11_ダンスパーティーなんて無理(1)
「そろそろ、創立祭のパーティーね」
「学校に入ったばかりなのに、
エスコートしてくれる方なんてすぐ見つからないわよ」
「そうねえ、上級生が楽しむパーティーとも聞いているわ。」
そんな、浮き立つ女生徒を尻目に、ファラはフレスベルを見ていた。
テスト休みの日にフレスベルが街に行ってから、大きな変化があった。
おどおどとした雰囲気がなくなったのだ。
しかし、どこか、上の空なのだ。
ファラはフレスベルの性格にはとても複雑な事情があることを察していた。
そのため、本人が話すまでは黙っていようと思っていた。
(でも…心配だわ…)
(…)
考え込むファラ。
(そうだ!)
「フレスベル、パーティーは、どなたにエスコートしていただくの?」
(みんな、あなたのエスコートの相手はクォーツ様だって、噂してる)
フレスベルは注目されるのが苦手なので、そのことは言わない。
景気のいい話題をしたつもりだった。
「そんな…わたしクラスメイトの男の子とすら、一方的に話しかけられたことしかないの。」
(クォーツ様…)
ファラは頭を抱える。
「あの日」、そう、テストの結果の発表で、自分のせいで起きたハプニングのあの時。
フレスベルを助けるクォーツのまなざし。
それが、ただの後輩に向けるものではないくらい、ロマンスに興味津々なファラは、感じ取っていた。
(フレスベルにロマンスはまだ早いのかしら)
(無理に元気づけようとしても駄目ね、フレスベルの様子を見ましょう。)
二人はお昼をとるために、食堂に向かった。
クォーツは、悩んでいた。
一人、研究室で、ペンをノートにつけたり、離したりしている。
創立祭のエスコートを、どうやって申し出るかである。
(ぼくは、これまですべて、エスコートは申し出なかったからな…)
クォーツは、嫡男であり、社交はきちんと叩き込まれている。
しかし、学者の一家であるので、社交がすべてではない。
そのため、多額の寄付を寄せている立場であったが、有力者たちへの挨拶回り程度で許されていた。
(はじめて、フレスベルに会ったときは、子猫に餌をやるくらいのきもちだった)
クォーツは、フレスベルにテスト対策を条件に出した時のことを思い出した。
(「私の落第を阻止したらお見せします」)
(強気な捨て猫だと思っておもしろかったな)
表情が緩む。
ノートにインクがにじんでいく。
はっとする。
(まず、相手が決まっていないかどうかだろう)
(早くしたほうがいい。)
今はお昼休みだ。
「フレスベルは食堂か…?」
(食堂は人が多すぎる)
(さすがにクラスの教室にいくのはまずい)
「この間、助けた時も、ものすごく目立っていた。」
(どうしたものか)
フレスベルとクォーツは、もう接点がないのだ。
「エスコートより…。」
(何気ない話を、したいな)
クォーツは、頭を抱える。
(なにか、なにか、ないのか。)
「そうだ」
(女性のことは、女性に聞こう…。
いや、でも…あの人に、そんなことを相談したら…もう、つまり…)
ノートにインクがにじんで広がっていった。
(そもそも)
前髪をかき上げる。
(ぼくは、家を継ぐ身なんだ。
ある程度未来が決まっている人間なんだ。
いいのだろうか…
そんなことをしても…)
クォーツは、思考が停滞したのを感じた。
(まずは、家に帰ってからだ。)
ノートを閉じ、クォーツは、研究室をあとにした。
ありがとうございました。




