29 炎
先日の固形燃料ストーブの実験についてのお話しです。
休日の早朝は数少ない私の自由時間だ。
もちろん例外はあるが、基本的には夜が明ける前後1、2時間くらいは、誰に気兼ねするでもなく好きに使うことが出来る。
ただ、その時間も秋が過ぎ、冬が来て、ずいぶん短くなった。
当然だ。帰らなければいけない時間は同じなのに、夜明けの時間は日に日に遅くなっているのだから。
それでも暗いうちから起きだして、家族が寝ている我が家をそっと出るのは、バイクの魅力あってこそだろう。
そんなある朝、冷え込みも厳しくなり、朝陽を眺めながら食べる朝食にもオニギリやサンドイッチだけではなく、なにか温かい物が欲しくなった。
アウトドア用のホワイトガソリンやガスを使う調理用ストーブを使うことも考えたが、早朝2、3時間しかない自由時間の中で、あまり大掛かりな道具を持って出かけるのには抵抗があった。
そんなことを考えながら家族サービスを済ませ、夜になってふと見たインターネットの記事に固形燃料を使用したコンパクトなストーブがあることを知った。
価格も安く、折りたたむとストーブ自体はポケットに収まる程に小さい。
悩んだのはほんの数秒だった。
すぐにネット通販でそのストーブと風除けの折りたたみ式スクリーン、小さなクッカーを注文した。
手元に届くまで4日ほど。
届いたそれらを手にとってみると、想像以上、驚くほどに小さかった。
これでちゃんと使えるのなら、私にとって理想的な道具になる。
そう考えた私は、とりあえず庭先で燃焼実験をすることにした。
四角い、シガレットケースのようになっているストーブを開き、中央に固形燃料をセットする。
折りたたんであるウィンドスクリーンを広げ、ぐるりとストーブを囲むように立てる。
小さなクッカーに水を入れ、そっとストーブに載せた。
ライターで固形燃料に火を着ける。
「おお!」
燃料の端から小さな火がゆらゆらと点り、次第に大きくなっていく。
火の燃える様というのは不思議と見ていて飽きないものだ。
ゆっくりと大きくなった炎がクッカーの底を揺れながらあぶり、徐々に徐々に沸々と水がお湯に変わっていく。
6から7分くらいが経っただろうか。
クッカーに入れた水はすっかり沸騰し、お湯になっていた。
「意外と凄いもんだな」
呟きながら沸かしたてのお湯を、マグカップに付けた使い捨てのドリッパーへと注ぐ。
コーヒーの良い香りがふわりと漂った。
「ん。良いね。これなら使えそうだ」
固形燃料はクッカーを下ろしてから3分ほどで全て燃え尽き、小さな黒い燃えカスが残っているだけだ。
コーヒーを飲みながら手元の道具を眺めた。
小さい。
500mlのペットボトルを含めた全てをパッキングしても、ウェストバッグに収まってしまうほどのサイズだ。
これでまた休日の楽しみが増えた。
これからはバイクで朝陽を眺めながら、温かいスープや淹れたてのコーヒーが飲めそうだ。
朝陽を眺める前に、揺れる炎を眺める楽しみと共に。
実際に翌日、いつもの遊水池に行って使用してみました。
庭先のようにはいきませんでしたが、ほぼ満足の使い勝手。
これから活躍しそうです。




