黒金組のシノギ
ヤクザのシノギとは?悪い事?
黒金組長から振る舞われた食事の席。
俺は、組長の黒金厳山と、若衆のケン坊から、この組の勢力図と「シノギ」と呼ばれる金のなる木について叩き込まれていた。
黒金組のメンバーは、全部で5人。
1. 組長:黒金 厳山(圧倒的な威圧感を放つこの組の主)
2. 若頭:金村 猛(ソファの奥にどっしりと構える実務責任者)
3. 若頭補佐:荒垣 征一(現在は服役中。近々出所予定の重要人物)
4. 若衆:藤田 保(現場を預かる実動部隊)
5. 若衆:ケン坊(俺の世話係兼、教育係)
意外に思うかもしれないが、ヤクザの組というのは10人以下の少数で成り立っているところがほとんどだ。
この黒金組も、巨大なピラミッドの末端「四次団体」に属している。
その頂点、雲の上の存在として君臨するのが『白鳳会』
俺はそのトップに黒金のオヤジを押し上げてやると、大見得を切ったのだ。
「組を維持するにはな、各自がシノギで稼いだ金をまとめ、三次団体の『稲葉組』に上納しなきゃならねえ」
ケン坊が説明する。
毎月決まった額を納める義務があり、それが滞れば『白鳳会』の看板は剥奪。
他組織からの攻撃に対しても、誰も守ってはくれなくなる。
「おい、ケン坊。明日、お前のシノギにこいつを連れてってやれ」
組長がニヤリと笑いながら言った。
「分かりました……。オイ完太、明日6時半に事務所集合な」
「え〜! 早すぎるって。まだ寝てる時間だよ」
俺が泣き言を言うと、組長が声を上げて笑った。
「俺をトップに上げてくれるんだろ? だったらまずは、金の稼ぎ方を覚えてこい」
「ぐぬぬ……」
翌朝 6時22分。
眠い目をこすりながら事務所に着くと、ケン坊はすでに使い込まれたハコバンの中で缶コーヒーを啜っていた。
「おー。遅刻しなかったな。早く乗れ、行くぞ」
車内は10人ほど乗れそうだが、古くて汚い。
助手席に座ると、車はガタガタと走り出した。
「今日は何の仕事?」
「お前な、俺の方が先輩で年上だぞ。敬語を使え。……まぁ、オヤジがお前は特別だって言ってたから今回だけは許してやるけどよ」
「優しいな〜ケン坊は」
茶化すと、ケン坊が本気で拳を振り上げてきた。
「いいか、俺はともかく、兄さんや荒垣の兄貴、カシラの前で舐めた口を叩いたら、オヤジが何と言おうとその場で叩き直すからな」
「はーい」
「ところで、今日の仕事だが……」
「あ、言っとくけど俺、悪いことはしねーぞ。人を殺したりとか絶対パスだからな」
「心配すんな。オヤジがいきなりそんなヤバい仕事振るわけねーだろ」
ケン坊が説明したシノギは意外なものだった。
深刻な人手不足に悩む建築現場へ、作業員を送り届ける人材派遣。それが彼らの仕事の一つだ。
「今日もこの車に8人乗せて現場へ運ぶ。工務店からは1人につき1万8千円出るが、俺たちが作業員に渡すのは6千円だ」
つまり、1人につき1万2千円の中抜き。
8人運ぶだけで、1日に約10万円の利益が転がり込む計算だ。
「もっと忙しい時は車を増やす。今度は自分で運転して行ってもらうからな」
(まぁ、悪いことではないのか……。工務店も助かってるし、作業員も仕事があるだけマシって感じだしな)
道中、他にもいろんなシノギを聞いた。
身寄りのない受給者をボロアパートに住まわせて生活保護費を管理する「囲い屋」、借金の取り立て、店にトラブルがあった時の「ケツ持ち」。もちろん、表には出さない薬物の密売などもあるだろう。
そうして稼いだ金は組に吸い上げられ、さらに上の組織へと巻き上げられていく。
(正直……こんなことしててもラチがあかねーな。その三次団体の『稲葉組』だったっけ? 早いとこ、そこに乗り込むか……)
お読みいただきありがとうございます。
1部は全19話となります。もう書き終わりましたので、これから毎日投稿したいと思います。20時10分頃。
2部も書いていきたいと思ってますのでよろしくお願いします




