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Realive  作者: ichita
14/20

14話:狂気の正体

出演者の足は操られているかのように、自分の運命を変える拘束椅子に迷いなく腰をかける。

あんな光景を何度も見せられたのに、体で覚えさせられてしまったのだろう。俺もその一人だから。


最後にスタジオへ足を踏み入れた俺以外は既に座っていて、ペー君は机へ視線を落とし、タクヤは静かに目を瞑っり、よーすけはぼんやりとモニターを眺めたりしている。

俺が座った瞬間に真ん中のモニターからMCが表示された。


はぁ…、また、始まる。


MCが言う。

「さぁ、皆さんお待たせしました!いよいよ残り3試合!ここからは後半戦、ラストスパート!出演者の皆さん、今日も素晴らしいリアルを見せてくださいね!それでは、第4回戦――スタート☆スパチャのご準備もよろしくお願いします!」



視聴者コメントがいつも通りモニターに流れる。

『待ってた!』

『イケメンは最後まで見たい><』

『よーすけ顔やばない?』

『タクヤも怪しい…』

『ペー君は何考えてるんやろw』


俺は疲労で頭が回らない。

目の前のセットすら、ぼやけて見えてくる。スタジオの光も、モニターの映像も、すべてが夢か現実か曖昧で――今自分がどこに座っているのかさえ、わからなくなりそうだった。


でも、タイマーは無情に動き出す。


そして椅子に縛られたままのよーすけが、微かに口元でリズムを刻んでいる。……声にならない歌を、どこかのBGMに合わせているようだった。どこにも音は流れていないのに。

あぁ、こいつは精神でも狂ったのか。


ぺー君が最初に口論の入り口を開いた。

「あのさ、まず討論っちゅーか…これは単なる心配やねんけど。…よーすけ、アンタ顔、大丈夫か?…口が、縫い縫いされてるやないか」

カメラがぺー君からよーすけへと映される。遠目からアップにされると、その痛々しい目、頬、そして唇の糸と傷が大きく映し出される。

俺はそのモニターからそっと視線をそらした。ぺー君はよーすけの返答を待ち、モニターではなくじっと椅子に拘束されているよーすけを見つめている。タクヤはモニターをじっと見ていた。

「あぁこれ?なに、俺今映ってるじゃん。やほー!みんな!今日は紹介できるぬいぐるみは無いけど……⚪︎⚪︎をやってみた~!って奴?」

痛々しい口端をあげてへらっと笑ってみせる。糸で開かない箇所が引き攣っている。 皮膚が破れそうで、見ていられない。


視聴者コメント

『こわいこわいこわいこわい』

『最初からおかしかったよね?』

『ぐっろ』

『最高やん 好き』

『ぺー君つっこんで来たね』


「わわ、い、痛くないんか?無理すんなよ?」

ぺー君が心配する中、俺は声が出せなかった。よーすけは引き攣った顔で続ける。

「"俺が人形になってみます企画"しようとしたんだけど、うまく行かなくてねー。簡単に縫えなかったよ、結構痛いんだわーこれ。今から続きでもしようかな、配信したい。あ、でもスマホ使えなかったわー!うけるー」

ヘラヘラと笑うも、目は笑っていない。しかし狂っている視聴者が多いのか、コメントでは好き嫌いと2つに分かれている。

モニターはアップのまま映し続けると視聴者が顔以外の異変にも気付き始めた。


『ん-無理、こいつ落ちて』

『顔は自傷?興奮してきたww』

『俺は好きだなー』

『痣増えてね』


「それは、自分で……やったのか?」

モニターのコメントにはっとして、俺は絞り出した。よーすけはゆっくりと俺の方に首をゆっくり傾けて目を細めた。 今まで通り、どこか虚ろで吸い込まれそうな瞳。

「……へへ、どうだと思う?」

「そんなん自分傷つけてたらほんまに視聴者投票の前に脱落してまうで?死んだ後に自分を殺す気やないか。顔も、ボロボロやで……」


俺とぺー君は心配しているが、モニターだけを見つめていた、横にいる背の高い男だけが心配もせず発言もしていない。

その男がやっと口を開いた。

「…俺は、よーすけを脱落させた方がいいと思う」


突然の発言にコメントが多くなる。


『え』

『ついに喋った』

『なんでやねん』

『もう討論終わり?』



「タクヤ、なんで…?」


タクヤは俺の方を向かず、その目はモニター釘付けだ。

「…なんでって、そろそろいいんじゃないかなって。それだけだけど」

モニターにうつるよーすけは、動きにくそうだ。拘束での動き辛さではない、もう動きがぎこちない変にカタカタ、と首が動いてる。

ぺー君が口を開く。

「…あのな、ごめんな、俺…多分やねんけど想像ついてんねん。その増えていってる痣とか…口を縫うやとか…、もしかしてやけどな?…やったんは、タクヤさんなんちゃうん」


その瞬間にガタッと椅子が動く程にタクヤがぺー君を視界にとらえる。流石にビビったのか、ペー君は体がびくっとして首だけは少し引いていた。

「なななななんや!だ、だってアンタ、見かけによらずスマホに可愛いマスコットつけとったし…、休憩時間控室の廊下うろうろしたり、不審やったから、そうなんかなーって言うただけや!」

ぺー君の言葉が俺の疑いを、ますます確信へと変えていった。

「タクヤ……、俺さ、お前といい友達だったし、疑いたくない。でも、他の控室覗いちゃった時…よーすけの写真とか見えちゃって。ぬいぐるみも、めちゃくちゃ並べてあって。本人なら自分の写真飾らないだろ?それにペー君の部屋はその後弁当食うから行ったけど何もなかった。んで、スマホについてるマスコットもよーすけと同じだ。あれ…お前の控室、だったんだよな…?」

タクヤの鋭い視線が俺に刺さる。

「…見たのか。お前らを呼びに行ってたから、鍵をかけ忘れた。最悪だな」

否定をしない。

という事は、そういう事か。


俺は拘束具で動く限り身を乗り出すが、その距離は縮まるほどでもない。

「お前、ファンだったのか?クラスでよく話してたし仲良かったけど、俺そんなこと知らなかったぞ!」

「そりゃ、隠してたから」

冷静な声は変わらない。

「はは、俺も驚いたよねー。俺の事知ってる人はいると思ったけど、まさかこんな“コア”なファンがいるなんてねぇ」

よーすけは自分に痣が付けられたり口を縫われた事はどうも思っていないのか、どこか他人事だ。

「なら、危険人物としてタクヤさんを脱落すべきちゃうんか?」

前かがみで眉をひそめたぺー君がいう。正論だ、俺でもそうするだろう。…友達じゃなかったら。

タクヤはぺー君に言い返す。

「いや、よーすけを先に脱落させるべきだ。本人から聞くといい」

顎で視線を壊れかけのよーすけへを示す。


「そうだね、俺にしてよ。俺の大ファンだっていうタクヤが望んで、画面の向こうのファン達、視聴者もそれを望んで見たいなら…俺はみんなの娯楽になってあげるよ」

「はぁ?本当にそれでいいのかよ!?」

再び、がたっと椅子が揺れる。立ち上がりたくても立ち上がれない。

どいつもこいつも、助かるどころか自滅していくじゃねえか!!


「良いって良いってー。配信者は喜ばせてなんぼでしょ?ん~じゃ、はーい。俊の真似になっちゃうけど。俺、暴露タイムしまーす。みんなスパチャの準備、いい?ある程度投げてくれたら、とっておきの言っちゃうからー」

綺麗とはお世辞にも言えない引き攣った顔でへらっと笑う。よーすけは首を左右に振るも、それはスマホ画面ではないため、うさぎのフィルターとかそんな可愛いものはない。

癖なんだろうが、前髪が揺れて、視聴者は魅了された様にものすごいコメントと少額ではあるがスパチャが投げられていく。

俊の時とはまた別の盛り上がり方だ。

これが配信者の実力なのか。


『はいスパチャ!話しきかせて』

『寧ろ前より今の見た目好き』

『中毒性ある』

『いやぁ私は引く』


タクヤはモニターに映るよーすけを見たま口を閉ざした。その目は全てを知っていて、これから起こる事も、全てタクヤが思った通りによーすけを動かしているようにも見える。

そのままぺー君と俺は大人しくよーすけの言葉を待つ。


「実はー、飛び降り自殺でーす」

首を揺らしながら、ちょろっと舌を出し、映像写りを良くしようとしている。 痣も縫い目もある顔なんて、映りは良くないのだが元々ここの視聴者は頭がおかしい。

「自殺、…?」

「あーね、そうそう。俺、結構視聴者多かったからさ。なんつーかそのー。"ストーカー"居たんだわ。盗撮されたりね、ゴミが漁られてたりね。最初はぬいぐるみ欲しさかと思ったけど、俺のコレクションには一切手出されてねぇの。…粘着ファンかな?郵便ポストに色んなぬいぐるみ、それに混ざってゴミとか」


ストーカー、の単語に俺は視線を落とす。

タクヤの控室に並べていた写真、一瞬見ただけだが衝撃的で脳に残っている。売り物とかじゃない、多分盗撮されたアングルのもの。

つまり、その犯人は俺のクラスメイトでよく遊んでて、信頼していた、こいつ、なのか?

「…タクヤ、お前、」

「俺は」

食い気味に入ってくる。


「確かにファンだ。認める。今はよーすけの願いを叶えてやりたい。これは本当の事。黙っていて悪い」

淡々と事実を述べては当たり前のように俺に謝罪をするタクヤ。

「ちゅー事は…よーすけは、そのよう分からんぬいぐるみ願望で自殺したん?」

ペー君は目をぱちくりするも、よーすけはだるくなってきたのか動く限りで首をぐるんと回しながら否定した。

「そうではあるけど、そのストーカーがね、もっとエスカレートしたんだわ。家の中に侵入、多分合鍵作られてたし、寝てる合間の徘徊、盗聴器、盗撮、も、ね、ぜーんぶ。ぜーんぶ。結構参っちゃってさー。俺、コレクションのぬいぐるみに囲まれて暫く考えたわけよ。今後どーしよっかなって。これが続くのかなーって」

間を開けて首をゆらゆら揺らす。

「で、決めた。あはっ。俺も最後に死んでぬいぐるみになろーと思って。へへ、んで飛び降りたー。ぷっははは!!!おっもしれえ!ぬいぐるみ配信者、本人がぬいぐるみになる!ってニュース…。沢山並べられたぬいぐるみの中に俺が一緒に座ってる…。いい画だよ……へへ…」


変な笑い声になったと思えば変に言葉が遅くなる。こっちの調子がおかしくなりそうだ。

そのへらへらとした明るい声が、乾いた空気のスタジオに響く。

飛び降りて”人形”って、俺には笑えない冗談すぎる。


「んでも…、その時さ…。飛び降り方がタメだったのかな……体が痛くて痛くて……ずっと痛くて……、視界がぼんやりとして、」


「死に切れてなかったから、俺が殺した」


被せるように、隣から低い声がした。

遅い声に対してすっぱりと、言い切った。


「え…っ?」

よーすけは驚いて素で振り返った。


俺は日常離れした出来事に唾を飲み込んで聞いていた。


「俺、あの後、意識薄れていったから…、自殺だと思ってたんだけど……。思い出した記憶もそこまでで…」

初めて見るよーすけの驚いた顔。タクヤと顔を合わせるその表情は怯えていた。


視聴者コメントはよりいっそ盛り上がる。

『殺人犯きたーーーーーw』

『この番組、刑務所なのか』

『もうこれバッドエンド』

『暴露ありがとう しゅきスパチャ』

『脱落者どう選ぶ?w』

『いやこれどっち選ぶマジで』



「お前、死に切れてなかった、苦しそうだった。だから、俺が楽にしてやった。…まぁ、事実としたらお前は他殺になるわけだけど。それで俺はその隣で、お前を刺した血が付いたナイフで、自殺した。…血が混ざった様な気がして。勿論、録画済み。…その動画、今どうなってんだろうな」

タクヤはその情景を頭で描いているようで、天井を見つめる。


「なんで…お前まで死ぬんだよ、せめて生きて罪を償えばよかったのに」

俺はなんとか声をかける。

「画面越しに追いかけていた奴が目の前に居るとしたら?高額をかけても、手が届かなかった、そんな奴がそこに居るとしたら?」

「…」

「俺は隣で命尽きたことには、後悔してないけど。血が混ざって一つになれたかもしれない」


スタジオ内のタイマーが刻々とタイムリミットへを導いている。


「あー……マジかよ、そこまでは聞いてなかったわ」

よーすけはその話を聞いて文字通り顔を引きつらせ、肩を落として視線を自分の体へと落とした。


「でも、あれはお前を守る為だった。お前は今だって、さっきだって、生きていた時だって…‥…」

「ああああ、あ~~~~っは。タクヤがぐるぐるしてる。やっぱバレてたんだよね、そうだよね、俺にずっと声誰かの声が聞こえてたから」



ぺー君と俺は二人の話に取り残され、顔を見合って首を傾げた。

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