表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
15/48

15 田んぼ道

夏休みが終わったら急に涼しくなって、秋が始まりましたね。

今回は秋の風景をテーマにして書いてみました。

 夏休みが終わった。

 (こよみ)葉月(はづき)から長月(ながつき)へと(うつ)り、季節は夏から秋へ。

 沿道(えんどう)の田んぼではあちこちで稲刈りが始まり、渡ってくる風に稲藁(いなわら)の匂いが混じる。

 夏が終わったんだと改めて感じた。

 私は(またが)っていたスーパーカブ90のアクセルを心持ち(ゆる)める。

 田んぼの中を通る田舎道(いなかみち)を走るのが好きだった。

 春の水が入ったばかりの田植えを待つ田んぼも、夏の青々と稲が葉を広げる田んぼも、金色の稲穂(いなほ)に覆われた秋の田んぼも、(しも)が降りて白く染まった冬の静かな田んぼも、それらを(なが)めながら走るのが、私はとても好きだ。

 つくづく農家の人間だよなと思う。

 子供の頃から見続けてきた毎年繰り返す景色。

 スーパーカブはこの風景に最も合う乗り物だと思う。

 ここを走る時はアクセルを(ゆる)め、(おさ)えたエンジン音と(やわ)らかな風に包まれていたい。

 海も良い、山も良い、川も湖もそこそれぞれの空気があり、そこに立つと自然の中のちっぽけな自分を改めて認識し、感動する。

 でも私にとってはそんな大きな自然よりも、この見渡す限りの田んぼこそが、自分の内面と向き合える原点なのだ。

 子供の頃から毎日目にし、常に生活の中にあった私の中の原風景(げんふうけい)

 ふるさとと表現するのは陳腐(ちんぷ)だが、確かにそこには郷愁(きょうしゅう)のようなものと、包み込むような優しさがある。

 (なが)めが良い訳ではないが、見晴らしはすこぶる良い。

 (はる)か遠くまで広がる田んぼと畑の中をゆっくりと走っていく。

 ここで感じる四季は(おだ)やかで、季節ごとに違う匂いの風が吹く。

 スーパーシェルパでこの見通しの良い道を加速するのも良いが、スーパーカブでゆっくりと、静かに走る時、季節はよりはっきりとした輪郭(りんかく)とそれぞれの香りを持って現れる。

 稲刈りの()んだ田んぼでは虫が跳ね、鳥達がそれをついばみ、片隅(かたすみ)に積まれた籾殻(もみがら)を燃やす煙が静かに()(のぼ)る。

 秋の景色だ。

 もうしばらくすると赤とんぼが夕暮れの空を飛び交い、その上を鳥達が巣へと帰っていく姿が見られるだろう。

 トトトト…とカブの(ひか)えめな排気音がその景色に溶けていく。

 静かで、(おだ)やかな時間が流れている。

 何をしても良いし、何もしなくても良い。

 (めぐ)る季節は今日の終わりと明日の(おとず)れを静かに教え、目の前の景色の中で命をも(めぐ)らせながら、(うつ)ろっていく。

 何にも無いし、何もかもが()る場所。

 私にとってはそれがこの風景。

 心なしか優しげに響く90ccの小さなエンジン音と共に、私もまた今日から明日へと向けて走っていく。

 ここは関東平野の真ん中。

 見渡す限りの田んぼが、周囲と私の内側とに広がる、その真ん中を走る道…‥。

どうも秋というテーマのせいか、センチメンタルな感じのお話しになってしまいました。

実際はここまで深く考えることはまれですが、田んぼで育った私にはここが最も身近な自然です。

稲刈りを見ると秋だな~としみじみ思いますね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ