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29/48

29 炎

先日の固形燃料ストーブの実験についてのお話しです。

 休日の早朝は数少ない私の自由時間だ。

 もちろん例外はあるが、基本的には夜が明ける前後1、2時間くらいは、誰に気兼(きがね)ねするでもなく好きに使うことが出来る。

 ただ、その時間も秋が過ぎ、冬が来て、ずいぶん短くなった。

 当然だ。帰らなければいけない時間は同じなのに、夜明けの時間は日に日に遅くなっているのだから。

 それでも暗いうちから起きだして、家族が寝ている我が家をそっと出るのは、バイクの魅力あってこそだろう。

 そんなある朝、冷え込みも厳しくなり、朝陽を(なが)めながら食べる朝食にもオニギリやサンドイッチだけではなく、なにか温かい物が欲しくなった。

 アウトドア用のホワイトガソリンやガスを使う調理用ストーブを使うことも考えたが、早朝2、3時間しかない自由時間の中で、あまり大掛(おおが)かりな道具を持って出かけるのには抵抗があった。

 そんなことを考えながら家族サービスを済ませ、夜になってふと見たインターネットの記事に固形燃料を使用したコンパクトなストーブがあることを知った。

 価格も安く、折りたたむとストーブ自体はポケットに収まる程に小さい。

 (なや)んだのはほんの数秒だった。

 すぐにネット通販でそのストーブと風除(かぜよ)けの折りたたみ式スクリーン、小さなクッカーを注文した。

 手元(てもと)に届くまで4日ほど。

 届いたそれらを手にとってみると、想像以上、驚くほどに小さかった。

 これでちゃんと使えるのなら、私にとって理想的な道具になる。

 そう考えた私は、とりあえず庭先で燃焼実験をすることにした。

 四角い、シガレットケースのようになっているストーブを開き、中央に固形燃料をセットする。

 折りたたんであるウィンドスクリーンを広げ、ぐるりとストーブを囲むように立てる。

 小さなクッカーに水を入れ、そっとストーブに載せた。

 ライターで固形燃料に火を着ける。

「おお!」

 燃料の(はし)から小さな火がゆらゆらと(とも)り、次第に大きくなっていく。

 火の燃える(さま)というのは不思議と見ていて飽きないものだ。

 ゆっくりと大きくなった炎がクッカーの底を揺れながらあぶり、徐々(じょじょ)徐々(じょじょ)沸々(ふつふつ)と水がお湯に変わっていく。

 6から7分くらいが経っただろうか。

 クッカーに入れた水はすっかり沸騰(ふっとう)し、お湯になっていた。

「意外と凄いもんだな」

 (つぶや)きながら()かしたてのお湯を、マグカップに付けた使い捨てのドリッパーへと注ぐ。

 コーヒーの良い香りがふわりと(ただよ)った。

「ん。良いね。これなら使えそうだ」

 固形燃料はクッカーを下ろしてから3分ほどで全て燃え尽き、小さな黒い燃えカスが残っているだけだ。

 コーヒーを飲みながら手元の道具を(なが)めた。

 小さい。

 500mlのペットボトルを(ふく)めた全てをパッキングしても、ウェストバッグに収まってしまうほどのサイズだ。

 これでまた休日の楽しみが増えた。

 これからはバイクで朝陽を(なが)めながら、温かいスープや()れたてのコーヒーが飲めそうだ。

 朝陽を(なが)める前に、揺れる炎を(なが)める楽しみと共に。

実際に翌日、いつもの遊水池に行って使用してみました。

庭先のようにはいきませんでしたが、ほぼ満足の使い勝手。

これから活躍しそうです。

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