっと上げてちょうだい」

(眉間をみる、眉間を見る…)

「…ふふっ、緊張するなあ。」

クォーツが、言う。

(クォーツも、そう思ってるんだ。)

逆に気が落ち着いた。

クォーツも、気づかれていないといいなあ、と思っていた。

フレスベルの手が小さいこと、肩がとても華奢なことを意識していることに。

リドットはそんな様子を見てニヤニヤがもれないように必死だった。

「じゃあ、始めますかね。」

気を取り直して、レッスンが始まった。



「…はあっ!」

フレスベルは、疲れすぎて何も言えなかった。

リドットの指導は、とても分かりやすかったが、一通りの曲をマスターするためには、詰め込む必要があった。

「今日は、これくらいにしましょう。」

「フレスベルちゃん、運動は苦手なのね。」

「は、はい…」

苦手以前に、遊び相手もいない中で、まともに運動などしたことがなかったというのが正直なところなのだが。

(指摘されると恥ずかしい)



「フレスベル、おつかれさま。これ飲んで。使って。」

クォーツがコップ一杯の水とてぬぐいを差し出してくれた。

「ありがとう…」

汗をぬぐいながらゴクリ、と音を立てて水を飲む。

「っ!」

(おいしい…)

この一杯のために生きてるとはこういうことだろうか、などと思いながら、ちびちびと飲む。

「今日はありがとう。

この調子で、リドット・ラピスティーヌ様の講義を受ければ、きっと大丈夫。」

クォーツは、意気揚々という。

「ええ、運動が苦手なのはわかったけど、そもそもフレスベルちゃんはのみ込みが早いもの」

リドットはウインクする。

「そうだね、フレスベルの要領の良さは天賦のものだ。分けてほしいくらいだ。」

フレスベルは、ほめられてこなかったので、もじもじとするばかりだった。

(国を代表するような方々にこんなにほめてもらえるだなんて…)

フレスベルは夢のようだった。



そして、フレスベルは、学校とレッスンを繰り返し、なんとか、一通りをマスターすることができた。

当日を迎え、ドレスアップのために、ラピスティーヌ家を訪れた。

今日は、学校は休日である。集合時間におのおの集まる形だ。

「ああ、今日をどれだけ待ち望んでいたか…」

リドットの瞳は輝いている。

「フレスベルちゃんの髪の毛は白の強い金だから、この色のドレスが合うと思うの。」

「わあ…」

水色のドレスだ。えりぐりは、両方の肩が出るほど大きく開いている。スカート部分はウエストから裾にかけて徐々に広がっている。

(あの絵本のお姫様みたい)

「どう?」

「はい、お願いします。」



「あの…クォーツは?」

リドットはウインクする。

「せっかくなら、驚かせたいじゃない。クォーツはクォーツで、ドレスアップ中だから。」

(クォーツも、そうか、おしゃれするのね)

(釣り合う見た目になりますように。)

「髪の毛なんだけど、前髪を編み込みしてパーティー風にしましょう。」

「は、はい」

(ファラに前髪を短く切ってもらってるからなのもあるんだけど、眉毛がすごく太いのが気になるわ…

あとで気に入らなかったって思ったら失礼かもしれない。

こういうのは、きっというべきだわ。)

「ま、眉毛は変に見えないでしょうか。」

「ふふ、とてもきれいに整えてあるから大丈夫。」

(ファラが整えてくれたのよね)

自分の友達が尊敬する人に間接的にほめられてうれしかった。

「じゃあ、魔法をかけましょうね。」

「普段はフレスベルちゃんは魔法をかける方だけれど」



フレスベルは、ラピスティーヌ家の使用人にメイクを施され、ドレスを着せてもらった。

(わたしの顔の形や、まぶた、唇の形にあわせてメイクしてもらったわ。)

(自分をきちんと見てあげるってこういうことかしら。)

「フレスベルちゃん、さあ、この靴を履いてちょうだい」

「はい…」

(ぴったり。)

「痛くない?ちょっと歩いてみて。」

「はい」

周りを軽く歩く。違和感もない。

「大丈夫そうです。」



「全身鏡を持ってきてちょうだい。」

リドットは使用人に指示する。

全身鏡にフレスベルの姿が映る。

「わあ…」

思わず声が出た。

「きれいだわあ!いつもはかわいいんだけど、きょうはきれい!」

リドットはとてもうれしそうだ。

フレスベルは、鏡から目が離せない。

(誰かと思った。)

学校に入る前、たった数か月前までは、ぼろばかり着ていたのだ。

「じゃあ、そろそろ時間だわ。

外に馬車を用意してあるから、いきましょう。

クォーツもいると思うわ。」



馬車の前にはクォーツが待っていた。

「…」

クォーツは、フレスベルを見るなり、無言で静止していた。

「クォーツ、準備を終わらせた優秀な後輩に何も言わない気?」

「うるさいな…、照れるのくらい許してくれよ。」

(クォーツ、子供っぽくてかわいい)

フレスベルはクスクスと笑う。

「フレスベル、とても、似合ってる。」

クォーツは真剣な瞳で言う。

いつも赤茶色の長い髪を結っているクォーツは、

今日は、前髪を片側に長し、髪も後ろ髪はひとまとめにしている。

「ありがとう、

クォーツも似合ってるよ。」

お世辞抜きでそう思うフレスベルだった。


馬車に先にのったクォーツに手を取られて乗る。

リドットが外から声をかける。

「フレスベルちゃん」

「あなたはもう立派な淑女です。

弱気なあなたは今日だけは、おいていきましょ?」

また、リドットはウインクする。

「はい。ありがとうございます。楽しんできます。」

「姉さん、この度はありがとう。」



二人のパーティーが始まる。

ありがとうございます。

やっとダンスパーティです。

お待たせしました。

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