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17 記念日

秋ですね。

景色を眺めながらバイクに乗り続けていたら、いつの間にか記念日になっていました。

そんなお話しです。

 すっかりメッシュジャケットの季節が終わった。

 私は先日購入したばかりの3シーズン用の新しいライディングジャケットに(そで)を通し、春に購入した同じく3シーズン用のグローブを手に家を出る。

 空が高い。

 バイク乗りの季節だ。

 駐輪場から相棒を連れ出し、エンジンを始動して暖機運転を始める。

 バイクの周りを一回(ひとまわ)りし、状態を確認してからヘルメットを(かぶ)った。グローブをはめ、シートを(また)ぐ。

 先週までの長雨がウソの様な、高く青い秋晴れの空が視界一杯に広がっている。

 クラッチレバーを握り込んでチェンジペダルを踏む込み、エンジンの鼓動(こどう)を聞きながらアクセルを開いた。

 250ccの相棒はゆっくりと加速を始める。

「どこに行こうかな…」

 ハッキリとした目的地は決めていなかった。

 ただただ、休日に顔を見せた青空が嬉しくて、じっとしていられなかった。

 以前も同じように目的地を決めずに走り出し、消化不良な感じのツーリングになってしまった経験がある。

 でも、今はそんなことはどうでも良かった。

 真新しいジャケットに身を包み、ポケットにカメラを突っ込んで、秋の景色を(なが)めながら走る。

 もうそれだけで、背中がムズムズしてくるほどに嬉しかった。

「ま、走っているうちに行きたい場所が思い浮かぶさ」

 私はほぼ無意識に幹線道路を()け、田んぼの中を抜ける農道を()うようにしてバイクを加速させる。

 ヘルメットの向こう側、稲刈りの終わった田んぼで白鷺(しらさぎ)がのんびりと(えさ)(つい)ばんでいた。

 籾殻(もみがら)を燃やす煙が静かにたなびき、畦道(あぜみち)に咲いた曼珠紗華(まんじゅしゃげ)が真っ赤な華を()らす。

 目に(うつ)る景色が、空の青も、花の赤も、白い煙も白鷺(しらさぎ)も、世界が鮮やかな秋を表現している。

 先刻、家を出る前に自分の免許証を見て一つの記念日に気が付いた。

 2年前の今日は、私が2輪免許を取得した日だった。

「2年か…」

 私にとって、免許の取得から2年が経ったということは、病気から日常に戻ってから2年が経ったということでもある。

 色々なことがあった気もするし、それ程でもなかったような気もする。

 長かった気もすれば、あっという間だったような気もする。

 人間の感覚なんてそんなものだろうが、それまでの2年とこの2年とでは、私の中では全く意味の違うものだ。

 病気を通して自分の体が動かなくなる恐怖を経験し、バイクに乗るようになって世界の感じ方、見え方が変わっている自分を見つけた。

 空の青さや銀色の月、季節の花の鮮やかさや陽射しの色に自分の気持ちがこんなにも動くのかと驚いた。

 どうしてそれまで気が付かなかったのだろう。

 アクセルを開き、少し冷たく感じられるようになった朝の空気を風に変えながら加速する。

 まあ、感じられるようになった今の自分がいるのだから別に良いか。

 世界はこんなにも鮮やかで、そして私達もその一部だ。

 風の中を加速し、前方に向かって()()まされていく意識がより鮮烈に世界を感じとる。

 2年前、バイクで走り始めた時から感じられるようになった世界を目に(うつ)し、私も1人のバイク乗りとして加速する。

 私自身の、遅れてきたバイク乗りの(わだち)(きざ)みながら。

2年が経ちましたが、相変わらずの未熟者振りで恥ずかしい限りです。

精進しないといけませんね。

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