石嶺の愛人『エミ』
石嶺に狙いを定めた荒垣と完太は家に乗り込む事を画策するのだが…
ところが…
(歌舞伎町の地図をうんたらかんたら言ってたくせに、アレからもう1ヶ月もたったぞ?)
完太はというと、実に平凡な日々を過ごしていた。
シノギの仕事もバイト代くらいはくれる様になったのだが、
組長の
「お前の本業は学生だぞ。」
この言葉のせいで、あんまりシノギの仕事も手伝わせてくれない。
そんな時、ケン坊から電話が…
「もしもし。シノギあんの?」
「今日はシノギじゃねーよ。荒垣さんが今日なんか飲みに連れて行ってくれるらしいぞ。
7時に城蘭っていう中華に来いってよ。
しっかり伝えたからな。遅刻すんなよ。」
「ああ。大丈夫。予定もないし。しっかり行くよ」
(荒垣さん俺の電話番号しらねーのかな?)
夜6時半頃…
歌舞伎町をGoogleマップで見ながら城蘭を探す。
昔ながらの街中華だ。
炒飯も600円と安い。
(ちょっと早すぎたかな…)
中をチラッとのぞくと荒垣の姿が…
完太の姿に気付いた荒垣が手を振って招き入れる。
「おーいボン。入って来い」
テーブルにはラーメン、炒飯を食べた食器があり、
餃子をアテに、ビール瓶が3本ほど並んでる。
(もうほぼ出来上がってるじゃねーか。)
「好きなモン食えよ。今日は俺の奢りだ」
そう言うと荒垣は勝手に注文しだした。
「炒飯に…餃子…ラーメン…」
選ばせてくれない…
(まぁ好きなのばっかりだから良いけど…)
運ばれてくる料理にがっつく完太。
食べっぷりの良さに荒垣がどんどん追加してくる。
「そんな食べれませんよ。」
荒垣は嬉しそうに勧めてくる。
(こんな楽しそうにする人なんだな…)
「ところでよ。オヤジからちょっと頼み事されたんだよ。お前と一緒に調べて欲しい事があるんだとよ。」
荒垣は4本目のビール瓶を空けると、ラベルを指先で剥がしながら、さらに声を潜めた。
店内の喧騒が遠のき、二人の間にだけ別空間が現れる。
「……いいか、ボン。最近分かった事だが…三年前のあの夜、真壁が暴行されたのは実は突発的なモンじゃなかったんだ。逆だったんだよ、真壁が九条会をゆすってやがったんだ。
握った『ネタ』の正体は、九条会の幹部連中による致命的な裏切りだ」
荒垣の目が、獲物を狙う獣のように細まった。
「あいつら、上部組織である白鳳会に黙って、独自の麻薬ルートを開拓しやがったんだ。それが白鳳会のシノギをかすめ取る形になってるって証拠を、真壁がバッチリ録音しやがった。
もしそれが表に出れば、九条会は一発で破門。十億単位のシノギを失うだけじゃ済まねえ。幹部の首が文字通り飛ぶ案件だ」
完太は、注がれたビールを口に運んだ。話の重みと混ざり合う。
「九条会はパニックになった。そこで、汚物処理係として稲葉組の石嶺に真壁の暗殺と録音の回収を命じたんだ。
だが、あの野郎……。真壁を襲わせて録音を奪った後、あえて真壁を殺さずにどこかへ逃がしやがった。そして九条会には『回収に失敗し、真壁には逃げられた』と大嘘をつきやがったんだ」
「……二重の裏切りですね」
完太が呟くと、荒垣は…
「その通りだ。石嶺はその録音を懐に隠し、九条会の弱みを握った。自分をハメようとした証拠を石嶺が持ってるんだから、九条会の幹部連中も石嶺には逆らえねえ。……俺が塀の中にいる三年の間に、あいつは九条会をアゴで使って、まるで自分が直参の親分にでもなったようなツラしてやがる」
荒垣はテーブルを指先で叩いた。
「オヤジはこの構図を掴んだ。だが、肝心の『録音』という確固たる証拠がねえんだ。
石嶺が九条会を脅している決定的な証拠……そいつを奪い取れば、石嶺は破門、九条会は俺たちの軍門に下る。黒金組が歌舞伎町の頂点へ駆け上がるための、唯一にして最大のピースだ」
完太は最後の一口のチャーハンを飲み込み、ビールで流し込んだ。
「……その録音、どこにあるんです?」
荒垣はスマホを取り出し、一枚の写真を見せた。そこには、派手なブランド品に身を包み、高級車から降りる若い女の姿があった。
「エミ。現役の女子大生で、石嶺の愛人だ。石嶺は今、九条会のガードを借りて鉄壁の守りの中にいるが、この女に買い与えた麻布の超高級マンション……そこが石嶺の『隠し金庫』だという情報がある」
「そして…コイツの行ってる大学が…
ボン。お前と一緒の明正大学なんだよ。」
「えーーーーー。」
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1部は全19話となります。もう書き終わりましたので、これから毎日投稿したいと思います。20時10分頃。
2部も書いていきたいと思ってますのでよろしくお願いします




