山崎完太の宣戦布告
山崎完太が、ヤクザと戦う?
今日もまた、あの場所へ降り立つ。
目の前には、時代に取り残されたような古臭い鉄の扉。
中からは微かに人の気配が漏れている。
「ふーっ……」
大きく一呼吸。
(ノックするぞ。出方次第じゃめちゃくちゃに暴れてやる。……いや、案外すんなり受け入れられるか? どちらにせよ、金を奪うのは無理そうだ。結局、この世界の深みに入り込むしかないのか……)
「ドン! ドン!」
鉄の扉を拳で力強く叩く。
「昨日来たモンです。失礼しまーす」
ガチャリと扉を開ける。
相変わらず、弱々しい蛍光灯の光が室内を寒々と照らしていた。
中には昨日と同じ4人の男。
奥の椅子には組長がどっしりと腰掛け、ソファにはNo.2の40代後半の男と、格下のショボ男が座っている。
そして、30代のいかにもといった風貌の男が、パター練習に興じていた。
一番近くにいたゴルフ男が、クラブを肩に担いで詰め寄ってくる。
「お前、ホンマに来よったんか。昨日せっかく帰してやったのに……今日も来るってことがどういう意味か、分かっとんのか! あぁ!?」
凄まじい威圧感。心臓がバクバクと脈打つ。
(……だけど、なんだ? だんだん腹が立ってきたぞ。
何だこのオッサン、偉そうに。
俺は無敵なんだぞ。下手に出てりゃ調子に乗りやがって)
完太は男を完全に無視し、スタスタと奥へ歩き出した。
視線はまっすぐ、親分だけを見据えている。
「あぁん? 待てコラ!」
ソファにいたショボ男が弾かれたように立ち上がり、完太の前に割って入って肩を掴んだ。
他所の組のヒットマンを警戒する、極道としては当然の動きだ。
「どけよ。お前に用はねえんだわ」
完太の不遜な一言に、男の顔が怒りで赤黒く高揚する。
その時、No.2の男が「待て待て」と手で制し、ゴルフ男に目配せを送った。
男の手が完太の全身を這う。
(あぁ、ボディーチェックか。銃やナイフを持ってないか確かめてるんだな。流石はNo.2、冷静なこった)
(そんなもん、持ってるわけないだろ。俺はただの学生なんだからよ)
チェックを終えたゴルフ男が、完太の襟首を掴んで顔を近づけた。
「……これ以上前に出たら、ぶち殺すぞ」
「口だけかよ。ここまでコケにされて、まだ素人に手出しもできねえのか? ヤクザも案外ダセェな」
その言葉が引き金だった。
「このガキが……ッ!」
耐えかねたショボ男の拳が、完太の顔面にめり込んだ。
ゴンッ!
「がはっ……!」
衝撃で完太の身体が宙を舞い、**ガシャーン!**と音を立てて転倒する。
(あれ……痛い? 一瞬、殴られた瞬間だけ痛みが走った。ペンを刺した時は何も感じなかったのに。……顔はどうだ? 変形してないか。よし、大丈夫そうだ)
「おい、馬鹿野郎! 手を出すなと言っただろ!」
ゴルフ男が慌てて若い男を制するが、もう遅い。
「あ〜……痛い痛い。痛ぇな、おい(大して痛くないけど)」
完太は平然と立ち上がった。
「いいのかよ、素人に手を出して。……警察、行っちゃおうかなぁ?」
ニヤリと笑う完太を見て、ここで初めて組長が口を開いた。
「お前……目的は何だ。ワシに何の用だ」
「……ワシらが怖くないんか?」
完太は組長を正面から見据えて言い放つ。
「ああ、怖くねえよ。言っただろ、俺は強いって。ここであんたら全員ボコボコにするのも、俺にすりゃあ簡単なことだ」
組長はフッと鼻で笑い、力なく首を振った。
「……いや、待て。ワシらをボコボコにしたところで、お前には何も手に入らんぞ。見ての通り、こんな古臭い事務所にいたところで、シノギなんてこれっぽっちもありゃせん。今のヤクザはな、食っていくだけでも必死なんだ」
「……だったら、もっと上を目指せばいいだろ」
「そりゃあ上の方はいい暮らしをしとるよ。ワシらの養分を吸い取ってな。だが、それはとんでもなく遠い『上の上』の話だ。ヤクザで儲けるなんてのは、もう無理な話なんだよ」
完太は不敵な笑みを浮かべ、断言した。
「じゃあ、俺がアンタをトップにしてやるよ」
組長の目が驚愕に見開かれる。
「お前……名前は?」
「俺は山崎。山崎完太だ」
お読みいただきありがとうございます。
1部は全19話となります。もう書き終わりましたので、これから毎日投稿したいと思います。20時10分頃。
2部も書いていきたいと思ってますのでよろしくお願いします




