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35 バイク、その理由

冬とバイクについての思いを書いてみました。

 寒い。

 関東地方の平野部は路面凍結の心配がほとんど無いとはいえ、1月の朝、午前7時前後の気温は0からせいぜい3度程度。常に風に当たり続けるバイク乗りの体感だとさらに温度は下がり、マイナス10度近い寒さに感じられる。

 ヘルメットのシールドは自らが吐く息に白く(くも)り、指先はグローブを着けていても(しび)れるように鈍く痛み出す。

 それでも、バイク乗りは走ることをやめない。

 冷え込みで弱ったバッテリーをなだめすかし、気化しづらい燃料をキャブレターに圧送し、苦労しながらエンジンをかける。

 走り始めれば、冷たい空気はいつの間にかジャケットの隙間から入り込み、カミソリのように鋭く皮膚を切りつけてくる。

 なぜそんな思いまでしてバイクなのか。

 正直なところ、明確な言葉は私にも用意できない。

 加速感。操る楽しさ。風の中で目にする景色。機械との一体感。

 聞いたような理由はいくつでも並べられるのだが、どうもハッキリとコレだと言い切る自信が無い。

 登山家は山に登る理由を、そこに山があるから、などと言う。

 私のこの気持ちもそれに近いのかもしれないが、そんなに大袈裟(おおげさ)なものでもない、とも思う。

 こうして私が季節に関係なくバイクに乗るのは、楽しいからであり、好きだからであり、それらが寒さや暑さに(まさ)るからである。

 乗り始めた頃は色々なことを考えた。

 病気のことや体のこと、仕事のこと、家族のこと、これからのこと。

 それが、いつの間にか無くなった。

 私がバイクでこうして走るようになって、まだたったの2年程度。

 私の心の中で何が変わったのか。

 バイクに乗ることで何かを取り戻そうとしていたようにも思えるあの頃と、何も考えずに、バイクに(またが)って走ることを楽しむ今の私。

 スピードでもない。

 順位でもない。

 見栄(みえ)でもない。

 あえて言葉にするならば『自己満足』か。

 誰の為でもなく自分の為に、走る為にただ走る。

 深い理由など無い。

 それで良いじゃないか。

 この寒いのに、何でわざわざバイクになんか乗るの?

 聞かれれば、『楽しいよ』と答えるだけ。

 言葉に出来ない魅力。

 それがバイクには確かにある。

 火傷(やけど)をしそうな孟夏の陽射しよりも、震え上がるほどの厳冬の冷たい風さえも上回る、『それ』は『魔力』にも似た強い力でバイク乗りを()きつける。

 こうして言葉で上手く伝えることの出来ない自分の無力さを認めるのは情けないが、私では表現力がおよばない。

 私の表現力のずっと先に在るモノ。

 はっきりとしたカタチを持たない何か。

 それがたった2つしかないタイヤで疾走するこの機械には宿っているのだ。

 寒い?

 寒いさ。

 でも楽しいんだ。

 この魔力に魅せられたら、貴方(あなた)もきっと走り出しているだろう。

 たった2つしかないタイヤで疾走する、このバイクという機械で。

寒いですが、バイクに乗ると楽しさが寒さに勝ります。

冬でも乗れる環境で良かったとしみじみ思います。

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