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逆流する因果

――サッ。


一拍遅れて、音が鳴る。

「……」

ソウマは、立っていた。

視界は開けている。

最初にクエストに来た、街道沿いの草原。

ネグラディアに遭遇した、リリアとの思い出の場所。

一歩、足を動かす。


――サッ。


遅れて、芝生を踏む音が鳴る。

「……同じだ」

まだ、残っている。

あれだけやってなお、消えていない。

もう一歩。


――サッ。


遅れる。

何も変わらない。

ただ、音だけは。

もう一度、足を止める。

もう一度、踏み出す。


――サッ。


遅れる。

「もう、問題じゃない」

そう処理した。

理由はないし、それがある必要もない。

視線を上げる。

何もない。

しかし、思い出が蘇る。

最初に受けたスライム討伐クエスト。

初めての属性魔法。

突然現れた、支配竜ネグラディア。

魔獣を従える、あの圧倒的な恐怖感。

あれがなければ、生きて帰れていただろうか。

「……?」

何かが、引っかかった。

思い出しかけて、止まる。

「……あれって、何だっけ?」

あの時、生きて帰れたのはあれのおかげだ。

でも、"あれ"が何だったか、思い出せない。

「誰が……?」

名前は、分かる。

「……リリア」

そこまでは出る。

だが、その先が分からない。

何一つ、思い出せない。

「……」

顔を思い出そうとする。

浮かびかけて、崩れる。

銀色が浮かんだ。

それだけだった。

「……」

声を思い出そうとした。

何かが混ざった。

『止めなければいけない』

「……これは違う……」

そう判断する。

だが、正しいものも出てこない。

「……もういいだろ」

思い出すのをやめる。

意味がない。

「もう、過ぎたことだ」

そう結論づけた。

空に向かって手を伸ばす。

そのまま、止める。

拳を握る。

開く。

指の動きは見える。

ただ、肌の感触は遅れて来る。

もう一度。

閉じて、開く。

やはり、遅れる。


ソウマは壁を探した。

近くの木に手を当てる。


触れた瞬間も、感触は来ない。

一拍遅れて、幹のざらつきが指に乗る。


力を込めて、押す。

遅れて、抵抗が来る。


「……変わってない」

そのまま、力を抜いた。

離れてから、感触が消える。

(……変わるはず、ない)

だが、それ以上は考えない。

何もかもが無くなった。

無くしてしまった。

残ったのは、虚無感だけ。

「……キリがない」

足元に、小さな石があった。

「……もういいや」

ソウマはそれを拾う。

遅れて、重さが来る。

重さを感じた後、投げる。

石は、飛ぶ。

空に曲線を描いて、落ちる――


はずだった。


「……?」


石は空中で、静止した。


「……???」

動かない。

音もない。

そのまま、そこにあるまま動かない。

(……なんだ、これ……)

理解が、追いつかない。

次の瞬間。


――カツ。


音だけが、遅れて鳴る。

地面を見る。

石は、すでに地面にあった。

「……見てない」

いつ、落ちた?

「さっきまで空にあった……!それを眺めていただろ……?」

なぜ、消えた。

なぜ、落ちている。

なぜ、音でやっと気付いた。

なぜ、何故、なぜ……


順番が、違う。


「……試せ試せ試せ……今の俺に出来ることは検証しかないだろ……」

もう一度、小石拾う。

大きく振りかぶって、投げる。

そのまま空に大きな曲線を描いてーー


普通に落ちた。


――カツ。


音だけは、遅れる。

(……どうして)

再現不可、理解不能。

「……見えていた過程だけが消えた……?」

もう一度、投げる。

普通に落ちた。


――カツ。


三度目。

普通。

四度目。

普通。

五度目も、

普通。

さっきの現象は、起きない。

それ以上、やらなかった。


歩く。

歩き続ける。

「……」

視線の端で、何かが動いた気がした。

顔を向ける。

誰もいない。

そんなことぐらい、分かっている。

最初から誰もいない。

それでも、もう一度見る。

やはり、何もない。

「……」

ソウマは黙っている。

また、頭の奥で何かが引っかかった。

誰かの顔を、思い出しかけて崩れる。

(……リリア)

また、名前だけが残る。

「……」

もう一度、思い出そうとする。

銀色と、風。

それだけしか分からない。

「別にそれでも、いい」

本に書いてあったはずだ。


『新しいことを始めるには、何かを切り捨てなければならない』


「別に一人で生きれば、いいだろ、そうだろ、そのはずだろ……」

自分のことは自分でやる。

自分の問題も、この現象も、全部自分で解決させる。

たとえ道が茨だとしても。

道があるなら進めばいい。

進むしか、ソウマは出来ない。


ーーサッ。


音はまだ遅れる。

何も変わらない。

ーーそのはずだった。


視界が、わずかに揺れる。

「……っ」

遅れて、軽い眩暈が頭を蝕む。

しかし、すぐに収まる。


ソウマはまた歩き出す。


――サッ。

ーーサ。


(……は?)

音が、二回鳴った気がした。

もう一度試す。


ーーサッ。

ーーサ。


「……どっちだ」

一瞬だけ、思考が止まる。

今のは、一回か、二回か。

判断が、出来ない。

「もういいか」

ソウマはもう、気にする、気に出来る気力がほぼなくなっていた。


ソウマは何も気にせずに歩き続ける。

気が狂ったような半笑いで。

ガルネスの町を目指して歩いた。


――コツ。


音が先に鳴る。

足は、まだ出ていない。

しかし、ソウマは何事もなかったかのように歩き続ける。

それは、本当に気づいていないのか。

気づかないふりを、しているのか。

ソウマ本人にすら、判別はつかない。

その時。


視界が、遅れる。

「……っ」

でも、今のは、

視界が遅れたのか。

自分が遅れたのか。

「……どっちだ、どっちだ」

判断できない。

もう一度、踏み出す。

感覚。

視界。

音。

全部、順番がめちゃくちゃ。

「……」

情報処理が追いつかない。

「……俺じゃ無理だ」

その場で、立ち止まる。

「……もう、何もかも分からない……」

何もしない。

それでも、遅れは消えない。

「……は」

諦めたように息を吐く。

遅れて、吐いた感覚が来る。

(……もう、うんざりだ)

自分の呼吸すら、信用できない。


――コツ。


いつの間にか、ガルネスの高い城壁が見えてきていた。

「もう少しだ……もう少しで……」

やっとガルネスに着く。

「……何で来たんだっけ?」

ソウマは困ったように首を傾げる。

頭では分かっていない。でも、身体が行くべきところへ動くような気がした。

「まあ、いいか。どうせ暇だし、やることもない」

ソウマは何も考えずに、空を見上げながら歩く。

しかし、いつもは見えるはずの一番明るい星が見えない。

(……シリウスは?)

いつも一番先に見つけるはずの光が、どこにもない。

この世界でも、地球と同じ星座が見える。

何なら地球よりも綺麗に、近くに見える。

だからこそ、星が分かるソウマはこの異変に気付いた。

だが、完全な理解は出来ていなかった。


微かな異変を感じながらも、ソウマは城壁の前まで歩いた。

人通りが無い時間帯に、街道を歩いてきたソウマに訝しげな視線を送りながらも、兵士は城壁を通した。

「おい、あいつ確実におかしいだろ」

「おかしいのは分かる……でも何が?」

「誰も知らないのか?」

「誰か知ってるものはいないか」

ただならぬソウマの雰囲気を感じた兵士たちは互いに聞き合うも、誰も知らない。

当たり前だろう。

あの場には、ソウマたちしかいなかったのだから。


「おっちゃん……」

「おう、いらっしゃい……どうしたんだよ、そんな顔しやがって」

ソウマはリリアと食べた串焼き屋に自然と足が向いていた。

ただ、ソウマはかなり辛そうな、苦しそうな顔をしていた。

「何でも、無いんだ。大丈夫だ……」

「そんなわけあるかよ。何でもねぇならそんな顔しねぇよ」

「それもそうかもな……。でも、本当に何でも、無いんだ。()()()、無いんだ……」

「あ?」

「いや、いいんだ。心配してくれてありがとよ」

ソウマは無理矢理作り笑いをする。

店主は何か思ったようだったが、何も言わないことを感じたらしい。特に声はかけなかった。

「で、注文は?」

「ああ……。串焼き二本頼む」

「あいよ、串焼き二本ね……」

ソウマは銅貨を置いた。

店主は慣れた手つきで肉をひっくり返す。

ジュッ、と脂が炭火に落ちた。

煙が上がる。

香ばしい匂いが一気に広がった。

「はいよ」

焼けた肉が渡される。

「悪いな、こんな時間に」

「全くだ。今夜は帰るの遅くなるだろうな……」

「色々、悪い。助かった」

ソウマは回れ右をして歩き出す。

背後から声が飛んでくる。

「また来いよ。あの方も連れてな」

ソウマは歩きながらその声を聞いていた。

数歩歩いた後、足が止まる。

「……っ!」

ソウマはその意味を理解した瞬間、息を呑んだ。

そのまま何も言わずにまた歩き出す。

(そういえば、この店はリリアとも行った。あの時も……)

同じように肉が焼かれて、同じように銅貨を払って、同じように二本買った。

(ただ違うのは……)


リリアがいない。


今さら、その存在の大きさに気付かされる。

なぜ、自然とこの店に足が向いたのか。

なぜ、一本ではなく二本も買ったのか。

これなら、全て説明できる。

「だとしたら、次に行くのは……」

ソウマは足を止める。

いつの間にか、最初にリリアと泊まった宿の前に着いていた。

ソウマは疑うように自分の足を見る。

「我ながら自分の足が怖いよ」

そう呟きながら、ソウマは宿に入って行った。


「ふぅ……」

ソウマは借りた部屋に入るなり、ベッドに倒れ込んだ。

「にしても奇妙だな……」

もちろんパラドクシアもだが、ここでは違う。

この前リリアと過ごした時と同じ部屋なのだ。

(偶然にも程があるだろ……)

そんなことを思いながら、ソウマはそのまま眠りに落ちた。


目を開けると、窓の隙間から差し込む光がゆっくりと部屋の中を照らしていると思っていた。

柔らかな朝日が木の床に落ち、薄いカーテンを通して揺れているはずだ。

しかし外は明るく人の声がして賑やかだし、光は柔らかくなんか無い。むしろ硬い。

「寝過ぎた……」

ベッドから降りて、軽く伸びをする。

寝過ぎた理由は、ソウマにも分かっている。

ただ、完全にでは無い。ソウマは疲れだけだと思っているが、そうでは無い。


いつもあったはずのノックが、ない。

開くはずのドアが、開かない。


そのことの重要性を認識しきれていないから、それに気づけない。


食堂は空いていた。

時間がちょうど微妙なのだろう、冒険者はいない。

いるのは、旅人一人のみ。

焼いたパンの香りが広がっている。

席に座る。

しばらくして料理が運ばれてきた。

焼きたてのパン。

野菜のスープ。

ソウマはパンをちぎって口に入れる。

「うまい」

スープを飲む。

温かい味が体に広がった。

その様子を見て、料理人は記憶を漁り出した。

(何だか既視感のある飲み方だな)

と思ったらしい。


ソウマは宿を出たあと、てっきりギルドにも行くのかと思ったが、足の向いた先は街道を戻る道だった。

「行かないのかよ」

クエストを受けようと思っていたソウマは軽くツッコミを入れながらも、

(まあ、この状態じゃしんどいか)

とも思った。


ソウマは街道を歩き続けた。

街道が結ぶのは、首都アストレアルと冒険者の町ガルネス、それと商人の街ルヴァリアだと看板で知る。

「左腕無いのはきついし、首都を見てみたい気持ちもある。金があるわけでもないからとりあえずアストレアルだな」

ソウマはアストレアルに目的地を定めた。

「プラークタカットの価格、今どう?」

「やっと店が開ける……!」

「あいつの店まだ続いてるかな」

白帆(はくはん)商会連合に行きたいよな」

昼間なだけあって、人通りは多い。

意味の分からない単語も聞こえたが、商人だとは分かる。

一方、冒険者らしき人は見当たらない。

ソウマ一人だけで、居心地の悪さを感じたらしいソウマは、目立たないように歩くようになっていた。


いつしか街道沿いは抜けるような草原から、背の高い木の森林へと変化していた。

木々から漏れる光が眩しい。

ソウマは眩しそうに目を細めながら、出来るだけ音のズレを気にしないように神経を尖らせていた。

分かれ道が見え始める。

右が首都アストレアル。

左が白帆(しらほ)の街ルヴァリア。

ソウマ以外は全員が左に行ってしまったので、少し不安になりながらも進んでいく。

ただ、夜になっても森は抜け出せない。むしろ暗く鬱蒼としてきていた。

(遠いって……。いつまで歩けばいいんだよ……)

木の看板が見え始める。

そこには、


首都アストレアルまで 十万スクラスト


と記されている。

「肝心の単位が読めないんだよ!」

ソウマは誰もいないのをいいことに叫んだ。

(ただ、遠いってことだけは分かる……。ただの嫌がらせにしかならないな、俺にとっては)

日が落ちて、夜空に星が浮かび始めても、夜が明けてまた朝になっても、来る日も来る日も歩き続けた。

ソウマは体力にはある程度の自信があるが、何日も歩き続ける体力も脚力もないはずだが。


三日目の夜。

ついに街道沿いの街灯が無くなった。

「本当に街道か……?国道157号ぐらい酷いぞ、これ……」

整備なんてされていない。もはや道ですら無い。

地面は土。

木々の葉に覆われて星も見えない。

暗闇の中を、ソウマは歩いていた。

「さすがに光が欲しいな……そうだ。フラルクス!」

閃光が走る。

ただ、照らされるのは一瞬だけ。

しかも自分も目を閉じてしまうので意味がない。

「くそ……次だ。ノクスル」

ソウマは唇を噛んだ後、木に光を付与し続ける。

「これなら少しはいけるか……?」

その時、ソウマの足がふらついた。

「ちっ。魔力不足か、くそ……!」

ソウマは考えた。

付与するという考え方自体は合っているはずだ。

(じゃあ何が……?)

理覚が働く。

今度は必要な情報だけ、頭に流れてくる。

(光が欲しいのは、俺自身。俺を中心に光があれば良い。つまりは……)

「俺に光を与えれば良いということか……!」

空間の外にある光を掬う。

まるで風に吹かれている光の粒を掴むように。

そのまま、保持し続ける。

「ノクスル」

自分が、輝く。

内面から光が溢れ出す。

「おお……」

ソウマはそれに見惚れる。

しかし、次の瞬間。


内面が焼けるような熱さがソウマを襲う。

まるで臓器を、魔力の受容自体を焼くような熱さ。

「っ、熱っ!何だ!?」

慌てて魔法を解除するも、もう遅い。

ソウマの意識は、暗闇へと落ちていった。


――音が、ない。

何も、鳴っていない。

ソウマは、目を開けている。

感覚としては、目は開いている。

そのはずだった。

でも、何も見えない。

開いているのか、閉じているのか。

その違いすら分からない。

「……」

暗い。

だが、その“暗さ”を測る基準がない。

濃いのか、薄いのか。

判断できない。

「……また、飛ばされたか」

軽くため息をつきながら、手を動かす。

視界の中に、手がある。

だが、それが“今あるもの”なのかは分からない。

さっきのものかもしれない。

これからのものかもしれない。

「……何も」

少し不安げに指を動かす。

動いた。

少なくとも、ソウマはそう思った。

だが、“動いた後”しか分からない。

動かした瞬間が、存在しない。

「分からない……」

止める。

止まった。

そう認識する。

だが、それが“止まった結果”なのか、最初から止まっていたのかが、判断が出来ない。

「……」

目を閉じる。

閉じたはずだった。

だが、閉じたのか、閉じていないのか、判断が出来ない。

何も変化がない。

ただ、ソウマの意識は動いたと感じただけ。

そうとしか言えない。


「……気持ち悪い」

立っている。

でも、地の感覚がない。

そもそも地面がない。

落ちているのかもしれない。

だが、落ちているのか立っているのか、判断する手段がない。

上を見た後、下を見る。

しかし、その違いがない。

何も変わらない。

方向がない。

前を向いても、後ろを向いても、その違いはない。

「……縺薙?遨コ髢薙?荳?菴謎ス輔↑繧薙□……?」

考える。

何かを考えている。

そのはずだった。

(……)

その“前の思考”が、ない。

今の思考も、どこにあるのか分からない。

「……縺溘□縺ョ證鈴裸……?」

言葉が浮かぶ。

消える。

繋がらない。

一つの文にならない。

原因も、結果も、順番もない。

「……?」

“縺輔▲縺”という言葉が浮かぶ。

(……あれ?)

だが、“縺輔▲縺”は、どこにもない。


“迴セ蝨ィ”という言葉が浮かぶ。

“迴セ蝨ィ”が何かが分からない。


“縺薙l縺九i”という概念が浮かぶ。

しかし、内容は分からなくても実現が不可能なことだけは分かる。

「そんなこと、分かってもな……」

ソウマはそう呟いた。

その時。


“何かが来る”

理由はない。

根拠もない。

だが、本能的に異変を感じる。


声がした。


「助けを、求めきらなかったんだね」

「……またお前かよ……」

音があった。

それが、異質だった。

距離がない。

方向もない。

だが、確かに“ある”。

振り向こうとする。

向いたのかどうか、分からない。

「お前は誰なんだ」

答えは分かっていたが、それでも聞く。

聞いた。

そのはずだった。

だが、それが今した発声なのか、分からない。

音が、聞こえない。

「今は重要じゃないことだよ」

応答があった。

時間の流れがあるように見える。

だが、それを測る基準がない。

「……ここは」

言葉が、途切れる。

どこまで言ったのか、分からなくなったから。

「君が止まった場所だよ」

やはり意味は理解できない。

「やっぱりお前の言うことは理解が出来ないよ……」

言葉が、出る。

そのあと、自分が何を言ったのか理解する。

遅れているのか、順番があるのか、分からない。

「そうだろうか?出来るだけ単純に言っているつもりなのだけれども」

「俺には理解出来ないよ。……戻るには」

「戻ることは、できるよ」

二つの声だけが、この空間の中で唯一、形を保っている。

「でも」

その言葉だけが、区切られている。

“間”がある。

その“間”だけが、はっきりと感じられる。他に基準がないのに、そこだけ分かる。

「順番を、間違えた」

「……何の」

その言葉は、理解できない。だが、どこかで知っている気もする。

思い出そうとして、何かが引っかかる。

『止めなければいけない』

(……あの時……?)

「忠告はあったはずだよ」

あった。

これは、確実に。

「……お前には関係ないだろ」

「そう思うなら、それでいい」

否定も、肯定もしない。

ただ、受け流す。

(……助かるのか)

ソウマの淡い期待は、すぐに崩れ去る。


「でも、少し見損なったよ」


その言葉だけが、ソウマに残る。

消えない。


何に対してかは、分からない。

だが、下げられた。

それだけは分かる。

「……そうかよ」

静寂が流れる。

「……行く」

そう言った。

「最後に」

声が、応じる。


「君はまだ、“外側”にいるということを、伝えておこう」


「……」

理解はできない。

視界が、形を持ち始める。

音が、戻る。

感覚が、戻る。

「……っ!はぁ……」

呼吸が、戻る。

遅れて、苦しさが来る。

さっきまでの“何もない”状態が、薄くソウマに残っている。


振り返る。


当たり前のように、道には誰もいなかった。

最初から、いない。

「……」

それでも、あの声だけが、あの一言がソウマの頭の奥に残る。


『見損なった』


消えない。

ソウマの頭に、刻み込まれている。

「……行くか」

(外側……?)

そう呟いてから、またソウマは歩き出した。


ーーザッ。


今、絶望の中にある場所に向かって。

[お知らせ]

レビューを一件いただきました……!。拝読いたしました。本当にありがとうございます。

作者の書き方の癖や構造にまで触れていただけたこと、とても嬉しく思っています。


停止能力が最近少ないと感じている方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。

本作の根幹ですので、今後もしっかりと描いていきます。


伏線については、いずれ分かる形になるはずです。


Shiningstar様、改めて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

これからもぜひ、生存録をお楽しみください。

[更新について]

今回の投稿が遅れた理由は、作者が体調を崩しており、創作力が働かなくなったことが原因です。本当に申し訳ございませんでした。

[内容について]

今回も、文字化けを出しました。

同じく意味を持つようになっています。

変換メーカーのURLを貼っておきますので、変換してみてはいかがでしょうか。

文字化けテスター

https://tools.m-bsys.com/dev_tools/char_corruption.php

〈シリウスの謎〉

シリウスの和名を調べてみてください。

[今回の小ネタ]

さて、今回出てきた「国道157号」ですが、「国道157号」とは、

岐阜県から石川県にかけての国道で、「落ちたら死ぬ!!」の看板があります。

断崖絶壁、未整備の道路、洗い越しが存在する、文字通りの「酷道」です。

[最後に]

これからも体調管理を気をつけながら、出来る限り早めに投稿していきたいと思っております。

では、また次回。

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