三十一杯目
新潟ダンジョン第一階層。
俺は師匠の真似をしてみたがツンツン突っついてるだけでなんの意味もなかった。
相変わらずポヨポヨして油断するとこっちに絡みついてきたりする。
「師匠!さっきのはどうやるんですか?
教えてくださいお願いします!」
「さっき見せたんだからあとは練習して覚えろよ」
「相馬君?」
「…はいはい教えます」
どうやら師匠は柊さんの言うことは聞くらしい。
まぁ上司だしな。
柊さんありがとうございます。
心の中でお礼を言った。
「さっきの打撃は武術でいう浸透系ってやつだ。
相手の内部に威力を通すことができる。
やり方としてはまずは脱力。
殴る場合上半身は脱力して拳が当たる瞬間に力を入れる。
そして踏み込み。
地面の力を下半身から上半身に持ってきて最後拳に伝える。
拳が当たる瞬間か少し早いくらいのタイミングで地面を踏み込むのがコツだ。
これで説明は以上だ」
なるほどそうやっていたのか。
というかあんな一瞬でそれを見抜くのは無理なんじゃないか?
「これであとは練習あるのみだがそうだな…
スライムしか相手にしてないと上達してるかわからないだろ?
だから俺相手に一発殴ってみろ」
急に殴ってみろなんて昔のヤンキーかな?
「いくら師匠だからって正面から殴っても平気なんですか?」
「お前程度のステータスなら余裕だ余裕。
さっさと今教えたことを意識しながら殴ってみろ」
そこまで言われると少しムカッとするな。
よし全力で殴ってやろう。
えっと…上半身は最初脱力して殴る瞬間に拳に力をいれて同じタイミングで踏み込みをする…だったな。
「では、いきますよ師匠!」
「おう早くしろ」
「ハァッ!」
俺は全力で師匠の腹を殴った。
すると。
ガァン!!
まるで金属をぶっ叩いたような音が鳴った。
「痛ってー!!」
「ハッハッハッハー。
おいおい殴った方が痛がってどうすんだよ」
師匠は笑いながら俺を貶してくる。
本当に痛くないらしい。
俺は拳が砕けたんじゃないかと思うくらいの痛みだったのに…。
「いったいどんな腹筋してるんですか…」
「Bランクくらいの探索者ならみんなこんな感じだぞ。
お前が弱いだけだ」
ショックを受けた。
師匠が強いのだと思ったらBランク以上はこれが当たり前とは化け物たちじゃないか。
「次はお前が受ける番だな」
「……はい?」
え?何言ってるのこの人?
普通に死ぬんですけど?
「大丈夫だ。ちゃんと加減はする」
「いやいやさっき指ちょんってしたらスライムが弾け飛んだじゃないですか!
そんなのを俺が受けたら普通に死にますよ!」
「スライムの時よりも弱くする。
それに受けてみないと浸透系がどういうものなのか分かりづらいだろ?
なんでもイメージできる方が上達するのは早いもんだ」
確かに師匠の言っていることはもっともだ。
イメージできるか否かはかなり違いが出る。
しかし、本当に受けたくない!
「おいさっさとやるぞ」
「…はい」
俺は諦めた。
憧れの師匠には逆らえない。
「じゃあいくぞ」
俺は全力で腹筋を固めた。
死なないために。
まだ俺にはやり残したことが沢山あるんだ。
スッ
師匠が指を俺の腹筋目掛けてゆっくり出した。
チョン
側から見たら俺の腹筋に少し触った程度にしか見えなかっただろう。
指が触れた瞬間、遅れて衝撃がやってきた。
内臓を直接ぶん殴られたような痛みがくる。
浸透系ってそういうことかいくら腹筋固めても意味なんてなかったんだと知った。
「グフッ!おぅええ〜」
ドサッ
そして俺は盛大に吐いて気絶したのだった。
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