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Realive  作者: ichita
7/20

7話:人気者も腹は減る

関西人、ペー君の部屋では俊とぺー君がにっこりとお出迎えしてくる。やんちゃな八重歯はトレードマークなのか。

続いてタクヤ、よーすけ、俺、と入っていった。

「おじゃましまーす」

「おう!ゆっくりしーや!」

なんだかみんなで順番に挨拶をして入っていくだけで、 友達の家に来た感覚だ…。

俊は俺たちを迎えると、本当は興味ないと言わんばかりに、鏡へ向かって笑顔の練習やポージングまでとっている。…見ているこっちが恥ずかしくなるんだけど。


そして、ぺー君の控室も俺の控室と同じ。別に変わったところなどない。…のだが、明らかにこの空間にに使わない物がある。

「おい、なんでこれがあるんだ?元々控室にあったのか?」

「おっと!これはやな、関西人…いや、俺の趣味やねんけどな、普段から持ち歩いてんねん。控室に入ったとき自分の鞄があった時はめっちゃほっとしたわー」


タクヤが明らかに引いた顔でそれを見る。

「ソースと、マヨネーズ…?」

ぴくりと動いた眉を俺は見逃さなかった。ぐいっとよーすけが机にある調味料に興味を示すと、目がキラキラと輝く。

「ね、これ俺も使っていい?めっちゃおいしそう!」

「もちろんやで!憧れの配信者さんに使ってもらえるならなんぼでも用意したるわ。あースマホが使えたら、ペー君のおすすめクッキングとかできたんやけどな」




―「で、みんな。この施設について分かった事を共有しよう。何か脱出とかの手掛かりになるかもしれない」


まず皆で共有して分かったこと。各控室には水、弁当、布団が用意されており、スマホの電源は一切入らず、時計もない。あるとすれば、デジタル式のタイマー。爆発したりしそうな物は無かった。…この首輪以外。

トイレ周辺をタクヤが探索したようだが、窓のようなものは見当たらず、脱出方法は見つからなかった。


「ライフラインには困らへんってわけやな」

ぺー君が、ソースとマヨネーズのかかった海苔弁の海苔だけをつまみながら言った。見てるだけでどんな味がするのか未知だが、色合いが少しおいしそうに見えてしまい、俺の食べる弁当が気持ちばかり、味気なく感じた。

「まあ、シャワーくらいつけて欲しいよね。こっちは“退場~~”とか言われて、怖いの見せられてんだからさぁ」

よーすけは割り箸を割ろうとして失敗したようで、へらへらと笑っていた。それがツボに入ったのか、一人で笑っている。そしてペー君から借りたマヨネーズを海苔の上にたっぷりとかけて、海苔ご飯マヨネーズという食べ物を完成させ、いい匂いをさせ失敗した割りばしで美味しそうに頬張った。


先ほどまで番組で血が流れていたことが嘘のように、穏やかな日常のような光景がそこにはあった。



「それでさぁ」

俊が海苔とご飯を丁寧な比率で持ち上げ、小さな一口を作って口に運びながら言った。もちろん、そこにはソースもマヨネーズもない。

「今後の脱落者の決め方についてなんだけど……皆はどう思う?視聴者に決めさせる方法」


急な”脱落者”という単語に一同はぴりっとする。

しばらくは、もぐもぐと弁当を食べる音だけが響いた。


「俺は、正直誰も脱落して欲しくない」

俺は拳を握りながら言った。

よーすけは変に高い声で反応する。

「そんなの、できんの~~~?」

「分からない。だから、ずっと考えてるんだけど」

俺はまだぼんやりした頭を捻りながら、弁当を食べ進めていた。


「せや、せやからな?思てん。俊がええ案あるって言うとった」

「うん、というか……そのほうがいいかな~って思っただけなんだけど、」

タクヤは箸を止めて、俊に視線を向けた。何かを企んでいる、そんな目で。


「この中で、自殺した人っている?」


その瞬間、空気が凍りついたように、しん……と静まり返った。


「おっと、早くも楽屋裏で討論開始ってことかいな!俺はちゃうで!少しー、お、思い出してきてるのは否定せーへんけど……」

弁当の好きな具だけを食べて、残りを点々と残したまま、よーすけは机に突っ伏した。

「今、自分たちの手札を出せってこと? それって……」

よーすけの言葉に被せるように、タクヤが割り込む。

「放映中じゃなく、今みんなで脱落者を決めろと言っているようにも聞こえるが」

俺は食べ終えた弁当を置いて、腹をさすりながら言った。

「それじゃあ効率は良さそうだけどさ、脱落者を決めるのは視聴者だろ?ここで話し合っても意味ないんじゃねえ?」

「まあ、少なくとも、裏の顔を見せたくない人がいれば暴いて、討論には有利になりそうってかぁ?」

さっきまで突っ伏していたよーすけが、床にごろんと寝転がった。


「わかった!八百長ってやつや!ノンフィクション言うてんのに、実は台本がありました~、て!ん、ちょっと違うんか。いや、脱落者をここで決めて、それっぽく話し合って、本番にどーん、っちゅーこっちゃな?」


この後も自殺だと名乗り出るものはいなかった。


「……けど、この感じだと、ここに“自殺した”って発言する奴はいなさそうだな。視聴者にランダムで選ばれるか、本当に俺らが戦うか。…まあ、本音を言えば俺はみんなを助けたい」

少しの希望は持っていた。大事なクラスメイトは失ってしまったが、まだなんとかなる。

きっと、何かの抜け穴とかゲームが急に終わるとか、あるんじゃないか、って。


「俺はね」

俊が襟足を指でいじりながら言った。

「この世にいたくないって思って、苦しくて死んじゃったなら、生かしておいても可哀想かなって思っただけだよ。だから提案した。別に、視聴者を避けてるわけじゃないけどさ。無作為に自分が脱落していいって、思ってんの?」


“脱落”――あの残虐な光景が、皆の頭をよぎる。


「俺もやけどな、視聴者に人気稼がな落とされんねん。ぶっちゃけな、俺の中では俊とジュンは有利や。あと、配信者として知ってる奴がおったら、よーすけも。俺とタクヤさんはなんとかして、視聴者の信頼を勝ち取らなあかんねんで。知名度が無いし、お笑いコンビでも無いからなー!」

ぺー君の指摘にタクヤは冷静に弁当を食べ終えて、わざと音をたてるように箸を置きながら答えた。

「お前の言うとおりだ。それは認める。だが、人気者のやつらが本番で化けの皮が剥がれたら?」


皆の視線が泳ぐ。


「面白い展開になるんじゃない?俺、そういうの好きかも。視聴率、取れそうー。スパチャいくら貰える?」

他人事のように、よーすけは転がりながら言う。

「…ったく。結局この飯の時間は無駄だった、ということか?関西弁」

タクヤは冷たく言った。先ほど言われた自分があまり人気ない事を気にしているようだ。こいつは思っている事を表情に出さないが、俺にはよくわかる。ちょっと拗ねてるのが面白い。

「ぺー君や!そろそろ覚えとき!んまぁ、探り合いになってしもうたけど、自殺者がおらんかったって情報だけはゲットや!」

「本当かは分からないけどねえ~。人間って言う事全てが本当か嘘か、わからないでしょ?」

床に転がっていたよーすけが、俺の近くまで来て、床から上目で見上げる。ポケットから落ちてしまったうさぎのポーチを急いで回収しながら見つめてきて、そのへらっとした表情は、何かを隠しているような、誤魔化しているような、そんな気がした。寝転んだ際にワイシャツの中がチラッと見えてしまった。

なんだ、傷?痣?鎖骨の下辺りに痛々しいものが見えてしまった。それに気づいたのかよーすけはうつ伏せで足をふらふらと揺らす。


「ご馳走様。俺はひと足先に休む。お前らも、無駄な時間を使うくらいなら、休んだほうがいいと思うけど」

タクヤはさっさと立ち上がった。その言葉に、よーすけも立ち上がって一つ伸びをした。

「んじゃ、俺もー。おやすみ。疑い合ってんのは、視聴者に魅せてなんぼだよ?舞台裏でサービスするのは無駄じゃん?」

ゆっくり首を傾けるその動作が、やけに不気味だった。俺ももう、これ以上話すことはなかった。何より、少しずつ思い出しつつも、俺の脳は拒否して記憶を引き出そうとしない。正直、自殺したかどうかすら分からない。


「じゃ、俺も戻るわ。……脱落者なんて出したくないけどさ、お前らと飯食えて、少しでも話せて良かったよ。おやすみ」

俺は素直な気持ちを言って、その場を後にした。それは本心だった。

同じクラスメート、知らない生徒、それぞれと知り合ったからには、仲良くして友達になりたい。それが普通の思いなんじゃないかって。

そして皆んなが控室から出ていくと、集まっていた控室から大きい声が聞こえた。


「お前ら、弁当のゴミくらい片付けろやドアホーーーーーー!!」


悪戯に笑いを堪えながら各自走って逃げていく。


控室に戻ると、そこには先ほどと同じ殺風景な光景があった。

さて、仮眠の続きをしよう。布団に転がった今だけは、普通の感覚に戻れる気がした。

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