第135話 中分け、パーマ、坊主、ポニーテール、最強、刑事さん。
もう2月に入りましたね。
皆が落ち着き、他人を理解しようと自己紹介が始まる。
因みに品川は黙々と忍が作った炒飯をベッドに溢さず、食事していた。
「え~じゃあ、自己紹介でもしよっか。俺は大阪市海道区出身の吹雪雅人や。訳あって今は、この二人と行動してる……以上やな」
吹雪の普通な自己紹介に、周りは何故か冷たい空気だった。
「え? 俺、なんかやった?」
「うわっ普通だなと思ってな」
そこに不快感を示しながら返答し、一切吹雪を見ない南雲だった。
「普通ってなんやねん! 自己紹介すんねんやったら普通の方がええやん! 何を期待してんねん! っていうか、こっち向けコラァ!」
「あぁ~ストレスで十円ハゲができる」
「テメェのは十万円分ハゲてるよ」
「おい、貴様等! みっともない争いは止めろ!」
ここへ雅が割って入り、仲介しようとしていた。その行為を見て、この人はしっかりとしているなと思っていた。
だが、そんな淡い期待はすぐに裏切られるのだった。
「忍様を差し置いて先に自己紹介して! 貴様、それでも奴隷か! そこに直れ、その首を落としてくれるわ!」
品川と同じく別方向で危ない人間だと一華は知
り、悟ってしまった。
そんなことはお構いなしに品川は炒飯を食い続けてる。
「もういいよ。そんなことでヒスになってさ、こっちがアホみたいに責められるって……もう反論しようないやん」
「当たり前だ。貴様は雇われた時点で自由があると思ったのか? 忍様の為に、過労死するまで働け!」
「……だとよ忍さんよ。俺、こんなにパワハラされたら辞職せなアカンやん。どうすんの?」
もう面倒となり、吹雪はヤル気なしに忍へ尋ねる。
「……」
当の本人は腕組みし、あぐらをかき、何か考える素振りをしていた。
「忍様が黙っていることはそういう事だ。どうだ? これで私が正しいと証明になっただろ!」
「……そう言えば、アンタ刑事さんやな? この会話見てて、どっちが悪いと思う?」
「どうなんだ!? 刑事さん!」
ここでどちらに比があるのかを尋ねられ、一華は激しく動揺する。
(そんなくだらない事で私を巻き込まないで!)
とは大きく声に出して言いたかったが、この二人は品川と同じく覇気使いである為、ここは刺激せずに大人の対応で接する。
「まあ、女の視点で言えば吹雪くんの態度に問題あると思います。無気力だし、何かあれば喧嘩を始める短気な所があります。多分、他の人に聞いても良い気持ちにはならないと思います」
一華から厳しい意見が出て、雅はここぞとばかりにドヤ顔で吹雪を煽る。
更に無気力となり、ふてくされる吹雪。
「だからと言って、貴方がボロカスに吹雪くんを罵る必要はないと思います。ここまで来ると差別となり、侮辱罪が成立してしまいますよ。えっと……」
「木元雅だ。神崎邸でメイド長兼忍様限定ボディーガードをしている者だ」
厳しい事を言われても堂々とした態度で淡々と返事をする雅。
「だったら雅さんは落ち着いてマナーよく人を導いたほうが……っというより、このメンバーのリーダーって誰なんですか?」
そんな問いに、品川と雅以外の吹雪と南雲が忍をジッと見ていた。
「貴方ですか! この人達を引っ張って行く人が何で黙りこくっているんですか!? 貴方がしっかりしてないから……人の話を聞いてます?」
このストレスを吐き出したのに対し、忍から何も返事はなく、それが気になった一華。
「……刑事さん、今何時ですか?」
「えっと、今八時ぐらいよ?」
「せやったら、コイツの質問受付は終了ですわ。コイツは時間厳守みたいな身体でして、こんな時間帯になると、こうやって寝てしまうんですわ。殴って起こそうと思ったら……」
試しに吹雪が忍の後頭部を目掛けて叩こうとした瞬間、突然と頬を目掛けた左ストレートが飛んできたのだ。
だが、吹雪は幸いにも難なく回避でき、心は一安心していた。
「まるでお爺ちゃんね」
「コイツ、爺さんみたいな性格しといて、まだ二十三ですからね……刑事さん?」
年上みたいな見た目をしておいて、中身は品川達と変わらないぐらいだった事に、一華は驚愕し動揺していた。
「さてと、怪我も治ったし。おーい! そこのボンクラ二人組でるぞ」
そこに品川が立ち上がり、吹雪から貰ったワインレッドのシャツを着用し、スラックスも灰色へと変更し、出掛けようとしていた。
「ちょっと待って! そんな身体で何処に行くの!? 貴方の身体は打撲程度じゃ……」
一華が品川を止めようとした瞬間、雅に腕を捕まれ、女では有り得ない腕力で座らせられる。
「おい貴様等、ここからは女子会だ。お前等みたいなチンカスは何処かで妄想しながら、悶々としていろ」
「はいはい。おい行くぞ」
「ったく、なんやねん。急に元気になったら出掛けるって……」
「黙って行くぞ。チンカス二号」
「って、なんで俺が二号やねん! ……いや、二号でも嫌やわ!」
「ほら黙って行く。No.1の俺様は早く寝たいんだ!」
「せやったら、近くにビジネスホテルあるで!」
「よし、そこに行くか! じゃあ雅、一華さん、なんかあったら呼んでくれ」
忍だけを残し、三人は近くのビジネスホテルへ出発した。
一華の部屋から出た途端、品川は地面へ膝をつき、肩で息を繰り返し、苦悶の表情を浮かべていた。
「痩せ我慢してたな? ほら、手伝ったるから立てや」
「あぁ、すまねぇ……」
品川は吹雪の手を借り、満身創痍な身体を奮い立たせる。
「……仕方ない、ここは天才である俺も手伝ってやろう」
南雲は吹雪の逆へと回り、品川を支えるのだった。
「なんだよ? 今日だけは珍しく優しいじゃねぇか」
「前から言ってるだろ? お前を倒して、次は神崎忍を倒すって。ここで死んだら、俺の目的が果てせなくなる……品川、絶対に死ぬなよ?」
南雲より決死とも思える願いに、品川は笑って聞いていた。
「嬉しいね。ちゃんと想ってくれる奴がいてくれてな……」
「まだ木戸にした事は許してないからな?」
「あぁ、ちゃんと謝るよ」
南雲と吹雪は品川を支えながら、一華自宅付近のビジネスホテルへ向かう。
一方その頃、三人だけとなった部屋で……
「……やっと行ったか」
雅は立ち上がり、台所へと向かった。
「どうして止めなかったの!」
「あの馬鹿なりの気遣いだ。それは素直に受け取ればいい」
雅は鍋を用意し、コンビニ袋から塩味の袋麺を二つ取り出し、ラーメンを作ろうとしている。
「どういう事?」
「女二人で男四人というのは怪しまれる。だったら、信用できる忍様と女二人なら、周囲からは怪しまれない」
「でも、品川くんは歩ける状態じゃ……」
「だからだ。あの馬鹿は五年前から何も学んでいない。忍様と同じ道を辿ろうとして、ああやって強くなると勘違いしているのだ」
会話しながら雅は鍋に水と牛乳を注ぎ、ダマができないよう注意しながら、かき混ぜる。
「え?」
「なんだ。アイツが自分から傷ついていると思うか? 違うな、アイツは忍様の背中を見ながら同じ道を歩めば強くなれると思い上がっているだけだ」
叱責しながらも粉末スープを入れ、麺二つも入れ、中火で料理を続ける。
「……彼は馬鹿だけど、悪い人じゃ……」
「実力は認める。私を一度倒した男だ……だが、生き方が圧倒的に違いすぎる」
そこへ卵を片手で割り、ボールの中へ入れ、空容器のペットボトルで空気の力で、黄身だけ吸引する。
そして余った卵白は混ぜて鍋へ投入し、ミックスチーズも入れ、優しい手つきでかき混ぜる。
「生き方?」
「忍様は生きる為の力……だが、奴は的に集中するまでに周囲が見えなくなり……いつの間にか死に様になっている……」
火を止め、二つ器を取り出し、カルボナーラ風塩ラーメンを器へと移す。
仕上げに、黒胡椒、準備してあった焼きたてのベーコン、黄身を投入し、完成させた。
「私は、もつ一つ守らなければならない物がある……」
雅は熱い器を難なく持ち、一つを一華へ手渡した。
「?」
「私はアイツを最後まで助けなければならない……それが輝様との約束だからだ」
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