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「死ぬな」

三日ぶりの更新です。

「——ガァァァァッ!!」

空気が震え、地面が揺れる。

「っ……!」

リリアが反射的に風を展開する。

「来るわ!」

次の瞬間。


地面が、弾けた。

ラドックの姿が、一瞬で消える。

(速い——!)

ソウマの目が細まる。

直後。

「右よ!」

リリアが叫ぶと同時に、踏み込む。


ーーギィンッ!!

重い衝撃。

見えない斧が、空気ごと叩き割る。

だが。


その一撃は、風によってわずかに逸らされる。

「……っ、重い……!」

リリアの腕が軋む。

ただの魔獣ではない。

力が、異常なほど強い。

「リリア、距離取れ!」

ソウマが叫ぶ。

「でも——!」

「大丈夫だ!」

リリアは不安そうな顔をしながらも、距離を置いた。


その瞬間。

ラドックが、再び踏み込む。

一直線に。

狙いはーーリリア。

(狙いが……はっきりしてる)

ただの暴走ではない。

だが、理性があるわけでもない。

“壊れたまま動いている”。

そんな様子だった。


「——来るぞ!」

ソウマが前に出る。

光を収束させ、形にする。

「ルクスレイド!」

振り抜く。


ーーバチィッ!!


衝突。

確かな手応え。

だがーー


「硬っ……!」

弾かれる。

なおもラドックは止まらない。

そのまま斧が振り抜かれる。

「くっ……!」

ソウマは無理やり身体を捻り、回避する。

風圧だけで、頬が裂ける。

血が流れ出す。

(まともに食らえば終わるな)

間違いなく、即死級。


「ゼルガリア!」

リリアの風が追いかける。

空間を削るように、圧縮された風の刃が飛ぶ。

ーーだが。


「……っ!なんで……!?」

当たらない。

ラドックは、まるで“感覚で”避けている。

視界ではない。

気配でもない。

リリアの声が揺れる。

「見えてるの……!?」

いや。

あれはーー


(……感じてる)

ソウマは確信する。

理性は壊れている。

だが、“戦うための本能”だけが異常に強化されている。

させられている。

「厄介だな……!」

ソウマはラドックを睨む。


(でも——)

目を細める。

“さっき”を思い出す。

あの一瞬。

確かに、“戻った”。

「リリア!」

「なに!?」

「一瞬でいい!」

ソウマが叫ぶ。

「あいつを止められるか!?」

「……無茶言わないで!」

「頼む!」

「出来ないわよ!」

「……頼む」

「……」

「あいつは、俺に死ぬなって言ったんだ。弱いからって。でも、今なら分かるよ。ただ、心配だったんだって。優しさゆえの言葉だって、本心から信じられないでいたんだろうな。きっとそうだ」

「あいつがあんなふうになったことを、俺はまだ信じられない。信じたくない。人の心配ができるぐらい、強かったのに。俺は、あいつに生きろと言われた。俺は、その言葉をあいつに返したい。お前も生きるんだ、と。その力がなくても、俺はあいつを、ラドックを助けたい!」

一瞬、沈黙が流れる。

そしてーー


「……いいわ。分かった!」

リリアの目が変わる。

覚悟が宿る。

「三秒だけだからね!」

「十分過ぎる!サンキュー!」

即答だった。

その言葉に、迷いはない。

ラドックが、再び動く。


地面が弾ける。

来る。

今度はーー

一直線に、ソウマへ。

(来い)

構える。

呼吸を落とす。

全神経を集中させる。

「——シルヴァファリオンディア!」

リリアの風が、収束する。

極限まで圧縮された風がーー

一点に叩き込まれる。


——ギィィィン!!


空間が軋む。

ラドックの動きがほんのわずかに鈍る。

「っ……止まれ……!」

リリアの腕が震える。

血が滲む。

ラドックの動きが、ふっと止まった。

「……一秒!」


(十分だ)

ソウマが踏み込む。

距離を詰める。

ラドックの目の前へ。

そしてーー見据える。

その顔を。

「……ラドック」

呼びかける。

返事はない。

だが。

ほんの一瞬。


その濁った瞳がーー揺れた。

「……ぁ……」

まただ。

かすかな、声。

「……す……」

言葉にならない。

それでも、確かに何かを伝えようとしている。

「……二秒!」

限界が近い。

リリアの声が震える。

(……やっぱり)

ソウマは、確信する。

「……まだ、いるんだな」

小さく呟く。


「お前も、生きろ。」


その瞬間。

ラドックの口が、わずかに開く。


「……ソウ……」


ーー届きかけた。

だが。


「——ガァァァァッ!!」

咆哮が、すべてを塗り潰す。


()()()()()()()()()()


「……っ!」

風が弾ける。

リリアの魔法が、破られる。

「ソウマ!!」

リリアが、魔法を放つ。

ーーもう遅い。

ラドックの斧が、振り下ろされる。

至近距離。

回避不能。

(……間に合わない)

そう判断した、その瞬間。

ソウマはーー


動かなかった。

ただ、目の前の存在を見据えていた。


ーー世界が止まる。

構造線の世界が映る。


「……そうか」

小さく、呟く。

「そういうことかよ」

何かを、理解した声だった。

光を、手に集める。


ーー斧が、落ちる。

だが。

「フラルクス!」

強い閃光が走る。

直後。


ーードゴォン!!


ソウマと少し離れた位置の地面が砕ける。

衝撃波が周囲の空気を吹き飛ばす。


「っ……!」

リリアは思わず距離を取る。

(今の……避けた……?)

ありえないほど近い距離。

ありえないほど速い速度。

だがーー

ソウマは、生きていた。


「ソウマ!」

「大丈夫だ」

短く返す。

その声は、やけに落ち着いていた。

「……まだ、間に合う」

小さく呟く。

その視線は——

目の前のラドックから、外れていない。


(……そう、見てるの?)

リリアは気づく。

今のラドックを“敵”としてではなく、“誰か”として、見ている。

ソウマは黙って構える。


ラドックが、再び動く。

踏み込み。

振り上げ。

叩きつけ。

単純な動き。

だが——

速い。

重い。

正確すぎる。

「っ——!」

ソウマが踏み込む。

真正面から。

「ルクスレイド!」

光を叩きつける。


——バチィン!!


だが。

「……まだ足りないのかよ」

また弾かれた。

ラドックは止まらない。

そのまま、二撃目。

横薙ぎが迫る。

(来る——)

ソウマは体を沈め、回避する。

そのまま足を払うように思いっきり蹴りを入れる。


——ゴッ。


鈍い感触。

「……っ」

効いていない。

体勢は崩れない。

むしろ——


「——ガァッ!」

即座に反撃。

拳が飛ぶ。

「っ!」

咄嗟に腕で受ける。


——バキィッ。


骨が砕かれた音がした。

(重すぎる……!)

そのまま後方へ弾かれ、地面を滑る。

「ソウマ!」

リリアが風を飛ばす。

追撃を防ぐ。

その隙に、距離を取る。


「……はぁ……」

息を吐く。

右腕の感覚がない。

(まともにやり合うのは自殺行為だな)

分かっていたことだ。

だがーー


「それでも」

視線を上げる。

ラドックを見る。

「……やるしかないだろうよ」

小さく呟く。

「……ほんと、バカなんだから」

リリアが苦く笑う。

だが、その目は逸らしていない。

「付き合うわよ」

短く言う。

「一人でやったら、死ぬだろうし」

「辛辣だな」

「事実でしょ」

それだけで、十分だった。


ラドックが、再び構える。

今度は——

ゆっくりと。

一歩ずつ、距離を詰めてくる。

(……来る)

ソウマは構えを低くする。

「リリア」

「何?」

「さっきと同じこと、いけるか?」

「……数秒だけなら」

「助かる」

ラドックが、踏み込む。

爆発的な加速。

来る。

ーーその瞬間。


「——今!!」

風が、収束する。

圧縮された力が、ラドックを包み込む。


ーーギィィィィン!!


空間が悲鳴を上げる。

「っ……止まれ……!」

リリアの声が震える。

血が、指先から滴る。

(限界か……!)

それでも——


止まっている。

ほんの一瞬。

だが、確かに。

「……行くぞ」

ソウマが踏み込む。


一直線に、迷いなく。

ラドックの目の前へ。

「……ラドック」

呼ぶ。

今度はーー

返事を待つように。

沈黙が流れる。

だが。


「……ぁ……」


喉が、震える。

まただ。

確かに、“反応”している。

「聞こえてるんだろ」

一歩、近づく。

「……まだ、いるんだろ」

ラドックの瞳が、揺れる。

濁りの奥でーー


何かが、もがいている。


「……戻ってこい」

その言葉は、命令ではない。

ただの——願いだった。

「……二秒……!」

リリアの声が、限界を示す。

(まだ、届く——)

ソウマは歯を食いしばる。

「ラドック!」

強く呼ぶ。

その瞬間。


ラドックの口が、大きく開く。

「……ぉ……」

声。

今までよりも、はっきりと。

「……お……」

言葉になりかける。

「……一秒!!」

もう限界。

だがーー


届きかけている。

「言え!」

ソウマが叫ぶ。

「何でもいい、何か言え!!」

その瞬間。


ラドックの瞳に、光が宿る。

ほんの一瞬。


「……お……れ……は……」


——来た。

(届く——!)

だが。

次の瞬間。


——ビキィッ。

身体が、歪む。

筋肉が暴れ、骨が軋む。

理性を押し潰すように。


「——繝ゥ繝峨ャ繧ッ!!」

言葉にならない咆哮。

すべてが、壊れる。


「……っ!!」

風が弾ける。

拘束が、完全に破られる。

「下がれ!!」

ソウマが叫ぶ。

間に合わない。

ラドックの腕が、振り上げられる。

狙いは——リリア。

「——っ!」

反応が、遅れる。

(避けられない——)

その瞬間。


ソウマが、割り込む。

間に入る。

庇うように。

「ソウマ!?」

遅い。

もう、遅い。

振り下ろされる一撃。

避けられない。

だが——


「……見えた」

ソウマが、呟く。

その目が、わずかに細まる。

次の瞬間。


身体が、“そこから外れた”。

——ズレる。

斧が、空を切る。

「なっ……!?」

リリアの目が見開かれる。

(今の動き……)

ただの回避じゃない。

“位置”が、ずれた。

「……そういうことか」

ソウマが、低く呟く。

確信を得た声。

ラドックを見る。

「……お前もか」

その一言にーー


わずかな怒りが混じる。

(こいつ……)

ソウマは気づいた。

“あの敵”と同じだということに。

完全ではないがーー

“ズレている”。

だから、攻撃が通りにくい。

だから、異常に強い。

「……最悪だな」

息を吐く。

だが、目は逸らさない。

「……でも」

構える。

光を収束させる。

「やることは、変わらない」

ラドックが、咆哮する。


ソウマは再び、足を踏み込む。

止まらない。

止められない。

「来い」

ソウマが呟く。

その目はーー

覚悟を決めていた。


ラドックが、踏み込む。

地面が砕ける。

一直線。

迷いのない突進。

呼吸を落とす。

すべてを一点に集中させる。

(……合わせる)

“空間のズレ”を。

あの時の感覚を思い出す。

空間の重なり。


交差する、一瞬。

(そこだ——)

ラドックの斧が、振り上げられる。


その軌道。

その重さ。

その速度。

すべてをーー

“感じる”。

「——今だ」

踏み込む。

同時に、わずかに“ズラす”。


自分の位置を。

存在を。


——ギィン。


斧が、空を切る。

「ルクスレイド!」

光を叩き込む。

——バチィィッ!!

直撃する。

今までで一番、深い。

「……効いてるな」


ラドックの身体が、大きく揺れる。

だが、倒れない。


「——繧ス繧ヲ繝槭ぃ繧。!!」

また言葉にならない咆哮。

ラドックの拳が飛ぶ。

ソウマは避けられなかった。

「っ——!」

「アルゼリア!」

見えない壁が出来る。

その壁越しに、ラドックの目を真っ直ぐ見る。

「……ラドック」

呼ぶ。

一歩、近づく。

「……まだ、いるんだろ」

「……ぁ……」

喉が、震える。

まただ。

確かに、反応している。

「戻ってこい」

静かに言う。

「……お前のままで、戻ってこい」

願い。

ただの、言葉。

その瞬間。


ラドックの瞳が、大きく揺れる。

濁りの奥でーー


光が、灯る。


「……そ……」

声。

今までで一番、はっきりと。

「……ソ……」

ソウマの目が、見開かれる。

「……あ……」

ラドックの口が、震える。

「……あ……ぶ……」

言葉になる。

崩れながらも。

必死に。


「……あぶ……な……」

——危ない。

その意味を理解した瞬間。

ソウマの背筋が、凍る。


「下がれ!!」

叫ぶ。

だがーー遅い。

ラドックの身体が、限界を超えて膨張する。

筋肉が裂ける。

骨が軋む。

「——縺ォ縺偵m!!」

またもや言葉にならない咆哮。

理性が、完全に消し飛ぶ。

そのままーー


斧が、振り下ろされる。

狙いは——ソウマ。

至近距離。

回避不能。

(……そうか)

このタイミングで理解した。

今の言葉。

「危ない」はーー

自分に向けられたものじゃない。

(俺を、守ろうとして……)

軽い呆れで、ソウマは笑みをこぼす。

「……最後まで、お前は」

呟く。

その目に、迷いはなかった。


光を収束させる。

極限まで圧縮。

棒全体に魔力を込める。

「……分かってる」

小さく、自分に答える。

「だから——」

踏み込む。

斧の軌道へ。

逃げない。

避けない。

真正面から。

「終わらせる」


「ルクスレイド!」

光が、収束する。

細く、鋭く。

一直線に。

振り抜く。


——バチィィィィン!!


すべてを貫いた。

ラドックは地面に膝をついた。

斧が、止まる。

空間が、静止する。

そしてーー


「……あ……」

ラドックの瞳に、光が戻る。

()()()()()()()()()()

「……ソウマ……」

ラドックはソウマの名前を呼んだ。

「……すまん……」

短く。

それだけだった。

ソウマは、何も言わない。

ただ、見ていた。

その顔を。

その表情を。

「……ありがとう」

ラドックが、笑う。

ーー前と、同じ顔で。

ほんのわずかに、息を吸う音がした。

次の瞬間。


目の光が、抜ける。

ラドックの身体が、崩れ、地面に倒れる。


——ドサッ。


動かない。

完全に、沈黙する。

風が、吹く。

森が、揺れる。

何事もなかったかのように。

「……」

ソウマは、動かない。

ただ、立っている。

しばらくして。

「……終わったの……?」

リリアの声が、震える。

ソウマは、答えない。

ゆっくりと、視線を落とす。

そこにあるのはーー


もう動かない身体。


「……ああ」

短く、答える。

それだけだった。

リリアが、一歩近づく。

そして。


崩れるように、その場に膝をついた。

「……うそ……」

声が、震える。

「……こんなの……」

手が、震える。

目の前の現実を、受け止めきれないでいた。

「……助けられたんじゃないの……?」

小さく、呟く。

「さっき……戻ってきたじゃない……」

分かっている。

それでもーー

言わずにはいられなかった。

「……なんでよ……」

涙が、落ちる。

「なんで、間に合わないのよ……!」

声が、崩れる。

森に響く。

ソウマは、何も言わない。

ただーー

拳を、強く握る。

歯を、食いしばる。

握った拳から、食いしばった歯から、血が流れ出ていた。

「……」

言葉が、出ない。

代わりに、小さく呟く。

「……間に合わなかった」

それだけだった。

風が、吹く。

木々が揺れる。

何も変わらない。

何も戻らない。

ただ一つ。

確かなことだけが、残る。

ーーもう、ラドックは戻らない。


ソウマは、ゆっくりと振り返る。

森の奥を見る。

あの“ズレた存在”。

そしてーー


ラドックを、こうしたもの。

「……終わってないな」

低く言う。

その目に、明確な怒りが宿る。

リリアは、顔を上げない。

涙は、止まらない。

それでもーー


「……行くの?」

かすれた声で、聞く。

ソウマは、少しだけ間を置いて。

「……ああ」

と答えた。

短く。

「……そう」

リリアが、立ち上がる。

震える手で、涙を拭う。

「……なら」

顔を上げる。

その目には、まだ涙が残っている。

だがーー


それ以上に、強い意志があった。


「……終わらせましょう」

ソウマは、頷く。

二人は並んで、歩き出す。

静まり返った森の奥を抜けて。

何もかもを奪った“何か”を追って。

風が、背中を押す。

それでも。

その足取りはーー重いままだった。

三日ぶりの更新となってしまいました。

遅れてしまい申し訳ありません。

文字化けはあえてです。

直すと意味を持つようになっています。

直してみてはいかがでしょうか。

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