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蜘蛛の女王

漫画で書いていた分を完結扱いに致しました。

そのほうが管理しやすいかと思いまして(^_^;)

ここからが漫画の続きとなります。

漫画をお読みの方はここから読んで頂いても構いません。


当初では漫画分で3分の2くらいまで書いてた予定なのですが

小説で書くにあたり、また温めていた機関の長さゆえ

もう好きに書こうと思います(^_^;)

それでも半分くらいは漫画で書けているはず、、多分。

本当にゆっくりではありますがゴールを目指してコツコツかきあげたいと思います。


蜘蛛は未開地と呼ばれる地と幻羽人が暮している大陸との境にテリトリーを築いている。


彼らにも縄張りがあり、女王を頂点に現在は6種族ほど確認されている。


その一つの種族に黒の手が伸びていた。





土に糸を練りこみ強度を増した素材でで出来た蜘蛛特有の城の大広間に2人の女が対峙していた。


一人はこの城の女王ウナ、もう一人は半顔の仮面をつけたアルカシアである。


遠巻きに狼狽を隠しえない蜘蛛の兵士達が居る。


ウナの髪が翻る度得も言われぬ香りが漂う、蜘蛛の女王の持つフェロモンである。


彼女達はこの香りで男達を魅了し操るのだが女のアルカシアには効かなかった。


アルカシアの率いてきた黒の一族も男であれば魅了され敵に回ったであろう。


だが、彼女は女性ばかりを引き連れて来た。


蜘蛛の城を襲うのに何時寝返るか分からぬ男共を連れてくるのは愚作である。


1体1の戦いに引き込んだことでアルカシアの勝機は決まった。





ウナとて優れた戦士ではあるのだが黒の一族の上位者の敵ではない。


美しい顔も惜しげもなく露出している豊満な胸もくびれた腰に豊かな尻も男には武器になったであろうが


アルカシアには何の意味も無い。


むしろ嘲笑され甚振られるだけであった。


アルカシアは黒閃弾を鞭状にし、ウナを痛めつける。


即座に殺しはしない。


白い肌に血を滲ませ未だに闘志の衰えぬ眼で挑んでくるウナとの戦いを存分に楽しんでいた。


一思いに殺そうと思えば何時でも殺せる、だがそれでは面白くない。


黒の女剣士も手は出さず見守っている。


彼女達はお楽しみを邪魔された時のアルカシアをよく知っている。


それより蜘蛛の兵士が余計な真似をしないか目を光らせねばならない。


もし、アルカシアの興をそぐような真似をさせてしまえばお仕置きされるのは自分になるからだ。





ウナの武器は鋭利な延びた爪と糸である。


蜘蛛の女王達は素手の戦いを信条とし己の身以外の武器は持たない。


優れた身体能力を生かせば蜘蛛の兵士と劣らぬ戦いが出来る。


ウナとて気に食わない兵士や姉妹をこの爪で屠って来た。


蜘蛛の王女、女王候補は成人に達した時、姉妹で殺し合い生き残った強者が次の女王となるからだ。


そのため女王の一騎打ちを蜘蛛の男は邪魔をしない。


図らずとも同じ構図になっている為男達はうろたえているが手は出さずただ見守っていた。





ウナの形態はすでに6本の腕を出している。


蜘蛛の男は6本腕で生まれてくるのだが女王になる女は違う。


彼女達も一度だけ機能する形態変化を使えば6本の腕になる。


が、これは女王の間ではそれほど追い込まれたということの結果なので恥とされる姿であった。


ウナにはもはや余裕は無い。


使えるものは皆使った。


だが敗色は濃厚であり死はそこまで来ている。





薄れ行く意識の中彼女は妹を思った。


ウナは凡庸な蜘蛛の女王である。


しきたりに従い同腹の姉妹を屠り次期女王となった。


母女王の死に伴ない母の城を統べるべく母の横で統治を手伝っていた。


他の蜘蛛の女王と違ったのは彼女の母が2回目の娘達を産んだことだ。





蜘蛛の女王は娘達を1度産み、その娘達の一番強者が後を継ぐ。


だが稀に彼女の母女王のように2度目の娘達を産む事がある。


その時は2度目の娘達で戦い生き残った強者が城の半数の男を引き連れ巣分けを行う。


それが蜘蛛の面々と受け継がれて来た風習であった。





それをウナの妹であるパムは覆す。


彼女は戦い打ち負かした同腹の姉妹の命を取らなかった。


母女王に女王は多いほうが良い、数は力になると進言したのだ。


それは近親交配を減らす事にも繋がるとパムは言った。


ウナはその時衝撃を受ける。


ウナ自身、同腹の姉妹を屠る時不安とも後悔とも言える説明しにくい感情に襲われていた。


だがウナは其れを深く考えることなく、昔からのしきたりだからと母女王の命ずるままに行っていた。


母女王にしてもなぜそのしきたりが続いているのか明確な答えは持っていない。


ただ、そう云う物だと受け入れてきただけだった。


ウナには近親交配という概念は知らなかったが蜘蛛の女王の代が続くにつれ


奇形種が生まれる事が多くなって来ていることには気が付いていた。


何かの呪いだろうかとは疑われていたがパムは血が濃すぎるせいだと言い切った。


いくら多種族の男を父に選ぼうが女王が同じなのだ代を重ねるごとに歪は生まれると。


妹が何処でそんな知識を覚えたのかは解らないだがウナはパムを心底すごいと思った。


だからパムの行為に怒り彼女を殺そうとした母を屠ったのだ。


そして自らが半数の男を率い巣分けを行った。


妹達に住みなれた城を譲り彼女達の未来を称え。





肉を抉られ血塗れになりながらウナはアルカシアに挑む。


自分がこの女を止めねば妹達の元へ行くかもしれないのだ


それだけは許すわけにはいかない、妹達はまだ成人して間もない戦闘という一点においてまだ未熟なのだ。


だから母とも自分が戦った、まだパムでは彼女に勝てるはずが無かったから。


自分が守らねば、、そう思う反面意識が遠退き始め身体が重く思う様に動かせない。


悔しさに涙が溢れる。


「、、ごめ、、ん、、パム、、」


消え入るような声がウナの最期だった。


そのまま崩れ落ちる。


勝ち誇る笑みを浮かべるアルカシアに蜘蛛の兵士は頭を垂れる者、逃げ出す者、城内は騒然となる。


「従う者は受け入れておやり、逃げる奴は好きにおし」


戦いに上気した頬に笑みを浮かべウナの死体を踏みつけアルカシアは王座に歩み


どかりと腰を下ろした。


女王の交代である。





蜘蛛の男どもの反応はほぼ3種であった、その場に跪き恭順を示す者、どうしようかと迷い戸惑う者。


女王の敵を撃とうとアルカシアに挑む者。


アルカシアに挑む物はウナ自身に陶酔していた者達だ、ウナに惚れ、ウナの為に生きると誓った蜘蛛の戦士達。


彼らは果敢にアルカシアに挑もうとしたが彼女にとどく前に黒の女剣士に阻まれていた。


一人一人の戦力は高いのだがいかんせん数が少なかった


彼らは前衛の黒の女剣士に抑えられ後衛の黒魔術士に瞬く間に殺されていった。


せめて1対1に持ち込めればいや、2対1でも結果は違っていたかも知れないが


黒の一族にアルカシアに恭順を示した同胞もが敵に回ったのだ。


半数以上の蜘蛛はアルカシアに従った。


蜘蛛の女王の交代は稀に起こりうる事であり、勝利した女王が巣の男達を統べるのは蜘蛛の常識でもある。


寧ろ負けた女王の仇を討とうとするほうが珍しい。


彼等数十名しか満たない数ではあったが、うち数名は相談するまでも無く城の外へ飛び出していた。


ウナが妹達の事を心配していると理解していたから。


ウナの思いを届けるのが自らの使命だと解っていた。


その場に残り黒の一族に挑んだ戦士達は足止めである。


伝令をパムの元へ届けるために自らの命を持って時間をかせいだ。


最後に残った戦士が倒された頃には迷っていた同胞達も進退を決めだす。


アルカシアに恭順する者、遅まきながら従う事を受け入れず外に逃げ出す者。


まさに脱兎のごとくである。


そんな彼らを黒の一族は追いたて狩り始める、恭順した蜘蛛も追っ手に加わり大半の逃亡者は駆逐された。


唯一最初に伝令に駆け出した数名を除いて。


彼らは駆ける、木々を伝い穏行を駆使しながら、旅立った古巣へと、、。

















「パム~?」


「ねぇパムったら~」


リムとソムの声がする。


パムはのんびりと大木の枝に寝そべり果物を食んでいた。


幻羽人は食すことの無い毒のある果実、パムはそのピリリと舌を刺すアッサムの実がお気に入りだった。


彼女ら蜘蛛の食物は体液である。


アッサムから栄養を取る事は出来無い。


彼女にとって単なる嗜好品なのだ。


彼女は暇を持て余してた。





「あ~、またアッサムなんか齧ってる」


くすくすと笑いながらリムはパムの傍に飛び乗る。


「ん~?」


物憂げにパムは姉妹を見る。


魅惑的な身体にアーマービギニを付け、淡い金色に赤いメッシュが所々入った長髪。


猫を思わせる黄金の釣り上がり気味の大きな瞳。


まだ若い為か妖艶とは言いがたいが美しい容姿である。


隣に寄り添ったリムもまた淡い金色に緑のメッシュの長髪にパムよりは切れ長の一重の瞳の美少女だ。


ソムは青いメッシュがはいっており彼女は少し垂れ眼気味であったがこれまた美少女だった。


ウナもまた白銀の髪の妖艶な美女であったように蜘蛛の女王は美形である。


彼女達の最大の武器はその身に纏うフェロモンだが、容姿も蠱惑的なのだ。


彼女達はその容姿、魔魅力チャームによりどんな種族の男も虜に出来る。





「そろそろ繁殖期だけど、、どうするの?」


ソムが小首をかしげながらパムに訊ねる。


パムに助けられた時から彼女達はパムをリーダーとして扱っている。


「どうもしないけど、、何?いい種が見つかったの?」


パムはにやつきながらソムの顔を覗き込んだ。


ソムはうふふと笑いながらそうねと曖昧な答えを返した。


「見つかっても私たちはパムの前に卵を産むつもりはないのよ?」


リムがパムの食べかけのアッサムを齧りながらそう言う。


「そうよね、一番最初の卵はパムが産まないと」


ソムも頷く。


「あんた達そんな事言ってると番えるのいつになるかわからないよ?」


昨シーズンもこの会話で繁殖期を彼女達は見送ったのだ。


ソムもリムもパムには感謝と敬愛を持っているため彼女の前に番うなどもっての外だと思っているのだ。


パムは気に入った男が居ればどんどん先に番えばいいと思っているのだが


彼女達は律儀に自分達の流儀を貫いている。





「ねぇ、パムはやっぱり「あいつ」が戻ってくるの待ってるの?」


アッサムはリムの口には合わなかったのかぺっぺっとカスを吐き出しながらそう言う。


リムは口に合わないと知っているのにパムの齧るアッサムを良く食べる。


これはもう癖なのかもしれない。


そんなリムを正面から見つめパムは頷く。


「、、、だって決めたんだもん」


最初にパムが番い食べる相手は彼だと。


その眼はそう告げていた。


この話も何度した事か、、。


「そんなにそいつ強かったんだ」


ほぅっと溜め息を付きながらソムがパムの傍に器用に寝転ぶ。


太い枝は彼女達3人をギリギリ受け入れてはいるがそんなにスペースに余裕があるわけでは無い


可能にしているのは彼女達から出ているキラキラした蜘蛛の糸のおかげだ。


不安定な場所も糸があればなんら不都合は無い。


「、、、うん」


微かに上気した顔でパムは頷く。


彼女の脳裏にあるのは蜘蛛の戦士を山済みに気絶させた上に座りのんびりと話しかけてきた白の剣士。


幼い時に見た忘れられもしない光景。





「始めの相手はトリストじゃなきゃ、、」


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