25 バイク日和
息子とスーパーシェルパに乗ることにした日のことをバイク目線で描いてみました。
仰ぎ見る空の青が日に日に深くなっていく10月。
日曜日。朝の肌寒い空気がようやく暖かさを取り戻した昼下がり。
私はマンションの駐車場の隅で相棒にライムグリーンの車体を磨いてもらっていた。
相棒の後ろには、まだ幼さが目立つ小学1年生の息子が、暇を持て余した顔で車止めに腰掛けて1台と1人を眺めている。
「パパ、バイクもお掃除するの?」
「するさ。ピカピカにすると気持ち良いだろ?」
「うん。そうだねー」
相棒がワックスを拭き上げて一歩さがり、見る角度を変えて拭きムラが無いかを確認する。
「パパ、ピカピカだね」
「ああ。ピカピカになったな」
親子は2人並び、私のライムグリーンの車体が秋の陽射しを照り返すのを眺めている。
腰に手を当てて満足気にしている相棒を、隣りで息子が真似て同じポーズをする。
駐車場を横切るマンションの住人が、2人を見て笑いながら会釈をし、通り過ぎていった。
相棒がかたわらの息子の頭をクシャッとかき回し、息子がその手から逃げるようにして私に近づく。
「パパ、バイクでどっか行くの?」
空冷エンジンのフィンを覗き込むようにしながら幼い声が訊く。
相棒は息子の小さな体をヒョイと抱え上げて私の背中に座らせてやり、
「一緒に行くか?」
と言葉を返した。
短い腕を精一杯伸ばしてハンドルを掴んでいた息子の顔に、パァッと喜びが広がる。
「行く!」
「よし、じゃあまずは片付けを手伝え」
「うん!」
シートから下ろしてもらうとかたわらのバケツを抱え、元気良く家へと走っていく。
相棒が笑いながらゆっくりと洗車道具をまとめ、後について歩き始める。
「3時のおやつはなにが食いたい?」
早くしろと何度も相棒を振り返る小さな背中に投げかけた。
「ソフトクリーム!」
ちょっと前までのつまらなそうな顔がウソのような、元気一杯の声が返ってくる。
どうやら、私の今日の目的地が決まったようだ。
相棒が笑いながら、ふと思い出したようにこちらを振り返る。
私はライムグリーンのタンクの上に秋晴れの太陽を照り返しながら、出かける準備をしに戻る相棒に『待ってるよ、1台と2人で行こう』と応えた。
相棒が眩しそうに目を細めながら、フッと笑ってひとつ頷く。
勘違いではない。お互いの意志はちゃんと伝わっている。
私は満足して空を見上げた。
そこには吸い込まれそうなほどに青い秋の空が広がっている。
ああ、今日も良いバイク日和だ。
この後、1台と2人は道の駅ごかでジェラートをいただき、プチツーリングを楽しんで帰宅しました。
ソフトクリームじゃなかったのはご愛嬌です。




