28 捻挫
先日、バイクとはまるで関係ないところで捻挫をしてしまいました。
不注意とはいえ、ショックだったので文章にしておくことにしました。
捻挫。
関節に稼動範囲を超えた動きが加えられたことによりおきるケガの一つ。いわゆる靭帯損傷だ。
私は幾度となくこのケガを経験している。ちなみに骨折の経験は無い。
このケガはスキーやスノーボードにはまっていた時もよくなったが、バイクでも経験がある。
まあ、病気をしてからは激しいスポーツをしていないので、最近では主にバイクに乗っていてということになる。
…が、今回は違った。
珍しく自転車で出勤した日の朝、ふとした拍子に、なんでもないような場面で、それは起きた。
ちょっと慌てていたのは確かだが、いつもなら何てこともない、5センチ程度の段差。
自転車を駐輪場に停めた後、私はそれに気がつかないまま、右足を踏み出してしまった。
一瞬にも満たない、わずかの空白。右足が踏むはずの地面が、その瞬間、そこには無かった。
予期していなかったため、体のバランスはあっという間に破綻し、私の右足は側面から外側へ向かって落ちていき、体重が足の甲の一点にかかったまま、段差の下に着地した。
足首でミシッと音がした気がする。
堪らずそのまま地面に転がった。
「いたた…」
呟きながら、ようやく段差があったことに気付き、転がったまま「はぁ…」と大きな溜息をついた。
病気をする前の自分なら、咄嗟の場合でもちゃんとバランスを回復できた…‥と思う。
未だに、腰下の体の動かし方には即応できない時がある。
まだまだ、だな…‥。
一層深い溜息を吐き出しながら、ゆっくりと立ち上がる。
右足を地面に着いた瞬間、足首に電流が走った。痛みに声が出ない。
それでも、一瞬の痛みに耐えて大きく息を吐くと、なんとか立ち上がることは出来た。
痛み方からして、捻挫なのはほぼ間違いない。
またやってしまったという後悔が重く腹の辺りに澱んだ。
その日は、痛む右足を引きずりながら仕事をし、業務後は職場の忘年会に参加し、タクシーで帰宅した。
翌日、少し腫れのある右足首に湿布を貼り、テーピングで固定をして家を出た。
普通にしている分には、痛みはそれほどでもなくなったが、腫れがあるためブーツを履くことが出来ない。
残念ながらスーパーシェルパに乗るのはしばらくお預けになりそうだ。
駐輪場でバイクカバーを外し、相棒の内の1台を引き出す。
スカイブルーメタリックの車体が、冷たい朝の空気の中で陽の光を照り返す。
「しばらくは君の世話になるようだな」
頼りになる相棒に苦笑を向ける。
アドレス110。
運転中に足を使う必要がないスクーターは、こういう時はクルマよりも便利だ。
このところ稼働率の上がっていたアドレスは、スタートボタンを押しただけで元気にエンジンを回し始める。
私は防寒装備を着けてヘルメットをかぶり、シートを跨いだ。
アクセルを開く。
パララと110ccのエンジンが軽快な鼓動音を響かせて走り出す。
「…‥」
片足を引きずって不便な思いをしながら、どんよりと沈んでいた気分が、バイクに跨って加速を始めるとどこかへ飛んでいく。
バイクってスゴいなと改めて思う。
この相棒がいてくれて良かったとつくづく思う。
痛みも、沈んだ気持ちも、相棒が作り出す風に吹き飛ばされる。軽やかな2ストロークエンジンの加速で置き去りにしてしまう。
肌に当たるとヒリヒリするほど冷たい風が、不思議と気持ち良い。
バイクに乗る。
これだけで私の毎日には光が生まれる。
落ち込んでいる場合じゃない。
走ろう。
私達はバイク乗りだ。
なんであんななんでもないところで転んだのか、情けなくなりましたが、バイクに乗っているとそれも忘れられます。
一週間経ってだいぶ回復したので、来週にはシェルパに乗れるかな。




