ログ4-私はひと言も喋っていないのだから
世の中にはロボットの三原則というものがある。しかし実際ムメイ含めロボット達はこの三原則に従っている訳では無い。それでも根本にある道徳的な思想には一致する
1.ヒトに危害をくわえない事
2.ヒトに有益な命令に従う事
3.規律を守り、自分も守る事
では、この原則はヒトが居ない時にどのような働きをする様になるのだろうか?
今のムメイに悩む必要は無い
この世界は今のところ大規模に人類が存在している目処こそ無いものの、
相棒君が存在しているのだから。
「なるほも、ほもほも」
最低限若い女性の様な風貌の…随分と情報量の多い…言い換えれば、廃工場のような配管やコード、内部機構が丸見えのロボットは腑抜けた相槌を打つ
ロボットの前に座る男はツッコミもせず
淡々と語っていく
「元々、僕は冷凍保存…されてたんだよ。目が覚めたら、状況とかどーとかを取り合えず調べて人類の復旧をする。そう叩き込まれてるの」
「謎サバイバル能力は教育の賜物?」
「そゆこと。」
出会ってからたかだか7時間6分45秒だ。それでも端々から青年…相棒君の能力の高さが伝わってくる。身体能力も並の人間ではあり得ないレベルだった
ヒトという種の未来を託されているのか。
選りすぐりの超能力の持ち主なのだろう
あぁ、うん。筋密度をスキャンしたら点数MAXかい。バグ…ではないよね?
「それで対価として頭が硬くなったのか、残念な弱点ね…」
大げさに身ぶり手ぶりを交えて嘆く
「ま、誰も居ない、情報も無いってのは流石に酷すぎると思うが」
お〜い?おーい?
スルースキルの上達が早いよぅ…ッチ
すねたよー私すねすねすね子だよー
「「ぷぅ〜〜」「ぷぁああた!」「ふぬぬぬゆ!ぅ!」」
「うるっせぇぇ!話せって言ったのお前だろうがぁ…秒で飽きたろっ」
いや?ちゃんと聞いてたよ!ちゃんと考察もしたよ!
あとは病気も無く自分が生きていく事が出来ている以上、土地について深堀りする気は無かった…的な事を言ったっけ?
「…まぁ。うん。」
何が言いたいんだい?青年に向き合い、強烈なドヤ顔をかましておく
「どっちにしろオモロそうだし付いてくさ」
なんとも言えない無表情になった相棒くんは
「いずれ調べる事になっていただろうし、解析できそうだし、泳げそうだし」
と自分に言い聞かせるように喋った
「おっと今ナチュラルに仕事振ったねぇ?」
どうやらこの青年は都合よく聞こえない、良い耳をもってるようだ。しれっと話題をすり替えた
「建造物が残る可能性がある場所…風化が遅い土地が良いな」
熱帯雨林では土壌が日々更新され続けるからこの世界が地球だと言う仮説を証明する事ができない
そういうのが私達双方の意見であった
「砂漠に行くのがベスト、そうだろ?」
「そうね!」
なんともロボ心の分かるヒトだな。素晴らしい。
「そんで、もし何もなかったら地層が見える場所を探そう。海岸か山かな?」
「都合がいい、どっちにしろ通るぞ僕が目覚めてから2年間、あらかた探索はしてある。砂漠、山、海があることは確認済みだ」
なるほどねぇ〜。
私は洞窟を飛び出し、目の前のトウモロコシモド木の幹に5本目と6本目の脚をガチリと突き刺し、スルスルと登っていく
数秒もしない内に登り終えると、さすが高木、視界が恐ろしく良好だ
ギリギリのタイミングだった。不気味なほど赤い空に、白い半月の浮かぶ世界の景色が広く見渡せる
生い茂る熱帯雨林の合間にポツポツと隙間があり、その黒い森を越えた先――太陽を左手に捉えた方角に、端が見えないほど高く長くそびえ立つ、巨大な山脈がそびえ立っていた
「北に山脈あるのが見えるか?湖が無い方の山脈、その奥だ!砂漠と海は!」
下から相棒君が声をあげる。ん?北?
反対側を見ると、先程の山脈よりやや小さいが山脈がある。山に挟まれた地形のようだ、まったくもってややこしい、間違えてクソデカ山脈をわたる所だった
「ま、どっちにしろ長旅だけどね」
相棒君はカチャカチャと蜘蛛みたいな動きで降りてきた私に引いた顔を見せながら言う
「最初の拠点に戻れたら良いのだけど…」
三日前に謎のロボットに襲われて拠点を放棄したのだったっけ、最初に相棒君に会った時に、農業用の鎌で首を切られたのだ。
「それが良好!最初の拠点にも帰ろう!」
「ムメイ、なんだその言葉づかい、再学習し直したらどうだ?」
笑いながら煽る相棒君。今は、その煽りに反応している場合ではない。
なぜなら―
私は一言も喋っていないのだから




