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18_ダンスパーティーなんて無理(8)

ありがとうございます。

「クォーツ、今日はフレスベルちゃんを送る馬車に一緒に乗りなさい」

リドットがクォーツに指示したのは、フレスベルの様子が落ち着いてからだった。

「わたしは、やることがあるから。」

リドットは、神妙な面持ちだった。

「わかったよ、姉さん」

クォーツの声も緊張感があった。

(もう、嬉しかったのに、喜んで笑うところなのに)

フレスベルは切なかった。

(あの屋敷で優しくされると、優しくしてくれた本人は、

荷物をまとめることになるから、悲しかった。)



「フレスベル、帰ろう。」

「うん…ありがとう。ごちそうさまでした。

シェフの方にとってもおいしかったと伝えてほしい…です。」

「もちろん、きっと喜ぶ。」

クォーツは、ほほえんだ。



馬車がフレスベルとクォーツを寄宿舎へと運んでいく。

(な、何か話したほうがいいのかな)

フレスベルはそわそわとしている。

横目でクォーツをみる。

(わあ…)

今日も月明かりが強く、刺し込む光が、クォーツを照らしている。



クォーツは外を眺めている。

「きれいだなあ…」

フレスベルは、口に出していたことに気づいてから、思わず手で口を覆う。

「ん?ああ、明かりのこと?」

クォーツには、はっきりと伝わらなかったようだ。

「う、うん。

月がきれいだね。」

フレスベルは、自分のなにか話したい気持ちと、

今お互いの認識をつないでいるのが月明かりだけだったからそういった。

「そうだね。きっと、いつか、だれかが理屈にするのかもね。

月が満ちたり欠けたりするのも。

なんていうのは、無粋か。」

ふっとクォーツは笑って見せる。

(クォーツは、きれいな月を見るとそう思うのね。)

月は雲がかかって、明かりが弱くなったり、雲が流れて

、明かりが強くなったりした。




「フレスベル!おかえりなさい。」

「うん、ただいま」

部屋に帰ると、同室のファラは今日の話を聞きたそうだった。

プリンの話以外はした。

「まあ~」

ファラは自分の話をいつも楽しそうに聞いてくれる。

(お話が上手になった気分。)



「ファラは、創立祭パーティーはどうするの?」

「ああ、わたし?実家のお世話になっている方に、エスコートしていただくわ。

そんなに、ロマンスの香りがするのは、なかなかいないわよ、フレスベル。」

ファラは、ニヤニヤとしている。

「なっ、ク、クォーツは、私が今後どんな場にも行けるようにって…」

「ふふ、そうね。そういうことにしておくわ。」

ファラはほんとうに楽しそうだ。



「のろけなら、いつでも聞きますから。」

「のろけ…?」

ほんとうに知らない言葉だったらしく、ファラは申し訳なくなった。

「クォーツ様にあなたがどれだけ大事にされたか、自慢してねってこと」

ファラは、ウインクする。

「…考えておきます。」

フレスベルは赤くなるばかりだった。



フレスベルは目が回る思いだった。

「好きな靴と練習着選んでちょうだい」

クローゼットが広がる。

リドットが、衣装を貸してくれるというのだ。

「クローゼットは広いけど、練習着はこっちね。」

「はい…」



フレスベルは靴のサイズを探す。

「本番のドレスはもう決まってる?」

(ド、ドレスなんて着たことない…)

今まで浮かれていたが、それが一番の問題だったのだ。

「よかったら、この中のどれかを着てあげてくれない?

私がもっと小さかった時のものが、とってあるの。

もちろん、靴もセットであるわ。」

リドットはにこにこと笑っている。

「いいのでしょうか。」

リドットは、目をぱちくりとさせる。

「もちろん、あなたは、将来有望な国の宝だもの。

いつか、一緒に働くかもしれないわ。

あなたを育てると、私に返ってくるのよ。」

「リドット様…」

フレスベルは嬉しくて感極まる。

「やあねえ、同じ、「様」なら」

リドット様はウインクする。

「お姉様って呼んでくださる?」

「はい、お姉様…!」

(何でお姉様なのかしら)

とは思うフレスベルだった。



(姉さん…それはやり過ぎだよ…)

(嬉しいけど)

と、クローゼットの外に漏れ聞こえてくる会話に、心の中で指摘するクォーツだった。



今日は、実際に踊る練習をクォーツと始める日だ。

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