11 バイク乗りは夏に焼かれながら…
夏のバイク乗りの気持ちです。
8月が始まった。
暑い。
陽が昇ってから3時間もすると、気温はもう30度近くまで上がり、昼を過ぎる頃には温度計の表示は36度以上になっている。
猛暑日。
気象庁では最高気温が35度以上の日をこう定義しているそうだ。
今日も、猛暑日だった。
出発は、いつものように暑さを避けた陽の出前。
スーパーシェルパに跨って自宅を出る。
風がまだ涼やかで心地良い。
渡良瀬遊水地まで薄暗い中を気分良く走った。
カメラを片手に昇る朝陽を堤防の上で待ち構え、相棒と一緒にファインダーの中に収める。
そのまま堤防の階段に腰を下ろし、朝食のオニギリを齧った。
時計を見る。
午前5時45分。
ゴミとカメラを片付けて、近場を一回りしてから帰ろうかとシェルパを走らせ始める。
1時間ほどは気持ち良かった。
少し斜めから射し込む太陽の眩しさに目を細めながらの運転だったが、朝の空気が清々しい。
しかし、午前7時を回ったあたりからだんだんおかしくなってくる。
陽の光がジリジリと頭の上から降りそそぐようになってきていた。
いつの間にか、メッシュジャケットの背中はストーブにでもあたっているかの様に熱くなっている。
膝の間の燃料タンクは太陽とエンジンとの上下からの熱源に温められ、触るとビックリするほどの熱をもっていた。
それでも、走っているうちはまだ良い。
生温いとはいえ、風に当たると体温もいくらかは下がる。
しかし、赤信号で止まった瞬間に暑さは倍以上になって返ってきた。
ジャケットの下で汗がブワッと噴き出し、陽に焼けたアスファルトと空冷エンジンの熱が足下から立ち昇り、陽炎となって前方の視界を揺らす。
「熱い…」
本来、寒暖の表現は『暑い』と表記するものだが、夏の太陽の下で焼かれるバイク乗りにとって、その瞬間の空気は『熱い』と言った方がしっくりとくる。
信号が青に変わるのを待って大きくアクセルを開いた。
少しでも風に当たりたい。
黄色い陽射しが眼に痛かった。
メッシュジャケットを通しても熱は伝わってくる。
快適にバイクに乗れるのは春と秋だけ。
夏と冬は快適というには程遠い。
クルマのように、エアコンで快適な温度の車内に座って運転する機械ではない。
むき出しの、夏の陽差しと空気に直に触れながら走らせる乗り物だ。
メッシュジャケットを風が通り抜けていく。
涼しいとは言い難いが、気持ちは良い。
これが、バイク乗りの夏だ。
陽射しとエンジンの熱に焼かれながらも、灼熱の猛暑の空気を押し退けて加速していく。
我々は、あえてバイクという機械を選ぶ。
暑くても、寒くても、バイクに跨ってアクセルを開く。
この乗り物に魅せられた我々は、世界を直接感じながら走る冒険者だ。
今はこの真夏を体一杯に感じよう。
猛暑を切り裂いて加速しよう。
バイク乗りの夏は、今がド真ん中だ。
よく、バイクは涼しそうで良いね~などとなにも知らないおばちゃんなどに声をかけられますが、夏のバイク乗りは結構大変です。
好きだから乗っていますが、なかなか体力を使いますよね。
それでも、乗らないという選択は無いのがおかしなところですが。




