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4月21日 昼

 昨日の夜、美奈子からライムが来た。

 あさみとのグループではなく個人あてで送って来るのは初めてだ。


 その文面は淡白なもので、【花村研について教えて。】 と一言だけ。

 挨拶もなければスタンプもない。合理的な彼女らしいとも感じる。


【明日の3コマの時間は空いてるけど】


 と送ると、


【学食で。昼おごる。】


 と返ってきた。話を聞かせてくれるお礼にご飯をおごるって意味なんだろうけど、省略しすぎてると思う。

 そういうところはあさみそっくりだ。



―***―



 約束の時間に学食に行くと、入口で美奈子が待っていた。

 まず昼食を買う。もう3コマの講義が始まっているから、学食内はかなり空(す)いていた。

 ここの学食は好きな物をお盆に取って行って最後にレジで計算するスタイルだが、期間限定のセットもののポスターが目に入った。あさりと筍(たけのこ)の炊き込み御膳。おいしそうなのでカウンターの奥のおばさんに注文する。と、次に並んだ美奈子も同じものを頼んだ。


 四人掛けのテーブルに座って食べる。

 本題は食後にして炊き込みご飯を味わうことにする。

 美奈子とはいつもあさみを間に挟んで話しているような仲なので、今まで二人で話すことはほとんどなかった。

 美奈子も喋らなかったが、不思議と気まずさは感じなかった。


「で、何が聞きたいの?」


 美奈子が食べ終わるのを待って聞いた。


「花村研は楽だって聞いて。それってマジ?」


 なるほど、楽な研究室を探しているってわけか。

 花村研所属の先輩から聞いた話をそのまま伝える。


「他(ほか)よりは楽なんじゃないかな。適当にテーマ決めて、参考文献からの引用で固めればオッケーって、今花村研にいる先輩が言ってた。多少内容薄くても修正なしで受理されるって。」

「おぉー。」


 美奈子は小刻みに頷くと、鞄から紙を取り出した。

 一昨日配られた研究室希望のアンケートだ。


「その理由が、先生が海外出張ばかりでほとんど日本にいないから。だから代わりに、先生からの指導はほとんど受けられなくて、身になるものがないって話だけど。」

「いーわよ別に。あたしは公務員志望に切り替えるから、勉強時間取れるとこがいいの。」


 そう言いながら彼女はアンケートに花村先生と書いた。

 人気のない研究室だ。成績順としても、まず落ちることはないだろう。


 しかし公務員か。

 教育を学んで、やっぱり教員は無理だって考えて進路を変える教育学部生は多い。特に教育実習で決断する人が多いと先輩から聞いていたが、美奈子はもう決めていたのか。


「教員免許は?」

「一応取る。せっかくだし。」


 俺もそうなる可能性が高い。学校の先生にあこがれてここに来たけど、正直、現場の話を聞くほどにこの道は険しいと感じていた。

 だから就職活動の時間を多く取れそうな花村研、と思っていたが、そうか、今のうちに何か別の勉強をしておくっていう手もあるのか。

 何か考えてみてもいいのかもしれない…。


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