ログ3-人類復活、正確にはその為の調査
遊べと言われてもゲームも無いし私はそもそもロボットなのだし。青年の仕事を眺め、手伝おうと試みる。青年曰く女中らしいので目指せ万能女中である。
急に顔を近づけた私に怪訝な顔をしながら青年はたき火の周りに棒状の機械部品の様なものを突き刺し、水を入れた袋を掛ける
木のボウルに浸していたつる性植物の根と思わしき物を引き上げ、袋に入れていく
沸騰を待っている間に手際よく百合の根を刻み、トウモロコシの実を外して追加する
「肉質の物は入れないの?」
青年が先ほどから入れているのはすべて植物質の物である
「今のところ、マトモな肉に出会えて居ないんでな」
そういえば、魚も鳥もすべて?のつくようなメカだった。私のパーツに出来たくらいだし
胡椒と岩塩を少しずつ削り、青年はスープらしくなってきた袋の中身を眺める
「よし。まぁこんなもんだろ」
腕前も手際も良い。早々に手伝える部分がなさそうと踏んで、青年を見つめ続けるという地味な嫌がらせを行っている。私の方を向いてドヤ顔を披露してきたので、ドヤ顔で返してみた
ジト目になった青年が聞く
「ムメイはガソリンとか必要か?」
「魚から貰ったからまだ平気よ、同化すると回復するみたい」
「そうか。メカ壊しながら生きてけ見てぇな能力だな」
青年は袋を火から下ろしながら口をひらく
「それ、僕の知ってる限りだと最先端でもできるか分からないレベル」
「う〜ん、一般的かどうかの情報が無い」
脳内辞書を引きつつ答える
「年代か環境かブレてるかもな。暫く話そうか。何かわかるかもしれんし」
ごもっともな提案だ。ひとまず今の状況を知りたいので青年の知っている範囲で話してもらうことにした
「手を合わせて、いただきます」
うん、日本文化である。青年はスープを飲んで話始める
「僕はここに2年前に来た。ずっと、別の星かなにかに来たのかと思ってた」
「そこに私が?」
「そうだ。明らかなロボが器物破損罪とか喋り始めるから」
それで動揺していたのか。ん…?
「最初に挨拶したよね?」
「あの異音が?攻撃してくるかと思ったぞ」
「まじですか」
青年の耳が心配になるね、あんな美声をスルーするなんて
「人型ロボットに遭遇したのはムメイで5回目だ。4回目に12体に囲まれた。そして本気で殺しに掛かってきた」
「ほう。それで初っ端に切られる羽目になったんだな」
「悪かったな、警戒してたんだ」
「でも妙だね、ロボットはヒトを傷つける事ができないはず」
「そうだ。ロボットから見てもおかしく思うか…」
不思議な事もあるもんだ。私と青年が日本出身でここは異星、異世界なのかもしれない。微妙に確信の掴めない範囲なので困ってしまう
「青年との価値観とかルールは大体一致してそうだね。あっ、そうだ私はムメイ」
「知ってる。目前でそうなった」
「青年、君の名前なんて言うんだ?」
「ん、僕からムメイの名前を聞いたのに今度は悪いが、青年のままで頼む」
ぬぅ
「距離感じるな?ご主人様でいいか。」
「さらに距離を空けやがった!?せめて対等な感じで頼む」
渾身のメイドスラングボケを恐らく本気で捉えられてしまった。解説するのも面倒だわ
「じゃ、相棒君!よろしくね」
「まだマシか。」
ノリよく返せよ、面白いじゃんか?
「そいやぁそのロボは人型であっても言葉を話したりしなかったの?」
「3回目はなんか話してたが日本語ではなかったし、少なくとも僕の知っているどの言語でも無かった」
私が役に立てるかもしれないな、言語解析ベースがある。遭遇できたらいいが、襲われる危険もあるのか…
「相棒君、どのくらい言語喋れるの?」
「類似言語含めると大体36言語は。会話が成り立てばいいなら相手に頼る事になるけど60はイケる」
真顔でグッドマークを作る青年。半端じゃなかったぜ、下手なメカよりできるじゃないか…これは本当に存在しない言語の可能性があるな
「言われた音を再現しようか?」
「まさか…できるの?レコーダーも無いのに?」
「できる」
言い切ったし、私の知っている人間はそんな高性能だったっけ?メモリ内容が間違ってるのかな…
ごほん!と咳払いしたので聴覚の精度をあげる
「「♪$々♪¥・¥#??『*.2(☆9☆%々(%・0♪$〜005☆7゜.0♪6+…%(♪.%々『『$2☆#¥??☆¥^・(゜」
「一部発音不可分野があるな。言われたのはこれですべてだ」
ナイスすぎるわ、いくらなんでも生身で出来る範囲なのか…?
余計な事を考えていたら青年がこちらをチラチラ伺っている。あらやだかわいそ可愛い、さっさと解析してしまおう
【言語解析NLPノード使用、系統分析…形態素解析】
「どうだ?何か分かったか?」
「えっとね、少なくとも地球上に存在しないものだし、どの言語体系にも属してない」
「そうか。」
「随分とおちついているね」
「既存の言語に当てはめても当てがつかなかったからな。予想が確信に変わっただけで計り知れん価値だ。ありがとう」
褒められた!ふふふふ…にやにやしてしまうわ
「人畜無害で逆に心配になってくる…」
おい、どういう意味だ!?
「アホ面って事」
このっ、言うようになってきたな…
「そう言えば遺物ってのは?」
「一番最初のか、よく覚えていたな。意味は言葉どおりだ。過去の知的生物が残した物を便宜上そう呼んでみてる」
「ほうロボットとか、遺構とか?」
「そう。それで、多分ムメイも含まれる」
「もしそうだったら過去の知的生物ってのはヒトでしょう。私はヒトを知っているから」
尚更おかしくなってきた。この熱帯雨林は元日本説が濃厚だな。
1人と1体でしばらく逡巡した後に青年は口をひらく
「おにぎりってなんだと思う?」
「ごはんに海苔を巻いたおむすびのコンビニでの商品名、海苔がパリパリになる包装が特徴」
辞書を引いて出てきた答えは青年の情報と噛み合うものだったようだ。
「年号覚えているか?」
「製造した時なら…えっと、統一歴10年、西暦3012年。第三次世界大戦後らしい」
「まじかよ。最初に聞いておけば良かったな」
「ん、同年代ではなかったかい?見た目に違和感は無いけど」
「僕が知ってるのは西暦2500年まで、統一はアジア近辺だし、日本国は日本国だ」
「512年のズレ…けっこう大きいね。私は相棒君にとって未来の存在なんだ」
一度に会している。ならば3012年以降の世界だってのは分かった。未だ、過去に遡る方法は見つかっていないが、未来ならば簡単だ
「ここが本当に地球かどうか調べるってのを目標にした方が良いな」
目を伏せた青年は答えによって対応も変わるだろうと呟いた
「相棒君は何を目標にしてるの?他にやることないし、楽しそうなら付き合いたい」
「人類復活、正確にはその為の調査」




