弾丸が通じない鉄砲玉
マジックのような身体を披露した完太は少し組長と荒垣との距離が縮まった夜
荒垣が口を開く
「それはそうと、オヤジがこのボンを気にいるって事はなんかあるんでしょう?コイツの肝の座り方と何か関係あるんで?」
「いや、そこなんだ。ワシも不思議でな。二十歳やそこらの若造に出せる雰囲気じゃねーんだよ。
何か秘密があんのか?」
(この2人なら話してもいいかな)
完太は透明(粒子)人間だ。
そこに至る経緯と、なぜヤクザの世界に踏み込んだのかを説明した。
「にわかには信じがてぇな。証明できるもんあんのかよ。」
荒垣が怪訝な目で見つめる。
キョロキョロと周りを見渡す完太。
(流石にこんなところに鋭利なもんないよな…。)
「じゃあ、この割り箸でやってみますよ。ちょっと先が尖ってないので、上手くいくか分かんないけど。」
そう言うと完太はその割り箸を捲り上げた左腕に突き刺した。
「うお!」
組長と荒垣の目を見開き驚く。
完太も驚く。割り箸でも上手い具合に刺さったからだ。
血もなく、痛みも刺さるほんの一瞬感じただけで。
割り箸を抜いてもすぐに皮膚が再生される。
抜いた瞬間、傷口が内側から蠢き、沸き立つような粒子が穴を埋めていく。数秒後には、産毛の一本まで元通りだ。
「ほらね。俺死なないんすよ。コレで強気に出れる理由分かったでしょ?」
「手品じゃねーのかよ」
「それがね違うんすよ。身体のどの部分でも再生しますよ。試してみます?」
組長と荒垣がブルブル首を振る。
「そりゃそうか。それくらいじゃなきゃ、組事務所なんか乗り込んでこね〜よな。」
組長が腑に落ちた表情でお茶を啜った。
荒垣がすかさず、
「痛みはなくても、快楽は?」
「ん?」
「あっちの方だよ。女抱く時だよ。」
「あ〜そっちの快楽はバッチリ感触残ってますよ。」
(童貞だけど…。オ◯ニーは出来るしな…)
「あの〜……荒垣さん、でいいんすかね? 俺からも質問いいっすかね?」
「ああ」
「……いや、やっぱり質問はやめときます。ここで聞くより、これから現場でアンタらの背中見てる方が学べそうですし」
完太はそう言って、残っていたお茶を一気に飲み干した。
その言葉に、荒垣がわずかに口角を上げる。
「……若造が。ナメた口ききやがって」
言葉とは裏腹に、その瞳には完太への確かな興味が宿っていた。
「よし、今日はここまでにしよう。荒垣、お前は体を休めろ。完太、お前は明日から忙しくなるぞ。ワシの描く『新しい秩序』には、お前のその異質な力が必要だ」
組長が立ち上がり、板前に目配せして会計を済ませる。
店を出ると、歌舞伎町の夜風が三人を包んだ。ネオンの光が、荒垣にとっては三年ぶりの、完太にとってはこれから血で塗り替える戦場の色に見えた。
「じゃあ、失礼します」
軽く手を振って歩き出す完太の背中を見送りながら、荒垣がボソリと呟く。
「……オヤジ、アイツおもしれーな。弾丸が通じねえ鉄砲玉なんて、聞いたこともねえ」
「ああ。面白い時代になりそうだな」
完太は二人の視線を背中に感じながら、夜の雑踏へと消えていった。
(……さて、組長はどんな絵を描いてるのかな…)
心臓の鼓動が、今までになく高鳴っていた。
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1部は全19話となります。もう書き終わりましたので、これから毎日投稿したいと思います。20時10分頃。
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