18 散歩のように
秋晴れの連休初日、カブでぶらりとお散歩に出ました。
そんなお話しです。
9月第3週。
今年も秋の大型連休がやってきた。
敬老の日、国民の休日、秋分の日の3日間の祝日に土曜、日曜日を合わせると5連休になる。
休日が5日間も続くとなれば、どこかに出かけたくなるのが人情だ。
私も天気予報と家族サービスのスケジュールを確認しながら、ツーリングマップルをめくっては、ああでもないこうでもないと唸っていた。
遠くまで出かけたいが、私1人で出かけられるのは初日の土曜日だけ、それもそんなに長い時間は作れそうもない。
そこに追い討ちをかけるように、ニュースではちょっとありえないような距離の渋滞予測が流れている。
「どうするか…‥」
スーパーシェルパは排気量的には高速道路も走行できるが、実際にやるとなるとかなり疲れる。楽しさが半減してしまうようでは、そもそも本末転倒だ。
「一般道で広域農道を縫うようにしてどこかを目指すか…」
ツーリングマップルをめくる。
栃木、群馬、千葉、茨城、埼玉…‥
どうするかな…‥とページをめくっていて、ふと部屋の隅に置いたバイク用品が目に入った。
「…‥」
私はツーリングマップルを閉じ、ゆっくりとリビングへ戻った。
シルバーウィークの初日、9月の第3土曜日は気持ちの良い青空でスタートした。
私は駐輪場から相棒達のうちの1台のチェーンロックを解除し、マンションの敷地の隅で暖機運転を始める。
エンジンのかかりはすこぶる良い。
アイドリングも落ち着いている。
燃料計の針はしっかりと満タンの位置を指していた。
一通り運行前点検を済ませた私は、相棒のリアシートの横にサイドバッグを装着し、ヘルメットを被る。
グローブをはめてシートを跨いだ。
左足でシーソーペダルを踏み込み、ギアを1速に入れてアクセルを開く。
ホンダ・スーパーカブ90【スクランブラーカスタム】がゆっくりと加速を始める。
ツーリングマップルをめっくっている時、私の頭の中はすっかりいつもと同じようにスーパーシェルパで出かける気になっていた。
ただ、部屋の隅に置いたサイドバッグが目に入った時、相棒はあと2台いるのだと思い直したのだ。
たまには別のバイクで出かけるのも良いかもしれない…‥と。
スーパーカブは幹線道路を避け、細い生活道路や農道をのんびりと走っていく。
信号や一時停止の標識も多いが、郵便配達員を見れば解る通り、スーパーカブにとってはストップ&ゴーなどお手の物だ。
一般的なバイクと違い、スーパーカブは爪先を踏み込んでシフトアップするロータリー式ミッションを採用している。
このロータリー式ミッションは、トップの3速から順番にシフトダウンすることなく、いきなりニュートラルにギアが入れられるのだ。
ブレーキをかけて止まり、3速からガッチャンとニュートラルに入れ、安全確認をしてからポンと1速に入れてまた走り出す。
このスーパーカブ90のシリーズはトップギアが3速なので、高いスピードを長時間維持するのはちょっと辛い。
しかし、のんびりと流すように田んぼ道を走るのにこれほどピッタリのバイクは無い。
トコトコと小さなエンジンが鼓動を刻みながら、秋の景色の中を散歩でもするかのように走る。
休耕田に植えられたコスモスも、水かさの減った農業用水の川面も、併走するかのように横を飛んでいった赤トンボも、細部までハッキリと見てとれる。
カブのスピードだからこそだ。
何もバイクは速さだけが魅力って訳じゃない。
バイクの良さは、この世界を直接感じながら空の下を走る、この開放感だ。
秋の陽射しと涼やかな風。
花の香りと田んぼの隅で上がる煙りの匂い。
歩くよりもずっと速く、しかし世界をダイレクトに感じとれるほど緩やかに、この相棒は私と共に走っていく。
このバイクが連れ出してくれる『散歩』は緩やかで、そして鮮やかで、心地良い。
秋晴れの青空の下、90ccの小さな単気筒エンジンの音が足音のように背中に流れていく。
トコトコ、トコトコ…‥、トコトコ、トコトコ…‥。
スーパーカブは田舎道をトコトコ走るのが本当に楽しいバイクですね。
ストップ&ゴーもお手のもの。
さすがは世界一のバイクです。




