12_ダンスパーティーなんて無理(2)
フレスベルは、目をぱちくりとさせている。
(手紙…?)
教室の、自分の机に封筒が入っていたのだ。
(なにかしら…)
女生徒が手紙を交換しているのは、見たことがないわけではない。
(手紙なんてもらうの、はじめてかもしれない)
こころが少しおどる。
(あら)
見覚えのある字で差出人の名前が書いてある。
「クォーツから…?」
(なぜ、こんな手の込んだことを)
と思ったフレスベルだったが、
(でも、そういえば、あれ以来話していないわ。)
クォーツが自分のことを「精霊に愛された子」とだと言ってくれたあの日から。
どうにか話しかけようにも、どうも自分たちは目立ちすぎるようだった。
(気を使ってくれたのかな)
思わず、笑みがもれる。
(寮に帰ってから、読んだ方がいいよね。)
授業があと少しで始まってしまうのだ。
しかし、そわそわしてしまう。
(読んでしまおう)
封筒からとりだして、便箋を開く。
(なんだか、せっけんのにおいがする…)
わくわくするきもちは高まる。
(フレスベルへ
こうして、手紙を書くのは初めてだね。
ぼくたちは、みんながいるところだとあまり、落ち着いて話せそうにないから、手紙を君の机に忍ばせていただいたよ。
久しぶり。その後はどうかな?
出会ってからは、毎日会っていたから、
今は、話すこともなくなったのが不思議だ。
良ければ、時間があるときにでも、
また、ぼくの研究室に遊びに来てほしい。
今なら、季節のお菓子も用意しているから。
楽しみにしているよ
)
「季節のお菓子…」
フレスベルはそんな自分が子供っぽいなと思いながら、目を輝かせた。
(クォーツは、わたしとまた会ってもいいって思ってくれてたんだ)
(嬉しい。)
便箋を優しくだきしめる。
(今日、行ってもいいのかな。)
(迷惑じゃない?)
(それより…楽しみにし過ぎだって思われない?)
「…」
考え込むフレスベル。
「…ファラ?」
フレスベルは作戦を敢行した。
「どうしたの?フレスベル。」
「一時期、仲良くしてたけど、あんまり、話さなくなった人が、遊びに来てっていったら、すぐ行ってもいいのかな。いや、人から聞いた話で、ファラならどうするかなって思っただけなんだけど。」
もじもじしながら、早口で言った。
ファラは、ははあん、という顔をした。
「いいのよ、隠さなくて。」
「な、なんのことだか。」
「ふふ、行きたい時に行くのが一番よ。
明日には行く気なくなってるかもしれないし。」
(そんな考え方があるのか。)
「ありがとう…一意見としてもらっておくね。」
もじもじしながら席に戻った。
(予想はしてたけど)
授業中、板書をしながらファラは思いをはせる。
(さっきの百面相のお相手はクォーツ様だったのね)
(あの捨て猫みたいだったフレスベルが…)
ファラの一挙一動におびえていたフレスベル。
ファラのことをきれいだと言ってくれたフレスベル。
その日から見る見るうちに美しくなったフレスベル。
ファラは、すこしだけ、目頭が熱くなった。
(緊張する)
フレスベルは通いなれた研究室の前にいた。
扉の前にかけてある札には「在室中」と書いてある。
(だって)
(何をお話すればいいのかな)
なにか、会って話したいとは思う。
しかし、話題が思いつかないのだ。
(サラマンダーとのことはまだ、誰にも話せないな)
自分は呪いの子であったことも、話すことになる。
(わたし、そんな、みじめな子なんだって、思われたくない)
見栄を張りたいわけではない。
自分を見る目が変わるのではないかと、
気を使って、これまでと同じように関わってくれなくなるのではないかと、
(それだけが、怖いなんて)
自分が変わったことを感じる。
などと考えていると、がちゃり、と扉が開く。
「フレスベル、いらっしゃい。
魔力の波動を、何となく感じてね」
フレスベルは、聞きなじみのある声に安堵した。
クォーツは、ほほえんでいる。
(ええ、ネックレス、そんなに何かもれでているの?
じゃ、なくて…)
「こ、こんにちは…」
さっそく来てしまったことが、恥ずかしかった。
指摘されないか、不安だった。
「もう来てくれたんだね。ありがとう」
クォーツは、とくに、それ以上のことは言わなかった。
「お茶とお菓子を用意するよ。ゆっくりしていって。」
クォーツは、ここまでは、段取り通りだと安心していた。
ありがとうございました。




